ゲストハウスで働きながら移住体験/櫻谷恒太さんの場合
ロングステイ
山形市大手町にあるゲストハウス「ミンタロハット」。そこには「フリーアコモデーション」という制度があり、ヘルパーとして清掃やベッドメイキング、ゲストの案内などゲストハウスの運営を手伝う代わりに、3食が付いて無償で滞在することができます。
「最初は2週間だけ働くつもりだった」と話す櫻谷恒太さんは、2021年1月にミンタロハットを訪ねて以降、やがて1年の月日をここで過ごしています。ゲストハウスで暮らしながら働くという、ある種の移住体験ともいえる時間。現在の山形暮らしについて、日々どんなことを感じているのでしょうか。
≫ミンタロハットについて、オーナーの佐藤英夫さんのインタビューはこちら
出身は青森県青森市です。盛岡市で就職して、10年間ほど会社員をしていました。2020年の暮れに会社を辞めることになり、自由な時間ができたので、岐阜にある「ホニャラノイエ」というゲストハウスを訪れていました。
「この先はどうしようかなぁ」なんて話していたら、そこのオーナーさんが「山形にあるゲストハウスでヘルパーをすればいいんじゃないか?」と突然ひらめいて。あまりに予想外の未来を提案されて驚きました。すると、ゲストハウスのオーナー同士で繋がりがあるようで、すぐにミンタロハットのオーナー佐藤さんと連絡をとり、あっという間に働くことが決まりました。
勧められるがままに決めてしまったのですが、お金もないし、ここで働きながら暮らしてみるのもいいかもしれないなと、とりあえずここでお世話になることに。最初は2週間だけのつもりが居心地がよくて、気づいたら1年近く時間が経っていました。いまではすっかり山形市民です(笑)。
山形は食べ物のレベルが本当に高いですね。特にラーメンはお店の数も多いし平均点が高いなぁと思います。市内にいい温泉がいくつもあって、山形市の人は銭湯みたいな感覚で温泉に行っているようなので、ぼくも仕事の合間に温泉に行くのを楽しみにしています。
そして、山形は山の存在が大きいなと思います。車で13号のバイパスを走っていると、山に囲まれているのがリアルに感じられて圧倒されます。信号で止まってふと外を見ると月山や蔵王が見えて、このロケーションは何度見ても独特だなぁと。こうやって自然に囲まれていると、うまく言葉にはできないのですが、強く感じるものがあります。
まだまだ山形の知識は少ないけど、ゲストのみなさんには自分自身が体験したことや地元の方から聞いたりした山形の魅力を、少しでもお伝えできたらいいなと思っています。
ミンタロハットには「ゆんたく」という交流会(不定期開催)があって、リビングで食事をしたり飲んだりしながら、全国各地から来るゲストや地元の方々、オーナーの佐藤さんと時間を共有することができます。
いろんな人がいろんな旅の記憶をここに持ち込んでくれて、山形のこともよく知れるし、いろんな人生の話を聞くことができる。「こんな生き方があるんだ」とか「そんな素敵な場所があるんだ」と知ることができる。ここにいるだけで、いろんな世界観に触れることができる。これって僕からしたら「旅」なんですよね。移動することだけが旅じゃないなと、“LIFE IS JOURNEY”ってこういうことかって思うんです。毎日生活していると慣れてしまうのですが、特殊な環境だなぁって思います。
期間限定のつもりで山形に暮らしていますが、この先どこに行くのか、また山形に戻ってくるのかは未定です。毎日の出会いと山形暮らしを楽しんでいきたいと思っています。
写真:伊藤美香子