【長野】小谷ファットバイクセンター 新井東珠さん・あゆ子さん〈後編〉 協力隊で結婚。ある夫婦の定住の話
前編では、あゆ子さんと東珠さん、それぞれが小谷村地域おこし協力隊に着任するまでのストーリーでした。
アウトドアスポーツの趣味と自然エネルギーという専門分野を活かすべくやってきたものの、現実とのギャップに東珠さんは戸惑うことに。
そこであゆ子さんの登場です。
それまで印象の薄かった東珠さんが、地域の方に頼まれたワサビの収穫では文句も言わず、ただ黙々と作業する東珠さんの上腕二頭筋を見て「お!」となったそう。
「この村では薪割りと雪かきができる相方探すべし」というのは、後輩として私があゆ子さんから着任初日に言われていた教訓。灯台下暗しだったのです。
社交的なあゆ子さんは登山に誘っても渋る東珠さんを、地域づくり事業の勉強会などに気長に誘いました。
東珠さんは東珠さんで、村のイベントでのまかない作りを2人で任されたときに、あゆ子さんが突然冷蔵庫を開けて完成したはずのカレーにありとあらゆる調味料を投入。怪訝に思ったものの、ひと口食べて「料理うまい!!!」と心打たれたそう。
あゆ子さんと勉強会で行った小諸市で偶然ソーラークッカー(太陽熱を使う調理器具)に出会ったことで、自身の体験から自然エネルギーを広めてみようと、東珠さんの中でブレイクスルーが起こりました。
そこからは趣味の自転車の世界で見つけたファットバイク(太いタイヤで雪上も走行できる)でのスキー人口減に悩むスキー場の活用など、自分の得意なことから活動を開始したのです。
東珠さんは2016年5月に任期満了で退任、あゆ子さんは今年4月末で退任予定。
任期中には、地元の方の協力を得ながら「小谷ヒルクライム」のコースを設定・整備したり、近隣3市村の約40か所ででサイクリストが快適に走れるよう「CYCLE STATION」の企画運営、観光にも使える電動アシスト付自転車の導入などを手がけてきた2人。
地域おこし協力隊退任後は役場からの給料なしに生活をしていかなければなりません。
これは協力隊全員が直面する課題。東珠さんは退任後は、村からの仕事の一部を継続しつつ、「小谷ファットバイクセンター」を起業しました。あゆ子さんは昨年12月に旅行業務取扱管理者と、英語力を活かして超難関の通訳案内士の資格を取得。
「英語はできるけど、スキーや山のガイドは体力や経験ともに難しい。だから塩の道などの歴史を学んだり、マタギや山菜、満天の星空など小谷村の自然や文化を活かした着地型ツアーにしていければと思っています。資格を活かして全国規模にフィールドを広げることで、観光業で食べていければいいな」とあゆ子さん。
通訳ガイド業の規制緩和の問題はありますが、クオリティの担保という点で資格取得したのは彼女らしい堅実な選択。独立するかガイド団体に所属するか、当面は様子を見ながらの活動予定だそう。
一方の東珠さんは「小谷村をファットバイクのメッカにしたいんです。ヒルクライムも好きですが、里山やあぜ道もファットバイクなら走れる。子どものころに自転車に乗って遊んだようなワクワク感を知ってもらいたいな」。
この2人と話していて思うのは、「地域おこし」そのものが目的になるのではなく、「自分たちが好きで生業を立ち上げることが、結果的に地域おこしにつながる」という軸のブレなさ。
これから地域おこし協力隊に応募しようと思っているひとも、自分で移住をしようとしているひとも、好きなことが可能性を開く好例として、ヒントを感じてもらえればと思います(恋の話も含めて!)
屋号 | 小谷ファットバイクセンター |
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住所 | 長野県北安曇郡小谷村千国乙12850-1 |
備考 | スノーシーズン&グリーンシーズンとも、ファットバイクのガイドツアーなど予約は随時受付中。Facebookからでお問合せを。 |