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【長浜】「ながはままちづくりCAMP」-後編-

2019.03.11

滋賀県長浜市で行ってきた「ながはまエリアリノベーション事業」。歴史あるまちの魅力を地域資産として価値を再認識し、新たな事業を通して「これからのながはま」を描き、実践していく取り組みです。2019年1月12〜13日の2日間、その集大成として「まちづくりCAMP」が行われました。後編では2日目の様子をお届けします。

前編はこちら

【長浜】「ながはままちづくりCAMP」-後編-

まちづくりCAMP2日目。朝9時前から作業を開始。各チームとも昨晩の中間発表で講師から指摘された課題を踏まえて、進めていきました。

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厳しいスケジュールの中ですが、未来を考える参加者はみんな楽しそう。
岡部講師によるレクチャー「プロジェクトの作り方」
【長浜】「ながはままちづくりCAMP」-後編-
岡部祥司さん。

朝10時から講師の岡部祥司さんによる講義「プロジェクトの作り方」が始まりました。

岡部さんは、大手ゼネコンに就職された後に独立。2つの会社とNPOを立ち上げた経歴を持ちます。現在までの多彩なキャリアの経験から、どのように新たな仕事やプロジェクトをつくっていくか?という視点で話を展開。

同じ物事を前にしても、経営者の目線と行政の目線とでは、その見え方は違ってくる。新たなプロジェクトを立ち上げる際、そうした二者の視点の違いを理解して、その上で橋渡しをする役割をできるかどうかで、その事業を起こすことが可能になる、と話しました。

例えば、岡部さんが代表を務めるNPO法人「ハマのトウダイ」で行っている、地域との連携事業の場合。横浜市から受託するかたちで「PARK CARAVAN」という、1日限りの公園キャンプスタイルのイベントを開催しています。この企画を作成する際には、行政向けと市民向け、2つのレイヤーでの見せ方やアピールポイントを意識し提案していくことで、公園でのキャンプ体験という、一見実現不可能に思われるイベントを成功させました。

その他にも、「放課後キッズスクール事業」、「スリッパ卓球選手権」など、岡部さんが手がけている活動はとてもユニークかつ聞いているだけでワクワクするようなものばかり。

「今はプロジェクトや企業経営の『ありかた』に対してWHY(なぜ?)と問う時代」だと岡部さんは強調。新しい商品をアピールする際にも、単なる新機能の紹介ではなく、なぜその事業を行うのか?と、その商品が生まれる意義をきちんと考えた上で世の中に伝えていくかどうかで、大きな違いが生まれると話しました。

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岡部さんの具体例を交えた説明に聞き入る参加者のみなさん。

「新しいことは既存×既存である」。既にあるものをどう組み合わせるか、またそれをいかにわかりやすい言葉に翻訳して伝えることができるか、それをできる人材が求められている。そうしたトライ&エラーを繰り返しながら経験を積み上げてきた岡部さんの講義に、参加者のやる気がアップした様子でした。

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いろんな経験をしながらキャリアを重ねてきた岡部さんの発言は説得力がありました。
プロジェクトをオープンな場でプレゼンする成果発表会

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講義の後は、最終の成果発表に向け、グループワークを各チーム再開。

夕方までの短い時間ですが、プロジェクトの提案をより説得力のあるものにするべく、ディスカッションや作業を続け、ラストスパートです。

 

そして17時半から、エリアリノベーションの対象物件のオーナーさんから、一般の方々まで、続々と人が会場に集まり、成果発表会がスタートしました。

長浜市産業観光部次長・山内芳博さんからの挨拶があった後、各チーム10分間のプレゼンテーションと10分間の講評を行いました。

Bチーム 曳山祭りの文化をリスペクトしまちを再構成「マツリミチのリノベーション」
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Bチームの皆さん。

トップバッターは、Bチーム。まちを動かすエンジンとなれるような事業を提出することがテーマ。長浜市で既に事業を起こしていたり、長浜の観光事業に関わっている方がいたりと、既に社会経験が豊富な方たち中心のチームです。 

プレゼンテーションのタイトルは「マツリミチのリノベーション」。長浜の中心部で行われていて、世界文化遺産指定も受けている曳山祭りは、世代を越えたソーシャル・キャピタル※だとして、祭りを軸に、今までとは違うエリアのブランディングをしようという試みです。

長浜市民にとって曳山祭りは精神的な柱と言っても過言ではない、大切な存在。その祭りの際に山車が通る道をマツリミチと呼ぶそうです。そこで提案されたのが「マツリミチ」構想。マツリミチにある今は使用頻度の低い公園や空き地などを古本まつりやマルシェを開催することで活用し、リブランディングすることで、エリアに変化をもたらしたい、とのことでした。

※注 ソーシャル・キャピタル……人間関係資本、社会関係資本などと訳される。信頼で結ばれた人間関係が築かれていることは、その社会にとって資本であるとする考え方。

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現在使われていない場をいかに活用するか。それによって地域全体の変化も促すことができる。

講評では、どのような組織体として進めていくのか?という視点が抜けているといった指摘があった一方、事業収支をもっと詰めて、マツリミチ活用の実行委員会をつくるなどして、本気でぜひ取り組んでほしいといった激励の声も多く聞かれました。

Aチーム 若者が地元民と関係性を育む「わたしたちのまちづくり会社」
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20代の参加者が揃うAチーム。

次に登場したのはAチーム。全員20代の3名からなります。ひとりひとりは、地域おこし協力隊のメンバーだったり、大学のプロジェクトとして学校から長浜に派遣されて現在居住中の現役学生だったり。初日のグループ中間発表で講師陣を「異次元の提案」と驚かせた3人です(笑)。成果発表報告では開口一番、「『わたしたちのまちづくり会社』をつくります。家を貸してください!!」という投げかけからスタートしました。

まちの課題のひとつは「若い人がいないこと」。そして今やどの地方自治体も「うちのまちに移住してほしい」と呼びかけています。けれども今までのそうした呼びかけでは、「定住」か「観光」かの選択肢しかない。地域と関わりたいけれど、定住すると言わなければ受け入れてもらえないの?月3日だけ通うことでは関係性をつくれないのだろうか? いろんな場所でいろんな働き方ができるようになった現在、もう少し違う関わり方や住まい方の選択肢があっていいのではないか?という問いかけをしてくれました。

月3日、長浜を訪れて密接に関わってくれる人を20人つくれるようにしよう。そのために、そうした人たちが集える拠点をつくろう。そこからまちとの関係性を深めていってもらおう、という趣意に基づき、月3日長浜を訪れる人たちのための「秘密基地」のような、まちづくり会社の設立を提案しました。

 

都会に住む今の若い世代は、“関係性”を求めている。東京に暮らしていると、会社を辞めても替わりはきっといくらでもいる、必ずしも自分でなくてもいいんじゃないか、という思いに駆られがち。「自分しかいない」という替えがきかない存在になりたいという若者は結構多いので、この仕組みを通じて、長浜の街と、都会の若者との関係性をつくれたらいいのではないかという主張でした。

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地域との関わり方についての新たな視点と問題提起に、会場から感嘆の声も。

地域の中にある空き家を拠点として使うことで、空き家の有効活用にもつなげられる。またSNSネットワークを活かせば、お金を払ってでも地域と関わりたいという人を200人は集められるはず、とのこと。一時的にでも若者が数多く来て街に関わる経験をすることで、「ここに関わりたい・長く住みたい」という人も増えてくるのではないか、というプレゼンテーションでした。

 

講評ではコメントした方全員が「異次元」「構想がユニーク」と驚きの声を挙げつつも、「暮らしのニーズを知るためにまずは信用が大事」「いかに人脈を広げるかがポイント」と的確なアドバイス。また、拠点の候補として挙げていた空き家の大家さんも来られており、突然のプロポース?に驚愕されていましたが「前向きに検討します」とのお返事でした。今後の展開が楽しみです。

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「経済資本から関係資本への新たな時代の流れを感じる」と、講師も驚きを隠せない様子でした。
Cチーム 新たな不動産活用「あふみ物件市場」
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既に長浜で未来へ向けた活動を実践している参加者が揃うCチーム。

Cチームは「湖北暮らしの案内所 どんどん」を通じて、既につながりのある、気心の知れた仲間たちで構成されています。「あふみ物件市場」という、メディア運営を含めた新しいかたちの不動産会社を起ち上げる提案がされました。

現在、長浜市では使われていない空き家が少しずつ物件として集まってきていますが、その物件をうまく使うための提案とプレイヤーがいないという状況。

そこで、かつて東京の神田・日本橋で行われていた、CETという「空き物件を2週間だけ開放してもらって行うアートイベント」を参考に、空き家の新たな活用法、住みたくなる暮らし方が目に見えるような期間限定のインスタレーションの実施やモデルルーム展示などを実施し、借りたい人を先付け。そして、それを行う仲介・売買・ディベロッパーでもある不動産会社を立ち上げることで、行政が行う空き家情報の収集・紹介の先にある具体的な使い手をつなぎ、収益化できる構造がつくれるのではないか?という提案でした。

 

物件の紹介にあたっては、「東京R不動産」が改装OK、などのアイコンをつくったように、「琵琶湖湖畔まで○分、竹生島までカヤックで○分」などの距離表示や、その物件を通して体験できる遊びやライフスタイルの特徴をマークし、紹介していくということでした。

ちなみに「あふみ」とは古い言葉で近江(滋賀県)のこと。このかたちがうまく訴求できれば、横展開して全国で都市圏ではない地方でこのような空き物件を活用する枠組みができれば、と夢は広がります。

【長浜】「ながはままちづくりCAMP」-後編-
長浜の現状を見つめ直し、現実的かつ、まちの課題解決につながるプレゼンテーション。

講評では、東京R不動産の創始者でもある馬場から、「もっとコンセプトを絞ってこれが本物の空き家バンクだ!と言われるようなものに是非なってほしい。空き家は全国に多数あるけれど、なかなか不動産市場に出てこない。そこを地域の人がぐっと入り込んで、関係性をつくった上で、こういう風に活用したら借り手がいる、ということをどんどん見せてほしい」と激励のコメントがありました。

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「全国に広がるフラッグシップモデルになるかも」と講師もワクワクする提案でした。
プロジェクトを具現化、まちを新たな視点で変えていく
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「プロジェクトは計画だけではなく、実践することが重要」と、地元の方からのご意見も。

約1年にわたって続いてきた、ながはまエリアリノベーション事業の総まとめと位置づけられた、まちづくりCAMP。フレッシュな発想をする20代、働きざかりの30代、これまでの経験ゆえ、発想がかたくなりがち40-50代。今回は、あえてジェネレーション別でチーム編成することで、同じ長浜エリアのリノベーションというお題でも全く違う発想・切り口での提案を聞くことができました。

また、3チームが補完し合える部分が多くあり、今後はチームで縛られることなく、連携して実際のプロジェクトへと進んでいくことを期待したいと思わされました。

 

最後に長浜駅周辺まちなか活性化室の前嶌室長より「成果発表を聞いて、これは(良い意味で)行政が関わったらいけないと感じた。長浜はいろんなチャンスがあるまち。来年以降もかたちを変えてやっていきたい」とご意見をいただき、成果発表会は終了となりました。

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長浜駅周辺まちなか活性化室の前嶌室長。

終わってみればあっという間でしたが、濃密な時間を過ごした仲間たちは充実感いっぱいの表情をしていました。ながはまエリアリノベーション事業の本当のスタート・具現化はこれからです!今後みなさんがどのように活躍し、ながはまのまちなかがどのように変化していくか、本当に楽しみです。

text by 西村祐子/photo by 長浜ローカルフォト(山内美和子、矢島絢子)