山形・仙台のマルシェ最前線(仙山学生会議レポート・前編)
現在、山形と仙台の2つの都市で、学生たちによる革新的なまちづくりが行われています。
その活動を学生たち自らが振り返り、討論すべく、この度8月に「仙山学生会議」が行われました。
会場となった山形市の文翔館から、熱く盛り上がった会議の様子をお届けします。
政治討論番組でおなじみのオープニング曲が流れ、モデレーター・馬場正尊さんの開幕宣言によって仙山学生会議はスタートしました。
・GREEN LOOP SENDAI vs. シネマ通りマルシェ
・linkup vs. 郁文堂書店
・EKITUZI vs. Parking Jack
以上の3つのテーマに分けて討論は進んでいきました。
GREEN LOOP SENDAI vs. シネマ通りマルシェ
この2年の間に誕生した、規模も性質も違う2つのマルシェ。それらは街にどんな変化をもたらしたのでしょうか。
GREEN LOOP SENDAIは2017年の秋にスタートし、定禅寺通りで春と秋の年に2回開催されています。2日間で7万人の来場者を記録した、100万人都市仙台ならではの大規模なイベントです。
仙台中心地の緑道にも関わらず、閑散としていた定禅寺通りに賑わいを生み出したいとの思いに端を発し、イベントを通じて、仙台の新しい消費活動と回遊性を生み出しています。
さらに活動する中で、意外な成果が見えてきたとSDC株式会社ディレクターの豊島聡さんは話します。
「キャストと呼ばれるスタッフたちのコミュニケーションが活発化し、彼ら自身が新たなプレーヤーとなる人材発掘の場となっています。
ぼくたちは寛容になれる仙台を目指しているし、ローカル思考を促して、インキュベーションとなる場をつくりたい。Green Loopはその概念の提唱するものであり、そこから生まれるものすべてがGreen Loopだと思っています」(豊島さん)
山形のシネマ通りマルシェは、エリアリノベーションが活性化している「シネマ通り」が舞台となっています。最近では空き物件が埋まり始め、エリアの価値が上がりつつある通り。マルシェは2017年夏に誕生し、年に2回のペースで開催されています。
魅力ある30店舗がセレクトされていることも本マルシェの特徴だと、東北芸術工科大学修士1年の追沼翼さんは言います。
「出店者自体が作り手であり、作り手とお客さんとの距離が近い。出店者の高いクオリティと、見える消費をつくる“透明性”こそがこのマルシェの価値です。エリアを支えてきた地元の店舗さんが気持ちよく商売できることも大切にしています。
今後は月一回の開催を目指しています。ストリートファニチャーによって滞留時間を長くしてアクティビティを外部化することで、エリアや街の価値をさらに上げていきたいです」(追沼さん)
それぞれのマルシェが抱える課題やジレンマも議題に上がりました。
周辺のナショナルチェーン店との隔たりがあるGreen Loopでは、ローカルビジネスとナショナルチェーンのハイブリット化が理想形かもしれないとの意見が。
シネマ通りマルシェは、大きな規模感に到達できないジレンマを抱えつつも、商店街も巻き込みながら、外からやってきた店舗との調和が生まれそうな兆しがあるといいます。
最後にモデレーターの馬場さんはこうコメントを残しました。
「今後の日本は国家として、公共空間の活用にまつわる制度を大きく転換させる必要に迫られていくでしょう。
いま活動している学生たちには、どのように既存の制度をクリアしてイベントを行ったのか、新たなルールをつくっていったのか、その方法論を外に開示して、どんどん発信してほしいと思います。
海外では公共空間がうまく活用されていて、それが観光にまで広がりをみせています。もう答えは見えているのに、日本ではこれまでの制度に引っ張られて、変わろうとしない重たい現状があります。それを壊してほしい。君たちから声をあげていってほしい。
そうすることで単なる“学生の活動”ではなく、社会的なテーゼを提案することになる。そこまで持っていけることを期待しています」(馬場さん)
≫ 後編「linkup vs. 郁文堂書店」に続く
* GREEN LOOP SENDAI 公式ページ
* シネマ通りマルシェ レポート