【豊島】てしま天日塩ファーム 門脇湖さん、門脇まゆみさん 離島で天日塩をつくる夫婦
香川県の離島に、天日塩づくりに挑戦する夫婦がいる。東京から移住してきた門脇湖(ひろし)さんと、まゆみさんご夫妻。移住して4年目、天日塩づくりを始めて1年目だ。
今年48歳を迎えた湖(ひろし)さんは、20代の頃、東京でクラブのプロデュースや立ち上げに関わってきた。一度仕事から離れて、バックパッカーで世界中を旅した。その後、FMラジオ局でディレクターに。全国各地、地域おこしなどで頑張っている人を取材する番組を担当していたため、今度は日本全国を駆け巡る日々になった。
「島暮らしをしてみたくて。ひそかに取材先に島ばっかり選んでいました(笑)」
最初は東京の離島、小笠原に暮らすことを夢見て模索していたが、なかなか具体的に話が進まなかった。そんな時、香川県の豊島を訪れることに。「島キッチン」の店長を取材する仕事がきっかけだった。
この時まで名前すら知らなかったという豊島に初上陸。滞在時間は、わずか4時間だった。しかし、その約2週間後には、豊島に移住することを決意していたという。運良く、豊島にあるレストランのマネージメントの仕事も見つけることができた。
仕事が決まった湖さんは、妻のまゆみさんにメールで報告。急であったが、かねてより島移住の夢を聞いていたまゆみさんは、一度も行ったことのない島での暮らしを受け入れた。
移住後、湖さんは2年間、海辺に面したレストランの店長を務めた。
そしてある時、豊島の海を眺めながらふと、この地で塩づくりをすることを思いついた。
「塩は、人間が生きていく上に絶対に必要。生きることに直結したものをつくれることに魅力を感じ、やりたくなったのです」
塩のつくり方には、釜で煮詰める方法や、太陽の力で乾かす方法などある。2人とも塩づくりなどしたことはなかったが、どうせやるなら手間を惜しまず「本物」を目指そうと、1カ月ほどかけて、自然の力でつくる天日塩を選択した。
ノウハウを学ぶため、高知県の黒潮町に研修へ行った。天日塩でも3、4日で完成するやり方もあるが、ここでは、1カ月手間ひまかけて天日塩をつくっている。
「今は採算性よりも、どうやるのが『本物』に近づくのかということを一番に、日々試行錯誤しています」
なお自然の力を最大限に引き出す塩づくりに励んでいるうちに、彼らの暮らしもシンプルなかたちに近づいていったという。
その姿はとてもストイックに映った。
「そんなにストイックでもないよ?合間に釣りしたり、山菜採ったり、栗拾ったり。仕事っていう感覚より、歯を磨いたり、ご飯食べたりの延長上で1日の自然な塩をつくっている感じ(笑)」
基本はバックパッカーをしていた頃の自由な精神のままの、湖さん。
「基本は旅人なんで。あと5年若かったら、こういうことをやってないと思う。一つの場所に固定されるのがすごく嫌だったから。仕事でも住処でもいつでも自分が思ったらすぐに動ける状況をつくっときたかった。でも、そろそろどっかで根を張ってやっていくのも、今はいいかなと思っている。おじさんだから(笑)」
天日塩の販売を開始して半年ほどが経ち、この度、島の特産品である無農薬のレモンと掛け合わせた、「レモンの塩」が完成した。試作を繰り返し、まさに商品化したばかり。ただでさえ手間ひまがかかるのに、できた天日塩に無農薬のレモン果汁を染み込ませ、さらに天日で干すという根気の逸品。
まだまだ始まったばかりの門脇夫妻の挑戦。導かれるように塩をつくり始めた彼らが、目指す「本物」の塩を。ぜひ、一度試してみてほしい。
名称 | てしま天日塩ファーム |
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業種 | 製塩業 |
URL | |
住所 | 香川県小豆郡土庄町豊島家浦3454-12 |
TEL | 0879-62-8822 |
営業時間 | 施設の見学は要相談。商品の販売は、インターネットや、島外のショップ、島内のゲストハウスmammaなどで購入可能。 |