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中山ダイスケ × 宮本武典【後編】/ぼくらのアートフェス 1

2018年秋に山形ビエンナーレが開催されるのをまえに、トークイベント「ぼくらのアートフェス」が始まった。全5回のこのシリーズは、全国で開催されているアートフェスのディレクターをゲストに迎え、東北芸術工科大学の中山ダイスケ学長が聞き手となって、それぞれのアートフェスに込められた想いを掘り起こし、その魅力を紐解いていくもの。芸工大の学生にとっては単位修得の講義となっており、学生たちに芸術祭への理解を深めてもらいつつ、会期中はスタッフとしてより楽しくより深くビエンナーレに参加してもらうという狙いもある。
第1回のゲストに登場したのは、山形ビエンナーレのプログラムディレクター宮本武典さん。前編につづき後編をお届けします。

〉〉〉中山ダイスケ×宮本武典(前編)はこちら

中山ダイスケ × 宮本武典【後編】/ぼくらのアートフェス 1

切実なストーリーを
軽やかに見せて行く

宮本:中山先生が、山形ビエンナーレで印象に残っているものはありますか?

中山:「spoken words project」ですかね。東京で活躍しているファッションデザインチームで、服の形というよりも服に何をプリントするかというグラフィック寄りのアーティストですね。南相馬の子どもたちのプロジェクトのときに衣装デザイナーとして山形に来てくれて、それ以来、山形を気に入って、春夏のコレクションとはまた別に創作のために山形に来て、服をつくって、使われなくなった街の古い写真館を借りて、そこに置いてね。。。

宮本:「わたしは鬼」という企画ですね。

中山ダイスケ × 宮本武典【後編】/ぼくらのアートフェス 1
spoken words projects+和合亮一「わたしは鬼」

中山:その古い写真館にどっさりと服が積んであって、みんな好きなものを選んで着て、被写体として写真を撮ってもらうんだよね。きゃっきゃっ言いながら服を着て、プロのカメラマンにパシャパシャ撮ってもらって。

宮本:そうです。実はこの企画は、詩人の和合亮一さんとのコラボレーションなんです。震災の記憶がどんどん風化していくなかで、被災地のストーリーをそれまでとは違う伝え方で伝えていこうと、和合さんの『廃炉詩篇』という詩集、これは反原発というか、福島の悲しみを歌った詩ですが、それがこの服に刷られているんです。単純にインスタ映えするファッションのプロジェクトのようでいて、実はそういうメッセージを軽やかに伝える試みなんですね。

中山:真面目にメッセージTシャツを着て真顔で写っていても誰も見てくれないけど、これだと見てくれますしね。

宮本:切実なものを切実な言葉で伝えてもみんな耳を塞いじゃうし、ビジュアルでストレートに見せても世の中の人たちは振り向かない。だから、どうやって軽みのあるものとして打ち出していくかが重要でした。山形ビエンナーレって、ちょっとオシャレでかわいいと思っている人もいますけど、裏側にあるコンセプトは切実な想いや問題意識からつくられているものが多いんです。

中山:ちょっと今更ですけど、宮本さんは「大学を使って展覧会をつくってくれ」っていう依頼でこの大学に来ているキュレーターなんですよね。グラフィックを学生に教えてって言われている僕とはちょっと違うわけです。展覧会のたびにプロジェクトのチームをつくって、そこに参加した学生だけがそのときだけ宮本さんから学ぶことができる、という感じです。宮本さん自身が、そのときにしか体験できない体験を学生に提供する、というような役目をされているんです。 その意味では、キュレーターとしての宮本さんのクリエイションはアーティストに近い。それはすごく大事で、そこにシンパシーが生まれるんですね。やってくるアーティストの気持ちがわかるキュレーターの存在は大きい。僕もアーティストとして世界中の美術館で展覧会したけれど、いくらコンセプトを理解していても、ポーランドの奥地の美術館で気持ちを共有することは難しい。もしそこが共有できたら、アーティストは200%の力を出せるんじゃないかと思うけど、その部分が宮本さんのキュレーターとしての優れた資質だと僕は見ています。

中山ダイスケ × 宮本武典【後編】/ぼくらのアートフェス 1

宮本:ありがとうございます。この芸術祭をつくっていくなかで、アーティスト自身もすごく変化していくし、そこに関わっている地元のデザイナーや職人や事務局のスタッフや僕自身も成長させてもらっています。それに対して、実は、一番むずかしいのは学生なんですね。

中山:学生スタッフは入れ替わるから必ず新人になりますもんね。

宮本:毎回フレッシュですからね。

中山:でもまあ、そこは、学生のみんなにはしっかり楽しんでやってほしいな。

宮本:逆にアーティストとはツーカーの関係でやっているので、学生のみんなには受け身じゃなくて積極的に関わろうという意識で参加してほしいですね。「山形ビエンナーレは同じメンバーでがっちりコミュニティをつくっているから入りづらい」といったことを言われることがありますが、関係性を密にしないといい仕事ができないのもまた事実なので。

中山ダイスケ × 宮本武典【後編】/ぼくらのアートフェス 1
山形ビエンナーレ2018 メインビジュアル「山のヨーナ」

中山:そうですよね。このトークイベントも、学生のみんなにもっとビエンナーレに関わってもらいたいし、勉強して体験できたらこんなに面白い授業はないと思ったからやってみたわけで。ぜひみんなの学びにしてもらいたいですね。 さて、そろそろ時間ですけど、宮本さんは今後、山形ビエンナーレをどうしていきたいですか。

宮本:山形ビエンナーレは、山形でどんな芸術祭をつくることができるのか、みんなで実験してみる芸術祭です。街と人、人と人が出会い、交流して面白いものが生まれていく可能性や風景をたくさんつくっていきたい。その結果として、すごく愛に溢れた街になると思うんです。とにかくみんなで参加して、出会い、一緒につくることに熱中して、出来あがるものを楽しみたいと、そう思っています。

中山ダイスケ × 宮本武典【後編】/ぼくらのアートフェス 1

中山:なるほど。僕はね、もっとビエンナーレに便乗する人が出てきたらいいなあって思ってます。ビエンナーレ期間中に盛り上がっているシネマ通りで勝手に結婚式挙げる人が出てきたり、勝手に屋台を出して商売はじめちゃう人が出てきたりしないかなって。芸工大が「やる」と言わなくても「今年もやるよね」って、そこかしこから勝手にアーティストが集まってきてなんか始めるようになればいいって。

だって、山形の花笠祭りや全国各地のお祭りだって、最初に始めた誰かがいて、なんかつくろうぜって始めたら、今やなくてはならないお祭りになっている。あんなふうになったらいいな、と思っています。
ということで、今日はありがとうございました。

2018.6.5

宮本武典(Takenori Miyamoto)/1974年奈良県奈良市生まれ。東北芸術工科大学美術館大学センター教授・主任学芸員。展覧会やアートフェスのキュレーションの他、地域振興や社会貢献のためのCSRや教育プログラム、出版企画をプロデュースしている。とんがりビル「KUGURU」キュレーター、東根市公益文化施設「まなびあテラス」芸術監督。akaoniとの企画・編集ユニット「kanabou」としても活動中。

中山ダイスケ(Daisuke Nakayama)/1968年香川県生まれ。現代美術家、アートディレクター、(株)daicon代表取締役。共同アトリエ「スタジオ食堂」のプロデュースに携わり、アートシーン創造の一時代をつくった。1997年ロックフェラー財団の招待により渡米、2002年まで5年間、ニューヨークをベースに活動。ファッションショーの演出や舞台美術、店舗などのアートディレクションなど美術以外の活動も幅広い。山形県産果汁100%のジュース「山形代表」シリーズのデザインや広告、スポーツ団体等との連携プロジェクトなど「地域のデザイン」活動も活発に展開している。2018年4月、東北芸術工科大学学長に就任。

トークイベント撮影_根岸功
展覧会およびビエンナーレ写真提供_宮本武典

山形ビエンナーレ公式サイト

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