いくつもの顔を楽しんで 西新商店街
福岡でいちばん好きな街は?ときかれたら、迷わず「西新商店街」と答えます。福岡市中心部の天神や博多からは少し離れていますが、懐かしさと新しさが混在する長い商店街は、大人の街、若者の街、生活の街、などなど、様々な街の表情を楽しめるスポットなんです。福岡にお越しの際は少しだけ西側へ足を伸ばして、福岡いち元気なこの商店街を覗いてみてください。
西新商店街を知っていますか?
福岡のちょっとディープな観光について調べたことがある人なら、この画像に見覚えがあるかもしれません。
商店街の真ん中にずらりと列をなすのは「リヤカー部隊」。
新鮮な野菜や色とりどりの花などの品揃えはもちろん、パワフルな店主のみなさんとの会話が楽しめるのも魅力。
今でもこんなライブ感のある風景が楽しめる賑やかな商店街、ここが今回ご紹介する西新商店街です。
「西新商店街」の正体
正確に言うと「西新商店街」という名前の商店街はないんです。
福岡市営地下鉄の西新駅から藤崎駅まで、約1.5kmにわたって東西に伸びる商店街は、実は5つの商店街の集合体。
東から「オレンジ通り商店街」「西新中央商店街」「中西商店街」「高取商店街」「藤崎商店街」には、それぞれ彩りの違う魅力があるんですよ。
今回はその特徴について紹介していきたいと思います。
大人の西新:オレンジ通り商店街
地下鉄西新駅の4番出口を出ると、そこに待ち構えているのは巨大な工事現場。
2015年に惜しまれつつも閉店した西新エルモールプラリバの跡地が満を持して再開発の槌音を響かせています。
この工事現場のふもとを鋭角に曲がると、そこがすぐ「オレンジ通り商店街」。
ここをを一言で表すとすれば「しゃれた大人の西新」です。
表通りこそ新しい店もあるけれど、横丁を覗き込めば昔懐かしい、間口の狭いスナックや小料理屋、ひっそりたたずむバーの群れが出迎えてくれます。
小さなお店が多く、残念ながら惜しまれつつも閉店してしまうお店もあるのですが、不思議とその後にも個人経営の素敵なお店が入ってくる、なんとも不思議な立地でもあります。
■あじさわ
福岡県福岡市早良区西新1-11-20/[月・水・金~日] 11:30~22:20(L.O.)[火・木] 17:00~22:20(L.O.)/年中無休
親しみやすいお好み焼き屋さん、と見せかけて、界隈では「ワインの美味しい店」として評判のお店。お好み焼きはもちろん、ワインによく合う鉄板メニューも豊富です。
■芽瑠辺
福岡県福岡市早良区西新1-7-10/11:30~23:00/定休日:日曜日・祝日
「カフェ」ではなく、あくまで古き良き「喫茶店」。ザ・洋食といった趣のランチメニューも豊富で、今でも地域の方々の憩いの場になっています。
■馬上荘
福岡県福岡市早良区西新1-7-6/[火~土]18:00~23:00[日・祝]18:00~22:00/定休日:月曜日
福岡名物のひとつでもある一口餃子の名店。もちもちの皮と軽い食感の餃子は、ひとり20個はぺろりといけてしまうおいしさ。個人的には、この餃子の餡が包まれたふわふわのオムレツがおすすめです。
■イタリア食堂 キャリー
福岡県福岡市早良区西新4-4-4/【日〜木】18:00~翌1:00(L.O.24:00)【金・土】18:00~翌3:00(L.O.翌2:00)/定休日:火曜日
前菜からデザートまで、本格的なイタリアンがリーズナブルに楽しめます。夜限定の営業で深夜3時まで開いているので、まだ全然話し足りないけどラーメンの気分じゃないなあ、なんてときは2軒めのここで濃いめのコーヒーとガトーショコラをいただく、というパターンも。
■酒場たむさん
福岡県福岡市早良区西新4-4-23 2F/18時~翌3時(LO2時)/定休日:木曜日
豊富に取り揃えられた各地のお酒が1杯500円で楽しめる敷居の低いバー。プレミアム日本酒を少量で出してくれる嬉しいメニューも。バーではありますが、野菜がごろごろ入った豚汁と、その豚汁をベースにしたカレーがまた美味しいんです。
横丁レトロ宝探し:西新中央商店街
西新駅の出口が即商店街の入口という好立地ゆえ、「西新中央商店街」の表通りにはナショナルチェーンやパチンコ店も立ち並ぶ繁華街。
でも実は、レトロなお店もしっかり残っているというのがこの商店街の特徴なんです。
特に注目なのは横丁たち。
わずか160メートルほどの商店街に、はとや商店街通り、ハトヤ新道商店街、勝鷹水神通り商店街、西新名店街とたくさんの横丁が接続していて、それぞれにレトロな佇まいを見せるお店がならんでいます。
■蜂楽饅頭 福岡本店
福岡県福岡市早良区西新4-9-18-1/10:00~19:00/定休日:火曜日・年末年始
西新の甘いもの、といえば何をおいてもまずはここ。ひとつだけ買うなら断然白あんがおすすめで、あつあつのお饅頭を二つに割ると蜂蜜の香りが立ちのぼります。真夏には山盛りの青いかき氷「コバルト」に行列が。
■大徳屋
福岡県福岡市早良区西新4-8-15 1F/11:00~19:00/定休日:火曜日
ラーメンと並んで福岡市民のソウルフードと言えばうどん。優しい味の出汁にふわっとした麺がほっこり心温まります。個人的におすすめはキス天うどん。店頭ではかしわおにぎりやうどんだしの販売も。
■朝美食堂
福岡県福岡市早良区西新4-9/10:30~16:00/定休日:日曜日
1949年から店を構えるレトロ感漂う食堂。温かい雰囲気の店内で、昔から変わらない安くて美味しいメニューが出迎えてくれます。
■福どり
福岡県福岡市早良区西新4-7-17/11:00~20:30/年中無休
昔懐かしい商店街のお惣菜屋さん。日替わりで40〜50種類のお惣菜が並ぶさまはもはや圧巻。300円を切るお弁当のラインナップも豊富で、もしオフィスがここにあれば昼は毎日ここで買います。
■リヤカー部隊
西新中央通り商店街・中西通り商店街/月〜土13:00〜19:00(店舗によって出店日・出店時間が違います)
冒頭でもご紹介したリヤカー部隊は、この西新中央商店街が本拠地。商店街の真ん中にずらりと並ぶリヤカーには、福岡近郊で取れた野菜や果物が満載されています。新鮮な商品はもちろんですが、醍醐味はリヤカー店主の元気なおばちゃんたちとのやり取り。地元の人はもちろん、観光客にも人気です。
若者たちの街:中西商店街
実は、アドレスとしての西新は学生の街という側面を持っています。
100年以上の歴史がある西南学院大学をはじめ、高校や中学校が集まっている文教地区としてファミリー人気も高いエリア。
その学生たちの姿をいちばんよく見かけるのが、5つの商店街の中で一番長い「中西商店街」です。
バルやカフェなどちょっとおしゃれなお店から、安くてたっぷり食べられる学生さん向け食堂まで、いろんな意味で若者ターゲットなのが特徴。
ぶらぶら歩くだけでも楽しいのですが、なかでもぎゅっと凝縮された魅力があるのが南に伸びる横丁「おもしろ21」。
ごくごく短い範囲にカフェやベーカリー、古着屋や雑貨店がぎゅうぎゅうに立ち並んでいて、文字通りおもしろいエリアになっています。
■ロヂウラベーカリー
福岡市早良区西新5-6-5-1F/10:00〜19:00/定休日:火曜日・水曜日
おもしろ21に漂ういい香りの源は大抵ここ。いつもお客さんの絶えない人気のお店ですが、店舗が小さいのでみなさん仲良く譲り合って買い物するのも面白いところ。隣にはこれまたぎゅっとコンパクトなカフェも併設されています。温かいバゲットに冷たいあんとバターをのせた、カフェ限定の「ひやあつあんバター」が人気。
■ハナウタザッカテン
福岡市早良区西新5-2-30 1F/11:00〜19:00/定休日:水曜日
ハンドメイド雑貨や手作りお菓子、子供服など、個性豊かでカラフルな商品がところ狭しと並ぶキュートな雑貨店。2Fのカフェスペース「Olympia」では、こちらもカラフルなフルーツタルトやアイシングクッキーが楽しめます。
■MOOK(Music, Movie and Books)
福岡県福岡市早良区西新5丁目6-5/10:00〜20:00(土曜日は深夜営業あり)/不定休(土日は確実に営業)
学生街でありながら全国的な流れに勝てず、残念ながら本屋さんが少なくなりつつある西新。そんな中にあって貴重な古書店・ギャラリー・コミュニティスペースです。本はもちろんレコードや映画、ボードゲームまでが並ぶ店内は何時間でもいられる楽しさ。
■衣笠
福岡県福岡市早良区西新5-2-35/12:00~23:00/不定休
レトロ感漂うレンガ調の外装がすてきな定食屋。磨かれたカウンターはまるで喫茶のような趣ですが、安くてボリュームたっぷりの定食がいただけます。どうやら西南大の学生さんの憩いの場でもあるようで、店内にはサークルやイベントのポスターも。
■NIYOL COFFEE
福岡県福岡市早良区祖原14-21/[日]11:00~18:00[月]8:00~20:00[火・水・金]10:00〜20:00[土]11:00~22:00/定休日:木曜日
おもしろ21を抜けた先、小さな倉庫の並ぶ一角にひっそりと開いてたコーヒーショップです。こだわりの焙煎機や雑貨が配置された店内は不思議に落ち着く空間。実は人通りに比してカフェの少ない西新では貴重な、ゆったりとした時間の流れる場所です。
早良区市街の台所:高取商店街
この先は、アドレスが変わって高取エリア。
「高取商店街」にはおしゃれなお店もたくさんありますが、敢えて特筆したいのは生活の街という面。
スーパーを核に、昔ながらの八百屋さん、魚屋さん、肉屋さん、ドラッグストアなどがバランス良く分布していて、とっても暮らしやすい街なんです。
小学校や中学校もほどよい距離にあり、高校・大学まで見すえた文教地区としての人気も高いエリア。商店街から少し入ったところではマンション建設ラッシュが起きている場所でもあります。
休日や夕方には家族連れで賑わう高取商店街ですが、いちばん賑やかなのは夏、土曜夜市の季節です。
7月末から8月初頭にかけて、土曜の夜だけ登場する縁日。この夜市の特徴は、商店街の店主さんたち自ら出店を構えること。
インドカレー店のチーズナンや、焼肉屋さんの牛串など、普通のテキ屋さんの屋台では味わえない、お店ならではの多彩な出店が並びます。
昔はこんな地域のお祭ってどこにでもありましたよね。土曜夜市に来ている浴衣の子どもたちを見ると、これが彼らのかけがえのない思い出になんるだろうなあ、と想像してちょっとうれしい気持ちになります。
■高取土曜夜市
開催期日:毎年7月末〜8月末土曜
子どもたちが100円玉を握って安心して参加できるお祭り、をモットーに「100円縁日屋台」がずらりと並びます。この安心できる温かさが話題になり、今では数千人規模の人気イベントに。
■ママキッチン
福岡市早良区高取1丁目28−34 ロワールマンション高取 1F/9:00~20:00/年中無休
大型スーパーの真向かいにありながら、毎日ぎゅうぎゅうに大繁盛している八百屋さん。理由はシンプル、旬の野菜が安くておいしいんです。近くに住む人で知らない人はいないという、このエリアの生活に欠かせないお店。
八幡様のお膝元:藤崎通り商店街
商店街群の西の端、オオトリを務めるのが「藤崎商店街」。短いながらも昔ながらの書店やふとん店などが立ち並ぶこの商店街は、実は神社の参道とクロスしているというちょっと面白いスポットでもあります。
紅葉八幡宮は代々の黒田藩藩主もたびたび参拝に訪れたという由緒正しいパワースポット。
住宅街を抜けるといきなり現れるこんもりした鎮守の森は、今も地域の人々に親しまれています。
新年の1月3日に初詣の参拝客にふるまわれる伝統の「さばちゃんこ」や、ARアプリで神様が飛び出す御朱印など、伝統と新しさの融合したユニークな取組が楽しい八幡様のお膝元にも、住宅街にひっそり隠れるように新旧様々のお店が集っています。
■ばんや 紺青
福岡市早良区高取1丁目26−63/7:30〜18:00/定休日:水曜日
紅葉八幡宮の鳥居から徒歩数秒、まさにお膝元に立地するパン屋さん。スタイリッシュに仕上げられた店内には朝から近所のみなさんがゆるい休日スタイルで訪れます。住宅街の真ん中にもかかわらず、なんと7:30からモーニング営業もありという貴重なお店。
■ユルイヤ
福岡市早良区高取2-13-1/17:00〜24:00/定休日:水曜日
住宅街の中に突如現れるお店の灯りが印象的な居酒屋。名物はちょっとずつ色々な味を楽しめる豆皿。日替わりでたくさんのメニューが登場するので目移りしてしまいます。ちなみに店名のユルイヤは「ゆるい」ではなく鹿児島弁で「囲炉裏」の意味。その名の通り、地元の人が集まる温かい雰囲気のお店です。
力を合わせて未来へ「サザエさん商店街通り」
2017年1月、この5つの商店街に「サザエさん商店街通り」の名前がつきました。
この名前は、あの「サザエさん」の長谷川町子先生が、百道浜を歩きながらその原案を思いついたというエピソードにちなんで名付けられたもので、今では毎年10月に、5商店街合同でサザエさん商店街夢まつりを開催しています。
これまで、ひとつのエリアとして認識されながらも、5つの商店街はそれぞれ別々にがんばってきました。
ですがこれからは、それぞれの特徴はしっかり残しつつ、連続した一帯のエリアとしてさらに盛り上げていこうという心意気を感じて、これを知ったときはいちユーザーとして胸が熱くなる思いでした。
私事ですが、西新は筆者にとって青春を過ごした思い出の街でもあります。
実際のところ、懐かしいお店には閉店してしまったものもたくさんあります。
けれど、今回この記事を書くために改めて色々なことを調べてみると、新しいお店や新しい取り組みがどんどん生まれていることに気が付きました。
変わり続けることで、いつまでも新しく懐かしい街であり続けてほしい、そんな風に願わずにはいられません。
ちなみに、今回は商店街に沿った場所だけをご紹介しましたが、これはほんの一部。正直なところ西新とその周辺エリアの魅力はまだまだ語り足りません。
福岡にお越しの際は少しだけ足を伸ばして、ぜひこの古くて新しい街をちょっと覗いてみてください。