在宅勤務先進都市化計画をはじめよう
都会に週3出稼ぎに行き、あとはローカルで生活を組み立てる
4月・5月に政府により実施されたコロナショックによる緊急事態宣言が解除され、社会が元に戻りつつある(第二波が心配な状況ではあるが)。
個人的には単純に元に戻るのではなく、より進化した形で戻りたいと思っている。コロナショックは仕事のオンライン化を進めたが、これがまた元に戻ろうとしている感じもする。というのも緊急事態宣言が明けて、それまではオンラインミーティングで済ましていたものがまたリアルミーティングの連続になった。
数週間会ってミーティングができていなかったのでしょうがない部分はあるが、でもせっかくオンライン化に慣れたのだから、そのままオンラインで良いやんという場面がいくつかあった。せめて、在宅勤務の推進だけは、社会全体として浸透して欲しいと思っている。
ヨーロッパ各国では在宅勤務法が整備されようとしていて、国全体として在宅勤務を推進するスタンスを取っている。個人的にはこれはかなり正解だと思うし、日本の自治体もこれぐらい意識を高めて進めるべきと思う。
というのも、在宅勤務が広がることは、様々なメリットがあると思っているからだ。
過去のコラムでも書いたことだが、在宅勤務が広がると、住んでいる場所に対する愛着が大きく変化すると感じている。家にいる時間が長くなると時間をかけて環境をよくしようとするだろうし、単に飯食って寝るという機能だけでなく、もっと余白の機能が欲しくなる。
江戸、明治、大正、そして昭和の高度成長期まではもっと家と職場は近接して存在していたはずだが、それが都市化によって急激に職住分離が図られた結果、今のように生活スペースは最小限になった。でも本来、家は総合的な意味での生活の拠点であり、だからこそその環境を良くしようという意識が働き、仕事を快適にできる場所を確保したり、疲れたら近くのコーヒーショップに気分転換に行って話したり、近所に友達をつくって在宅勤務が終わったら近くの居酒屋に飯でも行ったりするようになるはずだ。
そうなれば近隣の人たち同士もっと仲良くするだろうし、地域活動の中心が、シニアの人たちではなく、働きざかりの人たちにシフトし、よりバランスのとれた地域社会がつくれるようになるのではないか。地域の人たちが仲良くなれば子どもたちも地域で安心してお互いが面倒をみれるようになるだろう。在宅勤務によって、現代社会が抱えている問題が解決に向かって大きく変化する可能性があるのではないだろうか。
週3オフィス、週4在宅
仕事をする際にどれぐらいの頻度でリアルに集まって仕事をするべきなのか。これは悩ましい問題だ。我々も過去10年間試行錯誤しながらやってきている。これから一緒に仕事をしようという若手の場合は、トレーニングと信頼関係構築という意味で、やはり数多く一緒に時間を過ごし、オフィスで一緒に過ごす時間が大事な気がする。でも、いったん信頼と技量的な面での安心が確立されたら、正直そんなに会わなくても成立する。じゃあ、週何回会うのが良いのか、という点では難しいところもある。僕の感覚としては週に2~3回、対面で会って立ち話とかができるぐらいの時間を一緒に過ごせると同じ目標をシェアして進めることができる感じがしている。
なんとなくだが、週5で8時間集まって仕事している感じから、その半分〜2/3ぐらい会ってやる感じで良いのではないかと思っている。もちろん、それ以上集まる必要がある仕事もあるし、全然集まらなくても成り立つ仕事もある。
ということだと話をするためには集まりやすい快適な立地ということになるだろう。そして週3ぐらいはハブ的な場所のオフィスに、週4ぐらいは家の方に重心がある、そんな感じがバランスとして取れているように感じる。
これから在宅勤務を進めるためにも、ぜひ会社で働いている人には、在宅勤務をしたいと会社側にどんどん要望してみてはどうだろうか。コロナショックでこれだけオンライン化で仕事することが成り立ったのだから、会社側としてもそれを受け入れる可能性はあるのではないか。そして思いきって少し遠い場所に引っ越しすることに挑戦してみてはどうか。やはり、食って寝ることを前提に考えられた大都会の住まいでは、ちょっとスペース的に狭いし、せっかくライフシフトするなら本当に自分が良いと思う地域に移動し、自ら場を作り出していってみてはと思う。
オンライン勤務で人と会わずに仕事する分、住む地域には自分にあったコミュニティーがあるかという部分も重要だ。僕らが運営するサイトreal localではこうした街のソフトの部分を紹介してきたが、なんとなく、自分の活動圏から20分から30分の距離感の中に志を共にできる人がいることが重要な気がしている。
終身雇用から欧米型の雇用に
またコロナショックを経て仕事のオンライン化が進むと、終身雇用制度は終わって行かざるを得ないだろう。ジョブディスクリプションによって職務が明確化された欧米型の雇用になり、この仕事に対してあなたの給料はこの金額という感じに徐々に移行していくだろう。そのような変化が訪れるであろう状況下で、対応変化できるのはやはり個人事業主的な働き方をしている人だし、終身雇用制度に守られて大組織で働いている人は逆に変化についていけないことになってしまうかもしれない。
コロナをきっかけに、会社で働いている人にとっても個人事業主にしても、1つの仕事だけじゃあリスクがあるというのが今回わかった気がする。1つ職業を確立した人は、合間をみて2つ目の仕事にチャレンジする、何かがあったときに別の仕事にシフトチェンジできる必要があると思った人も多いのではないか。そのとき会社や政府が守ってくれなかったら、自分たちで身を守るしかない。さらには、そうなったときに近所の知り合い同士でしか助けあえないとわかった部分もあるだろう。
ローカルに密着して、「もうひとつの仕事」を持つ
という意味で、2つ目の仕事は、ローカルに密着した仕事をつくりだすことにチャレンジしてみてはどうか。これからは「地域にあるものでつくる時代」ということで、当たり前な選択肢だが「農業」「設計/建設業」「クラフト」「ツーリズム」の4つの職域で、地道に新しく行っていくのが正解だと思っている(『ローカルエコノミーのつくり方』エピローグ「“あるもので作る”スモールビジネスのススメ」参照ください)。ぜひ、少しずつでも良いので、少し都心から距離を取り、2つ目の仕事の開拓を始めてみるのはいかがだろうか? そうなってくると、ある意味都会に週3出稼ぎに行き、あとはローカルで生活を組み立てるという姿が見えてくる。
で、その場所はどこ?ということになると、東京、大阪を中心とした四大都市圏の周縁エリアになるのではないかと思う。東京圏で言えば、千葉の端や埼玉の端、神奈川の端、山梨や長野。大阪圏なら、滋賀、奈良とか京都の端、そして僕らの住む神戸の端など。自然に近いけど、都市にも週3出稼ぎに行けるエリア。そうした場所に何か次のステップへと進むチャンスがあるように思う。週4は自然豊かですでに魅力がある端っこで住み働き、週3はローカル都市の中心部のオフィスで志を共有する、そんな働き方が当たり前となる、ミッドサイズシティの時代が来て欲しいと思っている。
『ローカルエコノミーのつくり方』