福岡発、アート×コミュニティの可能性
複合アート施設「FUCA」
Fukuoka Urban Community of Art
その名を略してFUCA(フーカ)と呼ぶ。
「福岡R不動産」を運営する、我々株式会社DMXが2012年2月に立ち上げた中央区平尾にある複合アート施設の名称である。
複合アート施設とは何ぞや?一言で表すのはとても難しい。
1階に交流の場としてのカフェや音楽スタジオ、約100㎡のイベントスペース、2階はクリエイターの活動拠点とアトリエが並ぶ。まあ、とにかく色々詰まっている箱。
特徴としては、それらが独立せず混ざり合っていることだ。
例えば、入居中のアーティストがイベントスペースで作品展示やパフォーマンスを行ったり、そのイベントで1階のカフェからドリンクや料理が提供されたりなど。約400㎡のスペースの中で様々な化学反応が起き、それがまた今日の新しいものを生み出す源泉になっていたりする。
FUCAが誕生したきっかけは弊社代表、本田の発案からであった。
ポートランドに視察中、文化・環境など、何でも自分たちで作り上げていくDIYの精神に感銘を受け、同時に福岡にはそれが弱いことに気付く。特に福岡にはアーティストを育てる環境が無い、なんとか福岡にアートの文化を根付かせることはできないか。そんな時、この倉庫に出会う。
「福岡は物流や小売業が盛んなので倉庫物件の需要が高く空きがなかなか無いんです。そんな中この物件に出会えたのは幸運でしたね」と、語るのは弊社の坂田。
「アーティストが安くアトリエを借りようとすると、空家などを見つけてオーナーと交渉するような形が一般的ですが、現状復帰の問題もあり、規模・コストの面で考えてもハードルが高く現実的ではないです。もっと気軽に借りれて制作に打ち込める環境が提供できれば、近い将来、福岡から世界で活躍できるアーティストが輩出できるんじゃないかと」
そしてこの倉庫を、シェアアトリエ、イベントスペースとして区分けし、貸し出すことを始めた。
では、具体的にどうやってアーティストを育てていくのだろうか。
まず、アトリエ部分を10㎡×4区画に分け、1人に1区画を貸し出す。家賃は月1万円。深夜だろうが正月だろうが、いつでも使ってOK。入居期間は1年間。この間、下のイベントスペースが空いていれば、無料で自由に発表の場として使用できる。ここまで聞くと至れり尽くせりに思えるかもしれないが、アーティストにとっては主に2つの課題がある。
一つは毎年春に行われるアーティストの入居者選考をクリアすること。枠は4つしかないので、まあこれは当然である。もう一つは、年2回、FUCAに作品を寄付すること。将来、自らの価値が上がれば、自ずとFUCAにも貢献ができる、そんなシステムだ。
さて、オープンしてから2年半が経過した。アーティストの反応や雰囲気などはどうだろうか。坂田に聞いてみた。
「まず、イベントスペース利用のハードルをかなり低く設定している為に、アーティストにとっても実験的なイベントがしやすいのが大きいようです。失敗を恐れなくてよいというか。時にはニーズや時流に逆らってみたりなど『敢えて空気を読まない』取り組みなんかもどんどんトライしているみたいです。
あと、自らイベントの企画・運営にも積極的に関わることによって、作るだけじゃなくどう見せるかも意識するようになり、アーティストとして新たな視点が生まれるメリットもあります。あとはコミュニティーという部分ですね。元々、もくもくと制作する”篭もり系”の人が多いので、他のアーティストの作品、作風から刺激を受けたり、皆でワイワイやりながら作り上げたりすることがとても新鮮だという声もありました」
まだまだ「場」の数は少ないかも知れないが、福岡において、確実にアートの文化は育ち始めていると感じた。
何年後になるかはわからないが、世界的著名アーティストのプロフィールにFUCAの4文字が並ぶ日が来るかもしれない。