第3回リノベーションスクール@山形 を振り返って/大木貴之さん
2019年10月4〜6日の3日間にわたり、第3回リノベーションスクール@山形が開催されました。
今回の舞台は「第一小学校旧校舎(現山形まなび館)」。昭和2年に建てられた、県内初の鉄筋コンクリート造の校舎は、国の登録有形文化財にも登録されています。
2017年に山形市がユネスコの創造都市ネットワークに映画分野で加盟したことで、この第一小学校旧校舎が、創造都市やまがたの拠点として活用されることになりました。
2022年の本稼動に向け、現在は「Q1プロジェクト」として、数々の試験的活用が進行中。今回のリノベーションスクールは、Q1プロジェクトと連動した回として実施されました。
リノベーションスクールは、具体的なプロジェクトを始めるための第一歩を踏み出す場。3つのユニットに分かれて、第一小学校旧校舎の活用法や方向性、事業アイデアなどが発表されました。
今回、ユニットBを担当したユニットマスター・大木貴之さんに、リノベーションスクールを振りかえってコメントをいただきました。
大木 貴之
LOCALSTANDARD株式会社 代表取締役/ 一般社団法人ワインツーリズム 代表理事
1971年山梨県生まれ。マーケティング・コンサルタント会社を経て地元山梨へ。「地方こそ人材が必要。それには場が大切。まず人の集まる場をつくろう」 と、都内でカフェをはじめとする飲食店のプランナーをしていた妻とともに2000年に当時シャッター街だった山梨県甲府市に「FourHearts Cafe」を創業。この「場」に集まるイラストレーター、デザイナーや、行政職員、民間による協働で「ワインツーリズムやまなし」(2013年グッドデザイン・地域づくりデザイン賞受賞 )を立ち上げ、山梨にワインを飲む文化と、産地を散策する習慣を定着しようとしている
──大木さんにとっては、2度目のリノベーションスクールin山形。山形のまちにどのような印象をお持ちですか?
大木さん:静かに変わっていく町ですよね。最初に山形市を訪れたのは3年ほど前。そこからあっという間にいいお店が増えています。
神保(雅人)さんの「SLOW JAM」を始めとして、みなさんハイセンスですよね。海外のモノで埋めてしまうのではなくて、地元の野菜や文化をしっかり取り入れて、丁寧に考えて店がつくられている。僕も山梨でがんばろう!と刺激をもらいました。
あとは、やっぱり食文化のレベルが高いなと感じます。蔵王の山奥にある絶品の焼肉屋や、蕎麦の名店など、突き詰めたプロのこだわりを感じさせる店があったり、まちなかには新たなプレーヤーたちのいいお店が増えていたり。食材の良さも含めて、本当に素晴らしいと思います。
──今回はかつてのリノベーションスクールにはない、大きな物件が舞台でした。第一小学校ならではの魅力はどこに感じますか?
こんなに大きな場所を与えられるチャンスはありませんよね。中心市街地にあって、家賃も交渉の余地があり、建築物としてもかっこいい。いろんなチャレンジができる場で、本当にお宝物件だと思います。僕自身も「ワンフロアを使って飲食店をやってみたいな」とか「地下にワインセラーをつくったらどうだろう」とか、かなり妄想が掻き立てられました。
そしてなにより、第一小学校には「歴史」というステイタスがあります。歴史のある場所に事業主として入居できるのは本当に貴重なこと。僕の地元にもこんな物件があったらいいのに、と思うほどです。
──提案されたテーマ「Living Session」がとても素敵な言葉だと思いました。生みの苦しみもあったと思います。どのようなプロセスでアイデアが生まれたのでしょうか。
学生と会社員がまざり世代にも幅があるチームで、最初はみんながお互いに気を使って、なかなか議論が進みませんでした。すると、あるメンバーが「家業を継ぐか、自分がやりたい写真の活動をするか、選べず悩んでいる」と思いを打ち明けてくれて。
そこで「選ばず、両方やればいいのではないか」と馬場(正尊)さんがアドバイスしてくれたんです。彼をきっかけに他のメンバーも自分の目標や思いなど、本音を出し合うことができて、アイデアをまとめていくことができました。
例えば、フェスで最初に数人が踊っていれば、次第にみんながつられて踊り出す。「あの人ができるなら、ぼくにもできるかも」と、どんどん輪が広がってムーブメントになっていく。答えを与えてしまうのではなくて、チームのメンバー同士が話し合い、みんなが動き出せる土壌をつくるのが僕の役割です。馬場さんのサポートにもすごく助けられました。
参加者たちは「自分に変化を起こしたい」「なにかを始めるきっかけを掴みたい」など、いろんな葛藤や思いを抱えてリノベーションスクールに来ています。
知らない人の前で思いをさらけ出すのは勇気がいるけど、出した瞬間から強くなる。一人が波紋を起こして、その行動によって、自然と周りに変化が起きていく。最終的にチーム全体でそういう状態に進めたことが、とても良かったと思います。
撮影:青山京平