自然の大博物館「野草園」
ガイドウォーキングで知的な散策を
西蔵王にある「山形市野草園」へ行ってきました。
26ヘクタールの広大な土地に、1000種類以上の野草や樹木が集まっています。効率よく観察して歩いても、全体をまわると8時間はかかるほどの広さです!
そもそも「野草」とは、山野に自然に生えている植物のこと。
9月の野草園には、緑を基調に野花のやさしい紫やオレンジ、黄色がチラチラと顔をのぞかせます。素朴なかわいらしさの中に、たくましさもある、植物本来の姿になんだか心が癒されるのです。
野草園では、毎週ガイドウォーキングが行われています。ガイドの上野さんに、野草園や山形の植物事情について、ていねいに解説していただきました。ガイドさんにご一緒いただくと、野草園の散策が何倍も楽しくなります。
「山形と宮城はお隣同士ですが、自生する植物の性質は大きく違うんですよ」と話す上野さん。
そんな驚きの植物の豆知識を、ほんの一部ですがご紹介します。
山形の植物は葉っぱが大きい
山形と宮城で植物の性質が異なる理由のひとつは、日照時間。日本海側に位置する山形は日照時間が短く、植物たちは日光を効率よく受けられる形状をしています。そこで活躍するのが葉っぱです。同属の植物でも宮城のそれと比べて葉っぱの面積が大きかったり、葉っぱの数が多い特徴があります。
山形に多い植物の一例は、「オオバクロモジ」。「クロモジ」の変種で、日本海側北部の気候に合わせて、葉っぱが大きく進化しました。楊枝に使われる木で、葉っぱは上品ないい香りがします。古くから山で暮らす人はお茶として楽しんでいるそうです。
山形の植物はしなやか
山形をはじめ、新潟、富山など日本海側の降雪地域の植物は、枝や幹がしなやかに曲がるものが多いそうです。
その顕著な例が「ユキツバキ」。雪が積もっても、その重さを全身で受けとめて、寒さから身を守り、また春になると起き上がります。ポキっとは折れない。一方で、同属の「ヤブツバキ」は東北以西の暖地に生育し、ユキツバキと比べて枝が折れやすいそうです。
蔵王では奇跡の蝶と出会える
「アサギマダラ」ってご存知ですか?
数千キロにかけて海を渡るアサギマダラは、奇跡の渡り蝶といわれています。マーキング会によって蔵王でマークされたものが、沖縄県の離島や台湾で発見されているそうです。
幸運なことに9月末、野草園に飛来しているのを目撃しました!
アサギマダラが野草園に来る目的は「フジバマカ」の蜜。フジバマカには毒成分があり、その蜜を吸うことで、体内に毒を蓄えます。
渡り蝶は鳥に狙われがちなのですが、その毒性を知ってなのか、鳥はアサギマダラを襲わないそうです。サバイバル能力が高いアサギマダラ。不思議な自然の仕組みです。
植物の形や色には、すべて意味がある。ガイドウォーキングでは「なるほど〜!」の連続です。野草のたくましさと素朴なかわいらしさに、癒しもたくさんもらいました。
ガイドウォーキングは毎週日曜日・祝日に行われます。日時の詳細は、こちらからご確認ください。