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「Tanga Table」遠矢弘毅さん

人によって育つ、旅の新しい拠点

D&DEPARTMENT PROJECTが東京・渋谷のd47 MUSEUMで開催中の「NIPPON47 2017」展(〜10/9)をreal localが独自の取材で深堀りします! 地域のライターが、地元の出展者を取材するスタイル。こちらは北九州のライターによる「Tanga Table」遠矢弘毅(とおやひろき)さんへのインタビューです。

d47 MUSEUMNIPPON47 2017 これからの暮らしかた – Off-Grid Life –」のサイトはこちら

「Tanga Table」遠矢弘毅さん
生演奏のお店で熱唱中の遠矢さん(写真左)

 

北九州家守舎を一緒に立ち上げて6年。この男と小倉の街にいると、どこへ行っても必ず知人から声をかけられる。一緒に呑むと、ほぼ間違いなくエロくなる。とにもかくにも、艶っぽくてカッコイイ男である。

そんな遠矢弘毅は、鹿児島県阿久根市出身で、幼少期は野球少年だった。大学入学を機に北九州で暮らし始め、もう30年になるという。坊やと呼ばれていた20代前半から、ここでは話せない内容も含め、様々な仕事に携わってきたそうだ。

僕にとっては、気楽にサシ飲みができる数少ない相手なのだが、ときどき真面目な相談相手になってもらうこともある。そういう場面で特に感じるのだが、この男の言葉には何とも知れない説得力がある。そして、酸いも甘いも経験した男が醸し出す哀愁にも似た独特な存在感がそれを際だたせている気がする。

そんな彼の目に映る街と人について、タンガテーブル(こちらの記事もご参照ください。)の運営に関する話を交えながら色々と聞いてみた。まず、タンガテーブルを作ることになった際、一体どんなことを考えていたのだろう?

 

第6回リノベーションスクール@北九州での公開プレゼン(※2:16:18頃から)をみた際の、『やっと出てきたか』というのが率直な感想です。なぜなら、イケてる宿がないってことがこの街の課題だとずっと感じていたから。というのも、北九州は元々ものづくりの街で、企業出張者が多かったこともあり、『宿=寝泊まりできる場』という意味でビジネスホテルの立地がほとんどだったからです。それは仕方のないことかもしれないけど、色んな人との付き合いを通して時代の変化を肌で感じていると、これからはこの街で旅人向けの何かをプロデュースする必要があるんじゃないかと直感的に感じていました」

「そして、それが従来型の観光地開発ではないことも見えていました。つまり、何を目的にするかが大切で、バックパッカーのように、セルフプロデュースの旅によって地元の人や店の人と仲良くなることに楽しみを見いだすような人が増えていくんじゃないかと。だから、café causaを開業した頃から、ゲストハウス好きの人たちを集めて、北九州にもいつかは作りたいな、誰がどこに作る?など、あーだこーだとみんなで妄想していました。東京のNui.をはじめ、各地にゲストハウスが広まりつつあるのを横目に見ながら」

「ゲストハウスの良さは、世界中から色んな人が集まってくるところ。そして、この街の良さは『人』と『食』。だから、食にこだわった空間をゲストハウスとセットで設えることによって、そのコンセプトに共感した人たち、いわゆるアーリーアダプターのようなレイヤーの人たちが集まるようになり、そこからタンガテーブルの存在や場の空気感が勝手に一人歩きするんじゃないかなと思っていました。イメージとしては、東浩紀さんの著書『観光客の哲学』で触れられているような、新しい形の人間の関係性を生むようなきっかけづくりの場です」

 

なるほど。この街では誰も実現していなかった内容の提案だっただけど、この男には何年も前からその兆しと必要性が見えていたということのようだ。それが実現することになり、期待感も大きかったと思うけど、このタンガテーブルはダイニングも併設しているため、地方都市のゲストハウスとしては比較的規模が大きい。となると、事業化にあたっては、大変なことも多かったのではないかと思う。そこで、つくりあげる過程を振り返ったいま、どんなことを感じているのか聞いてみた。

 

「まず、資金調達面では、北九州家守舎での小さな実績の積み重ねが信頼となり、単独での事業化が難しい規模のこのプロジェクトを実施するチームがつくれたことに喜びを感じています。そして、事業化に際して色々なハードルがあったものの、オーナーさんが常に親身になってくれ、何かをつくりだそうとしている僕らを応援してくれていたことがとても嬉しくて心強かったです。とはいえ、本当に色々と大変なことの連続で、シビれました」

「それから、いまとなっては、番頭をしている西方君がその当時に登場してくれたことも大きかったと思います。彼は、黒川温泉の温泉宿で働いていた経験のある人物で、北九州家守舎の動きをウォッチしていたこともあって、このプロジェクトに自ら飛び込んできてくれました。開業当初はアップアップの状態で心配しましたが、いまでは自分なりの世界観を見いだし、タンガテーブルの顔になりつつあります」

「Tanga Table」遠矢弘毅さん
タンガテーブル取締役陣とスタッフのみんな

 

大きなことを始めるためには、当たり前のことだけど、やっぱりチームとしての総合力や色んな人の支えが必要なんだなと改めて感じた。このように色んな人たちの協力があって無事オープンしたタンガテーブルだが、オープン後、当初思い描いていたイメージ通りの場になったのかどうか聞いてみた。

 

「正直なところ、なかなかイメージ通りにはいきませんでした。リノベーション界隈の人たちにはアピールできていたものの、実際は、想定と異なる層にアプローチしていたなど、訴求する方向性がズレていた点が大きな理由だと思っています。加えていうと、メディア映えする空間なので、雑誌やテレビに甘えていた部分もあり、地域の方々に対するアピールが弱かったことも反省点だといえます」

「また、『北九州をあじわう、旅のはじまり』というコンセプトにとても魅力を感じていたので、ダイニングでは旦過市場の食材であることを前面に打ち出していたけれど、よく考えると地元の飲食店では当たりことだったわけです。だから、タンガテーブルが目指す方向性を踏まえると、食材も大事だけど、それ以上に旦過市場で働く人たちや地域との繋がりをもっと重視すべきだったなと反省しているところです。そして、この時間にはこの人がいる、みたいに人と場所が一体化した状態をつくり出せるかどうかも重要なのだと思いました。とはいえ、目指す姿に向けて少しずつだけど前進しているというのが実感です」

「Tanga Table」遠矢弘毅さん
旦過市場の裏側

 

真面目な質問ばかりしていると、意外とネガティブな話ばかり出てきたので、そこは割愛しました(笑)

だけど、改めて話を聞いてみると、理想と現実とのギャップに対するもどかしさが言葉の端々から伝わってくる一方で、「大丈夫。これも想定内だし、問題ない」という心の声が、ゆるぎない自信とともに押し寄せてくる気がした。なぜなら、アピールできていなかったことを反省点に挙げていたものの、敢えてアピールしないことに活路を見いだしていたのではないかとも思ったからだ。だって、目指しているのは、わざわざ声高に叫ばなくても、勝手に育っていく場をつくろうとしているのだから。

それを確かめるべく、最後に、今後の展望について聞いてみた。

 

「現時点でのタンガテーブルは、僕が思い描くような、あそこに行くと何かが起こるという状況には届いていません。だけど、ここには日常的に多くの外国人が訪れてくれているし、現場スタッフのみんなも自分たちのモノを求めるような雰囲気になってきました。そのこともあって、最近では、スタッフ自ら企画した定例イベントや、この場所を気に入ってくれた方々による持ち込みイベントなども増えてきているし。そういった意味で、十分に可能性はあると思います。だからこそ、色んな意味での見通しの甘さを認めつつ、人が集まる拠点づくりを目指してリスタートしたいと思っています。なんかやりたいなっていう人がこの場所を使い、そこに共感した人たちが自然と集まり、新たなつながりを生み出しながら、場が育っていくイメージです」

「Tanga Table」遠矢弘毅さん
スタッフ発案による発泡ワインパーティー

 

なんかカッコイイな。こんな風に語られると、多分そうなるだろうなと思ってしまうのが、この男の魅力だ。そのことは、是非本人と会って話して感じてもらいたい。つくづくそう思った。 

さて、今回は、「北九州をあじわう、新しい旅のはじまり」をコンセプトにしたタンガテーブルの運営の話を通じて、この街や人に対する思いを遠矢弘毅さんに伺った。

話の内容を僕なりに整理してみると、ゲストハウスや旅というと、一般的には観光をイメージしがちだけど、彼がそのことをハッキリと否定していたことからも分かるように、旅を通してその街や人の生き様を肌で感じられるような媒体をつくろうとしているのではないかと感じた。何かに対するアンチテーゼとして。

観光という言葉には、文字通りその街でキラリと光るものを観察するという意味が込められているが、いわゆるまちづくりの中でそれを強調するあまり、いつのまにか、光の部分として何か特別なものをアピールし、それを見てもらうために何かしなければならないという強迫観念のようなものが定着してしまったのではないかな、と。でも、本来は、その街にある何気ない日常や生業の中にこそ光るものがあるわけだし、それを感じることに旅の醍醐味があり、その媒体となるのが人なのではないか。だから、そんな感覚の人たちが集まる場づくりによって、この街の財産である人と食に触れてもらいたいってことなのだろう。そして、それは時に楽しく、時に泥臭く、人と向き合いながら街にどっぷりと浸かり込んで生きてきた男だからこそ仕掛けることのできる街の変化の兆しづくりなのだと。

遠矢弘毅の話を聞いていて、そんな風に感じた。

今宵は、大好きな彼に敬意を表して、芋焼酎を呑みたいと思うw

URL

Hostel and Dining "Tanga Table"

café causa

北九州家守舎

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