【福島県・葛尾村】生まれも育ちも、葛尾村。民子さんが教えてくれたリアルな田舎暮らし。
移住サポート
移住者が増え続けている注目の村、福島県・葛尾村。移住者の「お母さん」的存在として慕われている松本民子さんに、葛尾村での暮らしや関係性などを聞かせていただきました。
葛尾村に移住した人たちが「お母さん」と慕う、松本民子さん。「一般社団法人葛尾むらづくり公社」の「地域交流促進リーダー」として、高齢者の方々の暮らしをサポートしたり、葛尾村を訪れた人たちと地域をつなぐ架け橋になったりと、いろんな人の心の支えになっています。そんな民子さんは、生まれも育ちも葛尾村。地元出身者としての葛尾村の魅力や、暮らしのあり方、ご近所さんとの関係など、田舎暮らしのリアルを教えてもらいました。
この村には、お母さんがたくさんいる。
ーー 葛尾村には何度か足を運んでいて、「一般社団法人葛尾むらづくり公社」のスタッフさんにも取材させていただいたことがあります。そのときに、「民子さんの存在が心の支えになった」っていうお話をされていたんですよね。「みんなのお母さんみたいな存在だ」って。
あ〜、茂木さんのことですね。彼女は今年の春に移住して、村でがんばってくれているんですよ。私は村の集落をまわるときに茂木さんを連れて行って、村の人に「よろしくね」って紹介したり、たまに漬け物をつくって持たせたり。そんな特別なことはしていないですよ。ここでは私だけじゃなくて、みんなで支え合って、協力して暮らしていますからね。みんなが母のような感じです。
ーー 移住者のなかには、その地域や地元の人たちに馴染めるかどうか不安を感じている人もいるかと思います。葛尾村のみなさんは、移住者や外から来られる方に対して、どういった印象をお持ちなんでしょうか?
「どなたでも、どうぞお越しください」って思っている人が大半だと思いますよ。いろんな人を受け入れて、仲良く暮らしたいって。実はね、ここ近年で移住される人の数が増えているんです。私が働いている公社でも、7割が移住者。村に別荘を持っている方もいて、いろんな人が村に来てくれるのはうれしいですね。
ーー 別荘があるということは、それくらい住みよい場所だということですよね。
ここは標高が高いから、「福島県の軽井沢」なんて言う人もいるみたい(笑)。わたしもこの村の自然が好きなんです。特にお気に入りは、竜子山。このあたりが私の生活圏なんですけどね、昔からこの山が自分の慣れ親しんだ風景なんです。
「ありがとう」の気持ちで、支え合う。村まるごと、家族のよう。
ーー 民子さんは、葛尾村出身なんですよね?
そうですよ。生まれも育ちも、葛尾村。震災があったとき、村外へ避難したことはありましたけど、避難が解除されてすぐ村に戻って来たし、避難先でも近くにいる葛尾村の人たちと一緒に行事をやったりしていました。
ーー 避難先で、葛尾村の行事をされていたっていうことですか?
そうそう。場所は違うけど、やってることは村と同じ。家にはしばらく帰れなかったけど、集落のみんなも近くにいましたから、変わりなく暮らしていました。
ーー 避難が解除されて村に戻れるようになったとき、別の場所へ移住したり、戻らないっていう選択肢はなかったのでしょうか?
なかったねぇ。やっぱりここが家だし、安心できる場所ですから。
ーー 民子さんが思う、葛尾村の魅力って何ですか?
人の良さですね。隣近所を気にすることもないし、自由奔放に生きられる。
ーー 田舎ってコミュニティが狭いイメージがあったんですが…「自由奔放」って楽しそう!
悪いことをしなかったら、何も気にすることはないですよ。むしろ、わたしがいつもみんなにお世話になっているくらい。何かをしてもらったら、わたしも何かお手伝いをしたりする。村の人はみんな、お世話好きなんですよ。お野菜や料理をつくったら「これ食べてみて」って持って行ったり、「これやってみて」って声をかけたり。それが田舎ですよね。
ーー なんか、家族のような距離の近さですね。
そうなのよ。みんな家族。それが良くて移住される方もいるんです。でも、こういうやりとりが気になる人は、田舎暮らしはしんどいかもしれないですね。葛尾村って、自然が多いでしょ。その分、「草刈り隊」っていう専門部隊がいるくらい草刈りが大変なんですよ。だから余計なおせっかいって思われたりするけど、草刈りしていない人の庭とか見ると、刈ってあげたくなっちゃう。草があると家のなかに虫が入ってきたりするから、ご近所さんにとっても大変なんですよ。だからきれいにしてあげたいって思うのね。それを遠慮されちゃうと、「あの人にはあまり近づかないでおこう」ってなるから、悪く思わないで「ありがとうございました」って言ってもらったらそれでいいの。
ーー 自分のことだけじゃなくて、みんなのことを見て暮らしているような感じですね。
自分だけ良ければいいっていう人は、この村にはいませんよ。震災のときも、みんなで毛布集めたり、炊き出しをしたり、行事をやったりして、みんなで前を向こうとやっていましたから。草刈りだって協力してくれる。自分の仕事を置いてでも来てくれる。それはみんな、ふだんから支え合って暮らしているから。そういう行いが、お互いを信用することにつながっているんだと思いますよ。
ーー なんか、嘘をつくとバレそうですね(笑)。
分かるんですよ、村の人は勘がいいから。だから、ちょっと言い過ぎたなとか、気まずかったかなと思うと、2〜3日は距離を置いてだまっていたりするの。
人も、村も、自然体で。
ーー 葛尾村出身の地元民として、これから村がこんなふうになればいいなと思うことはありますか?
この村が自然に続いていくこと、自然と大きくなればいいなと思いますね。最初から高望みするとね、どこかで衝突すると思うんです。
ーー 民子さんの話を聞いて、村の人がみんな自然体でいるんだと思いました。
そう、わたしも自然体って大好き。この村には400人くらいの人がいて、「人口が少なくて大変そう」って思う人もいるかもしれないけど、いろんな人が遊びに来てくれますし、寂しさや「これから葛尾村どうなるんだろう?」とはあまり思わない。それよりも、若い人たちが盛り上げようとがんばってくれていますし、「どうにかしてくれるだろう」という気持ちで応援しています。
ーー 400人という程よい規模だからこそ、みんなの顔も見えるし、何より前向き。田舎暮らしをしてみたい人や、葛尾村に興味のある人は、ぜひ民子さんに会ってみてほしいです。
今はコロナ禍だからできていないけど、コロナ前は遊びに来てくれた人たちを家に呼んでごはんを振る舞ったりしていたんですよ。ここは自然が豊かだから、ほっとひと休みするときにでも遊びに来てください。公社で働いているときは「あぜりあ」にいますから、声をかけてくださいね。