暮らしのアップデートを実践する建築冒険家 「あしたのアーキテクツ」近藤拓馬さん 佐藤雄太さん
インタビュー
2020年4月、”建築冒険家”を名乗る二人が新しく設計事務所を立ち上げました。共同代表を務める近藤拓馬さんと佐藤雄太さんは福島県外の出身。
建築冒険家とは?地域に根差した活動をしていく彼らが福島で活動を続けるのは何故なのか?熱い想いをもったお二人にお話を伺いました。
建築冒険家と「あしたのアーキテクツ」
近藤:僕らは、地域に暮しながら自然の魅力を生かしつつ、建築の枠を超えて楽しみたいという想いがあって「建築冒険家」と名乗っています。「あしたのアーキテクツ」という社名にも、福島のちょっと近い未来を地域の方々と共に作るという意味を込めています。ここ最近の福島では「若い人が一緒に何かをやろう」というムーブメントが起きていると感じています。ここで新しく面白い活動ができるんじゃないかってワクワクしているんです。そんな中、西会津町との大きな出会いがあったんです。
西会津町との出会い
近藤:初めて西会津町を訪れたのは去年の秋ごろ。かつて旧越後街道の宿場町としてにぎわった上野尻地区で空き家をリノベーションした「ゲストハウスひととき」を営まれている佐々木さんご夫妻からのご依頼がきっかけでした。「古民家を改修して地域で面白いことをしたい」という佐々木夫妻のお話やお二人の想いを伺いながら、西会津町内を案内してもらいました。目にするものがすべて新鮮で、これぞ「日本の田舎」って感じがしました。
佐藤:それから何度か西会津の方々や地域おこし協力隊として活動している先輩移住者と接していくなかで、僕らもこの街で「古民家や空き家を使って面白いことをしたい」と考えるようになりました。その想いがどんどん膨らんできた時、ここで地域のために活動していこうと移住を決めました。地域の方々と交流できる拠点も作りたくて、古民家を購入したんです。
地域の人と共に作り上げる
佐藤:この地域には※人足(にんそく)という文化があります。その活動に初めて参加した際、僕らのようなヨソモノにも町の人たちは温かく接してくれました。そのことが嬉しくてとっても居心地が良かったんです。
あるとき、ここにある良さを生かして、何かできないかなと僕らなりの地域とのコミュニティ方法を「ゲストハウスひととき」で話していたら、「うちの庭で何かしない?」と提案していただいたんです。
※人足(にんそく)…… 地元の住民が集い、集落内の道路沿いの草刈りや田んぼの用水路の掃除をする作業を指します。
近藤:この地域の家は路面から奥へと敷地が細長く広がり、大きな庭があるのが特徴です。また山々に囲まれているので、薪も豊富。そこで「焚火bar」を開催することにしました。当日は地域内外から15人ほどが参加してくれて、凄く盛り上がったんですが、イベントを行って実感したことがあります。こうしたイベントは、たいしてお金はかからないけど暮らしが豊かになる。地域で出会った人と共に作り上げる事が一番大きいなって。
冒険する場所
彼らにとって西会津町は、今まで出来なかった事をチャレンジできる、「冒険する場所」だといいます。
建築のお仕事で木の選定を行う機会が多い佐藤さんは自ら山に入り、木の伐採をするようになったそうです。
佐藤:木の伐採をしていくなかで、この地域には山の神の信仰心が色濃く残っていることを知りました。山の恩恵を受け、山の厳しさも知っているんですよね。長い年月をかけて育った木の命を奪うときに敬意を払い、自然と向き合い暮らすことの大切さを感じました。建築をしていると木は建材としか見ることが多いですが、実は生活の一番身近な物。だからこそ、木を入手するところからスタートして木を使った新しい活用の仕方を模索しています。
これからの二人のあした
最後にこれからの展望についてお聞きしました。
近藤:一緒に働く仲間を増やしていきたいと考えています。新しい仲間と一緒に冒険をしながら大きな事業を展開したいですね。
佐藤:西会津町の良さをどんどん吸収していきたいと思っています。また西会津町はこれからもっと面白くなるので、ぜひ遊びに来てください。
お二人から話を伺って地域に関わり、この場所を楽しみたいという彼らの思いが、建築設計という枠を超えて様々な活動に繋がっていると感じました。
彼らがこれから手掛けていく”あした”が楽しみです。