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第2回:パン偏愛は、「パンプシェード」になりました。

[連載] ただいま、神戸。

30代になりUターンした神戸を再発見する日々について綴る、「ただいま、神戸。」の2回目(初回はこちら)。こんにちは。ライターのもめです。今回は、パンへの偏愛を込めた作品を作り続ける女性を取材しました。では、どうぞ。

第2回:パン偏愛は、「パンプシェード」になりました。
こちらがパンを偏愛する女性、森田優希子さん。

パンの街、神戸で生まれる「パンプシェード」とは。

神戸は、パン屋に恵まれた街だ。この街の一角で、本物のパンを素材とした、一風変わったプロダクトが作られている。それはパンのランプシェード、その名も「パンプシェード」。スイッチを入れると、パンから穏やかな光が放たれる。作者は、アーティスト「モリタ製パン所」の森田優希子さん。

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左からバゲット(税別15,000円)、バタール(税別14,000円)、ブール(税別12,000円)。光の放ち方もそれぞれだ。

モリタ製パン所のアトリエは、神戸北野のシェアオフィス「KITANOMAD」の一室にある。私がマネージャーとして働くFARMSTAND(神戸の地産地消の推進を目指したショップ)もKITANOMAD内にあるので、言わばご近所さん。アトリエの表に掛けられたパンの存在が気になっていたので、詳しく話を聞いてみたいと思っていたのだ。中に入ると、代表の森田さんが出迎えてくれ、その向かいの席でスタッフの小林さんが黙々とパンをくりぬいていた。パンプシェードのほとんどは、神戸の老舗のパン屋「ビゴの店 神戸三宮店」のパンを使い、中身をくりぬき、特殊な塗料を塗って仕上げられている。

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箱に詰められているのは、完成したパンプシェード。東京を中心としたインテリア雑貨店やインターネットで販売されている。

自分だけが知るパンの魅力を追求。絵を描いたり、カビを顕微鏡で観察したり

森田さんから感じるのは、絶えることないパンへの無限の偏愛。もともとあったパン愛が爆発したのは、京都の芸術大学に通いながらパン屋さんでアルバイトをしていた時。同じ生地を太く短く成型するとバタール、細長く成型するとバゲッド同じ生地でも成型の仕方によって名前、味、食感が異なるなど、パンの奥深さを知った森田さんは、パンの探求にどんどんのめり込んでいった。

一方、芸大でアーティストの卵として取り組んでいた版画の制作活動に、行き詰まっていた時期でもあった。アーティストとしてのスランプと、膨らみ切ったパン愛が結びつき、パンのアート作品に挑むことにした。アルバイト先のパン屋から、廃棄となるパンを持ち帰っていたので、家がパンだらけだったことも作品作りに拍車をかけた。

それからは、パンが作品となり得る切り口を探り続けた。パンの絵を描いたり、パンをスライスして顕微鏡で観察したり、パンに生えるカビの観察をしたり。いろいろ試すものの、なかなか作品に結びつかない。ところがある時、転機が訪れた。くりぬいたパンをふと持ち上げると、部屋に射す太陽の光に、くりぬいたことによって薄くなったパンの生地が透かされ、まるで光っているように見えたのだ。「これは!」と思い、くりぬいたパンを近くにあったライトに当ててみた。光に透けるパンの質感、パンを通した灯りの柔らかさ。森田さんは思った、「パンと光。自分だけが発見したパンの魅力だ」と。パンプシェードの原型が誕生した瞬間だ。

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くりぬいたパンに偶然光が当たり、パンプシェードが誕生した瞬間を再現する森田さん。

「知識だけなら、パン屋さん巡りしている人に負けるし、パン作りは職人さんが上手い。だけど、パンを光らせる人は、他にはいない。私がパンを光らせないで誰が光らせるん?っていう使命感があります(笑)」

「パン職人を喜ばせたい」パンプシェード職人としてのプライド。

素材提供元である「ビゴの店」のパン職人さんは、パンプシェードに適したいい仕上がりのパンを選んで納品するそうだ。焼き色のバランス、膨らみ方などは、一つ一つ異なる。パンプシェードだからこそ、パン職人のこだわりを「見た目」に特化して、半永久的に保存することができる。なるほど、パンの魅力は美味しさだ、というのは固定概念なのかもしれない。

一方、別のパン屋からは、売れ残って行き先のないパンを、不定期で少量ずつ届けてもらっている。パン屋それぞれの特徴、思いを汲み取り形にしていくことが、パンプシェード職人としての森田さんの使命と誇りである。

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くりぬき、特殊な塗料を塗ったパン。この中にライトを埋め込む。

アーティストとして、経営者として飽くなき探究心は続く。

最近始めた新プロジェクトがある。オリジナルパンプシェードの受注生産だ。パン屋がディスプレイ用にオーダーする可能性を見込んでいるが、自分が好きなパン屋のパンを素材としてオーダーする場合もあるだろうし、家庭での自家製パンの場合もあるだろう。パンの形、パンへの愛は千差満別。森田さんのパン職人、パンを愛する人へのリスペクトが込められた取り組みだ。

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あなただけのパンプシェードを作りませんかと呼びかける新プロジェクト。(パンプシェードのWebサイトより)

パンをくりぬきライトにするという地道な作業。森田さんは「全然飽きないです」と、尽きることないパンプシェード職人としての探究心を見せる。こだわりたいディティールはまだまだあるし、パン屋さんとのコーポレーションについても一件、一件やり方を工夫したいと言う。

パンプシェードというアイデアをひらめいて約10年、作り続けて約7年。地道な努力は外へと広がり、パリやアメリカの老舗の百貨店での取り扱いなど、世界からも注目を集めつつある。制作のスタッフを最近雇ったことで、ようやく森田さんが営業や新企画に力を入れることが出来るようになった。

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置くことで点灯する手のひらサイズ。

芸術大学出身ということもあり、「アーティスト」としてスタートし、現在もアーティストという肩書きで語ることも少なくないが、スタッフを抱える今、経営者として成長すべく奮闘中だ。アーティストを支援する目的のシェアスペースから、個人事業主が多いシェアオフィスにアトリエを移転したのもこのためだ。

パンプシェードと共に、細やかなアップデートを積み重ねる森田さん。同世代の女性の努力に触れて、静かに熱くなる胸。さあ、私も頑張ろう。

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くりぬいたパンは、絶対に捨てないのがポリシー。ラスクなどに加工して食べ切る。このラスクはアトリエと同じ施設内にあるギャラリーのオープニングパーティーで振る舞われた。
名称

パンプシェード(モリタ製パン所)

URL

WEBサイト http://pampshade.com/about.html

Instagram https://www.instagram.com/pampshade_by_yukiko_morita/?hl=ja

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