大好きな豊橋の「まちなか」を元気にしたい! 合言葉は We♡TOYOHASHI レンタルスペース「Farmers」
ローカルの拠点活動
愛知県豊橋市。駅の南に建つ「水上ビル」は、歴史的にも建築的にも珍しい建物として築50年を超えたいま、あらためてその価値が見直されています。一方で年々増えるビル内の空き物件はまちの課題に。そんな中、空き部屋を活用してレンタルスペースの運営を始めた木村和明さん。埼玉県出身の移住者で普段は会社に勤めるサラリーマンですが、豊橋を愛する熱い想いはいまや地元の人たちが驚くほど。その理由を教えてもらおうとレンタルスペース「Farmers」を訪ねました。
豊橋で始めた理想の暮らし
埼玉の実家は野菜農家です。大学卒業後、そのまま農家になるのもなんとなく違うなと思って一般企業に就職。SONYの系列会社でエンジニアとして今もサラリーマンをしています。
入社して赴任地が静岡県の湖西市になり、初めて東海地方に来ました。地元を離れてもう18年経つのかな。独身の時は職場に近いまちの寮に住んでいましたが、28歳で結婚。それを機に豊橋で暮らし始めました。
最初は普通の賃貸アパートでした。そのうちに二人にとって理想の暮らし方ってなんだろうと考えるように。戸建てもいいけど豊橋は地元じゃないし転勤もあるかもしれないし、とあれこれ模索しているうちに中古マンションのリノベーションていう方法もあるなと。でも当時、地方ではリノベーションそのものが珍しく情報も少なかったんですよね。いろいろ探して僕らの好きなテイストの業者さんを見つけ、そこにお願いしました。
でも物件探しから何からわからないことだらけでしたし、決めなきゃいけないことの連続で理想の家づくりなのに楽しいとか言ってる余裕もなく(笑)。頑張った分、思い描いた理想に近いものができたかなって、今は満足しています。開放感のある壁式構造にしたのも正解でした。当時の経験がその後、FarmersのDIYにも生かされています。
まちなか、そして「水上ビル」との出会い
そうして僕らの新しい暮らしが始まりましたが、まちなかは家から少し距離があるし、たまに服を買いに行ったり、ご飯を食べに行くぐらいで。豊橋の印象と言っても夏に盛大な花火大会があるとかその程度でした。
そんななか、2016年にあいちトリエンナーレっていうアートイベントが開催されると聞いて改めて来てみたら、会場の水上ビルがすごく面白くて。古い建物と現代アートが混在していて、探索するように鑑賞するのが楽しくて、気がつけば、水上ビルそのものに興味が湧いていました。
次々にシャッターを降ろす商店街の姿を目の当たりにして
以来、度々足を運ぶようになってわかったのは、まちの状況は刻々と変わるということ。来るたびにシャッターを降ろす店が増えていく。ある日、水上ビルができた頃から続く、地元で有名な小鳥屋さんの前で女将さんに出会い声をかけたんです。すると「今どきまちに鳥を買いにくる人もいないし、息子にも継がせられない。もう閉めることにする」と。
ビルの商店主さんたちと会話を交わしていると、同じような話をあちこちで耳にするんです。家業を継がず地元を出てきた僕が言うのもヘンですけど、すごく残念だなと思いました。僕にできることでこのまちを少しでも盛り上げられたらという気持ちが強くなっていきました。
レンタルスペース「Farmers」の誕生
何かできないかと考え、空いている水上ビルの一室を借りて、セカンドハウス的な感じで使ってみようと思い立ちました。ところが空き物件はいっぱいあるのに不動産屋さんにまったく情報が出てないんです。仕方なく一軒一軒訪ねて回り、ようやく商店街の文房具屋さんが大家さんを紹介してくださって直接交渉。自分で直して使うという条件で永久賃貸契約を交わし、貸していただいたのがここです。
DIYを進めるうちに、みんなで使えるレンタルスペースにしようと。維持する費用も必要ですしね。実はその頃、水上ビルで行われているアートイベントにスタッフとして参加するようになって、一気にたくさんの人と繋がりができたんです。市役所や行政の人たちとも親しくしていただくようになりました。ここを開放してみんなに使ってもらいたいと思ったのも、そんなふうにまちの人たちとの絆が深まったからというのが大きいですね。
民泊の申請をしていないので宿泊はできませんが、使い方はほぼ自由。ネット向けの撮影スタジオ、映画鑑賞会、屋上でBBQ…コロナで外食できないママさんたちが、子供を遊ばせながら気兼ねなくランチ会を開いたり。使い方はお客さんの方からいろいろ提案してくれるので、僕自身、他にもたくさんあるまちなかの空き物件の新しい使い方を考えるのが楽しくなりました。可能性は限りなくあるなあと感じてます。
まもなくオープンする「Farmers新館」を豊橋初のゲストハウスに
Farmersの隣がまるまる空き家だったので、ついに買ってしまいました!念願のゲストハウスにしようと思っています。先日、自分で登記も済ませ、晴れて大豊商店街の組合の一員になりました。これで僕もこのまちの人になったんだなと思うと感慨深いですね。中はまったく手付かずの状態なのでこれからが大変だけど(笑)。もちろん、またDIYで頑張りますよ!
みんなでつくる理想の「まちなか」
平日、会社がある僕が常駐できないので、受付をどうしようかと思っていたんです。すると、FarmersのPRで日頃からお世話になっている「まいぷれ」さん(地元の情報を発信する地域情報サイトを運営するスタジオ)がたまたま移転先を探していて、一階にテナントとして入ってくれることに。受付業務も引き受けていただけることになりました。こういう時にも、人と人の繋がりのありがたみを感じます。みんなでつくるまちなかを目指してクラウドファンディングを立ち上げ、一階部分のDIYプロジェクトも動き出しました。
外から来た僕だからこそできることがある
思えば、たまたま仕事で縁ができた豊橋。そもそもまちづくりになんて関心もなかった自分が気づけばどっぷりまちに根を張り愛するようになっている。そういう今があるのも積極的にまちに入り込んで繋がりを作ってきたからだと思います。何事も自分で動けば楽しいし、どこにだって自然に溶け込める。そういう行動力って大事だなって。
豊橋の良さですか?たくさんありますよ。何より一番の魅力は「人」です。豊橋には素敵な人、面白い人がいっぱいいる。なのに豊橋の人に聞くと「豊橋なんて田舎だし」とか「何にも無いじゃん」って言うんですよ。他所から来た僕がこんなにも魅力を感じているのに。
こんな僕を見て「あいつ、他所から来たのに豊橋のことすごい自慢してる。なんで?」って、地元の人たちが僕に興味を持ってくれたらいいなって思う。そこからまちを愛する人がどんどん増えて繋がっていったら素敵じゃないですか!
名称 | まちなかレンタルスペースFarmers |
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URL | |
住所 | 愛知県豊橋市駅前大通り3丁目118-6水上ビル大豊商店街 Farmers 2,3F |
TEL | 090-4533-0551(木村和明/ Farmers) |
アクセス | 豊橋駅より徒歩10分 |
料金 | 一度のレンタルで2F、3F、屋上の丸ごと1棟のレンタルとなります。 |
備考 | ♦︎人数は問いません
◉リノベ後の木村さんの自宅マンションの様子 ◉まちなかアートボランティア“sebone”の公式HP ◉まいぷれ
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