自然との一期一会を大切にするイタリアンシェフ狩人 平山真吾さん
インタビュー
郡山にあるイタリアン料理店Incontra Hirayamaでオーナーシェフとしてご活躍されている平山さん。イタリアでは料理に使う食材にこだわり、自ら食材を生産するシェフも珍しくないのだとか。料理人として食に向き合ううちに自然との共存や自然と食について考えが深まっていったようです。どう自然と向き合っていくのか、そこをつきつめていった先に自ら生産し、自ら捕るということに行きついたとのこと。今回は狩猟について深くお聞きしました。
きっかけと後継者不足
狩猟を始めようと思ったのは、料理人として農家さんとつながる中で、野生動物が農作物を食い荒らしている被害が大きいことを知ったことです。例えば、イノシシ。イノシシは餌を探すとき、ショベルカーで掘ったかのように荒らします。あと、臭いがきついんです。少し通っただけでも食べれなくなります。
福島県内でも獣類による被害は毎年1000トン以上、被害総額は1億円以上だそうです。そんな話を聞いたとき、「これはどうにかしないと。自分が関わることで少しでも被害が減れば、農家さんが助かるのではないか」と思うようになりました。
問題はそれだけではなく、ハンターの方の高齢化が進んで地域に根づいた伝統や文化が失われつつあることです。ハンターの多くはおじいちゃんたちで、平均年齢は65〜70歳なんです。狩猟って結構な重労働で山に入って罠かけたり、銃で獲物を運んだり。初めて山に連れて行ってもらったとき、僕でも結構きつくて、これをおじいちゃんたちがやっているのかと想像すると驚きを隠せませんでした。若い人たちが混ざっていかないと狩猟文化は今後消えていっちゃうんじゃないかと。今からでも狩猟のチームの一員として関わり、僕らみたいな若手の仲間を増やしたら、伝統や文化も継承していけるはずなんです。
僕が高齢者のハンターと若者のつなぎ役となっていければいいなって思っています。
自然界と僕
キノコ採りに行った時のお話です。山の中で、おじいちゃんハンターは通る道と通らない道を決めているんですよ。「何でこの道は通らないんだろう」って不思議だったんです。よくよく見ると、獣道を見つけていることに気づきました。枯れ葉が落ちてくると見えにくくなるので、今の季節ぐらいから獣道を探しているんですよね。狩猟期間だけが狩猟なんじゃなく、春夏秋から繋がっていくのだと知ることができました。
また、山に入るようになって食材を全部きれいに使い切ってあげようという想いが強くなりました。すべて「いただきます」から始まるんです。捕ったからには最大限おいしく食べてあげることが一番の供養だと思っているから。野生動物は傷ついたまま逃がしてあげたくないし、自分のスキルを上げて苦しませずに命をいただくようにしてあげたいです。怯えさせたくない。
山菜も全部採ることはしません。山にも尊重すべきマナーやルールがあって、守らないといけないんです。それを無視したら自然が死んじゃうし、美しい景観だって見れなくなってしまう可能性がある。共存していくために、自然界から「いただきます」を忘れないようにしたいと思っています。
やりたいことは全部やる
加工されたものもいいけど、私は自然界にあるものをいかに自分で扱えるかに興味があります。これから畑にも挑戦しようと思っていて、何十年も使ってなかったから自分より高い草が生えてたり、竹があったリ。でも、段々畑になっていて、それが六段もあるので畑が完成したらすごいロケーションになるはずなんです。まだ草だらけで草刈りに追われていますが、妄想しながら楽しんでいます 笑。
ほかにも、自分で山菜やキノコ採り、釣りもやっています。あんなに大きな海で何が釣れるかわくわくしながら夜中ずっと釣りをするんですが、釣れないんですよね。魚の気持ちになんないと釣れないらしいです。まだ、魚の気持ちになれてないんでしょうね。
単純に自然界と触れあうことが好きなんです。常に自然と触れ合える状況に自分を置きたい。自然の中で遊んでいるのが好き。将来は自給自足できたらいいなと思っています。
仕事も大事だけど、自分のやりたいこともできないような仕事をやっていて意味があるのかなと思ってきていて。僕は今、週に一回しか休みがないのですが、飲食経験のない奥さんは「なんでこんなつらい思いしないといけないの」と思っていたらしく、これはだめだと思いました。だから、遊びも全力でできる環境にしたかった。それが5年目にしてでき始めてきました。
ゆくゆくは物々交換で生計を立てられたら面白いなって。僕がとってきた肉や山菜を、お米や醤油、みそを作ってる生産者と「これあげるから、醤油ちょっとちょうだい」とか。お金は稼げないけどすごく充実した環境で、自分の気持ちが豊かになる気がします。それに奥さんも同調してくれたんですよ。奥さんも将来はテレビの「ポツンと一軒家」みたいに住んで自給自足していきたいって言っていて。奥さんあっての僕なので、私たち夫婦二人の気持ちや体を気遣いながら、自然との一期一会を大切にしていきたいと思っています。
————————————————————————————————————————————–
取材では記事に書ききれないワクワクするお話をいっぱい聞かせて頂きました。ぜひ、Incontra Hirayamaに足を運んで美味しい料理と楽しいお話を堪能してみてください。
※お店では購入して仕入れたものを取り扱っています。狩猟で捕った動物は使用しておりません。