金沢海みらい図書館
”天下の書府”金沢の図書館 vol.2
加賀藩の五代藩主・前田綱紀公は、全国各地の多種多様な工芸品と、ありとあらゆる書籍・資料を収集。天下一を誇るその蔵書から、加賀藩は「天下の書府」とまでいわれ、現在の金沢も図書館が充実しています。
住む人はもちろん、旅で訪れる人にもぜひ使ってほしい。そんな思いからスタートした企画、金沢の図書館シリーズ第2弾は「金沢海みらい図書館」です。
水玉模様のランドマーク図書館
「金沢海みらい図書館」といえば、この水玉模様! 真っ白なキューブ型の建物の外壁4面に、約6,000個の大・中・小の円形窓が並ぶ姿が何とも美しく、地元市民だけでなく建築ファンも多く訪れる金沢ベイエリアのランドマーク的存在です。
金沢市の観光名所となった「金沢21世紀美術館」も円形の名建築ですが、「金沢海みらい図書館」は円形の窓がポイント。究極の美を突き詰めていくと、◯と□に行き着くのかもしれません。
「金沢海みらい図書館」は2011年5月に、金沢市立で4番目の図書館としてオープン。既存の「金沢市立玉川図書館」「金沢市立泉野図書館」などはJR金沢駅より東側にあり、西部地区では初の大型図書館です。2012年には「Flavorwire」というサイトで「世界で最も美しい公共図書館ベスト25」に、2013年にはBBC「世界の素晴らしい公立図書館4館(世界のスーパーライブラリー)」にも選ばれています。
設計は40社のコンペを勝ち抜いた工藤和美と堀場弘の建築ユニット「シーラカンスK&H」です。「海」「みらい」に「シーラカンス」の組み合わせって偶然?と、運命を感じてしまうのは私だけでしょうか。
▼The 25 Most Beautiful Public Libraries in the World(3番目に掲載されています)
http://flavorwire.com/280318/the-25-most-beautiful-public-libraries-in-the-world?all=1
http://flavorwire.com/280318/the-25-most-beautiful-public-libraries-in-the-world/3
世界・歴史・未来の交差点にたつ
金沢市の図書館は4館それぞれにテーマや役割があり、「金沢海みらい図書館」は日本海、ものづくり関係の書籍と姉妹都市の資料が充実。そこには、藩政期に北前船の海運業で栄え、銭屋五兵衛など世界に視野を向けて活躍した豪商を輩出し、産業も発達したこの辺り独自の歴史と地域性が反映されています。
近年は金沢外環状道路海側幹線(通称:海側環状)や北陸自動車道「白山IC」が整備され、郊外型ニュータウンとして人口も急増中のエリアですが、今も変わらず金沢の海の玄関口であり、大野醤油や味噌などの伝統的な食品産業も盛んです。蔵書は28万冊以上(2018年3月末現在)で、「海」だけでなく「みらい」を感じさせる最新設備にも注目です。
2・3階の吹き抜けになった閲覧室は、広い空間を壁で仕切らず、25本の柱と外壁で支えています。高さ12mある吹き抜け部分の天井には照明も天窓もなく、四方の壁にある円窓から外光を取り入れています。時間や天候に応じて中央にある円筒形の螺旋階段&エレベーター室上部のライトが点灯し、間接照明で明るさを補いますが、通常は書棚に設置された照明と、閲覧席の読書灯があれば充分。2階の一般図書・生涯学習コーナーには、書籍と新聞・雑誌に加えインターネット用のパソコンも6台あり、いろいろな調べ物に便利です。
3階の地域情報フロアには日本海情報・ものづくり情報コーナーと、姉妹都市の中国・蘇州市と韓国・全州市の寄贈図書のコーナーがあります。3階の学習席は私物の本やパソコンの持ち込みもOKで、手続きをするとWi-Fiも使えます(電源利用はなし)。席数も多く、静かでとっても落ち着きます。
1階には総合カウンターと児童図書コーナーがあり、図書館エリアの手前には地域活動に利用できる交流ホール、集会室などがあります。ロビーはギャラリーとしても公開され、自動販売機やテーブル席も用意された館内で唯一の飲食可能スペースになっています。
「みらい」を感じる最新技術
金沢市で一番新しいこの図書館には、「みらい」を感じさせる便利な最新技術が導入されています。読みたい本を検索するパソコン端末は、今やどこでもおなじみですが、「金沢海みらい図書館」には来館者自らが操作できる「自動貸出機」と、書庫の奥から欲しい本をスピーディーに取り寄せられる「自動化書庫」が備わっています。
「自動貸出機」は金沢市立図書館の共通貸出カードをセンサーにかざし、台の上に本を重ねてのせると簡単操作で手続きが完了。スーパーのセルフレジに似ています。来館者の皆さんも、各階の端末を使って自分でサクサクと貸出処理をされていました。
もう一つの最新技術「自動化書庫」(日本ファイリング製)は、書庫内にある本を機械で出納するシステム。読みたい本が書庫内にあれば、職員がカウンターにいながら本を機械で取り寄せてくれます。書庫内は立体駐車場のような構造で、何層にもなった棚にコード管理された本のコンテナが収められていています。数万冊からお目当ての本を取り出すには、人力よりも数倍スピーディーです。開架・自動化書庫を合わせると40万冊の収蔵力があるので、将来を見据えた設備でもありますね。
ほかにも、書架の下部に設置された通気口から館内の空気をおだやかに循環させる空調システムや、防音ガラス張りの携帯電話ブースの設置など、ハードもソフトも至る所が機能的で美しい。こんな気持ちのよい図書館が近所にあれば、毎日でも通っちゃうんだけどな…。「むしろ近所に引っ越すのもありかも!?」なんて思えてくる、金沢が世界に誇る図書館です。