福井にあった!リアル・ローカルな雑貨屋さん「三本日和」
まちとモノの歴史に興味と愛を注ぎ、深い知識を探求し続けるライター・エディターとして活躍する畠山かなこさんのお店は、まさしくリアル・ローカルメディアそのものなのでした。
ここにあった、リアル・ローカルな雑貨屋さん
えちぜん鉄道三国駅から徒歩10分。明治時代に創業された旧森田銀行を中心として、川沿いに蔵、道沿いに店舗という湊町ならではの町屋づくりが立ち並ぶ三国湊地域の一角に、北陸のいいもの+暮らし道具のお店「三本日和」があります。
オーナーの畠山かなこさんは福井市出身。福岡の大学で文化論を学び、卒業後に福井で就職。広告、情報誌のライターとして働いたのち、27歳でフリーランスのエディターとして独立しました。
独立と時を同じくして、三国湊でまちづくりの動きがスタートすることに。知人に誘われて手伝ううちにまちづくりのおもしろさに目覚めたかなこさんは、三国町出身のパートナーとの結婚を機に、同地へ拠点を移します。
お店は2年半前にオープン。「40歳までに新しいことを始めようと思っていたんです。もともと伝統工芸とか、職人さんが作ったものとかが好きで、扱えたら楽しいだろうなと。あと空間を持ちたいというのがあって。このまちでオフィスを構えているので、地域づくりの空間に必要なのはこういうお店じゃないかなって。」
店内は、かなこさんが作り手さんと築いた独自のエピソードが詰まった雑貨や小物がキチンと並べられ、作り手の生き方や本当のモノの良さ、過去に生きた人たちの足跡をダイレクトに伝える「リアル」で「ローカル」なメディアになっています。そのリアルさといったら、作品の奥にいる作り手さんがまるで自分の友だちのように思えてくるくらい。
メディアとしての雑貨屋さん、は計算外?
現在も精力的に、ライター・エディターとしてさまざまな作り手に寄り添うかなこさん。お店を始めてみて、変わったことはあるのでしょうか。
「始めてみてわかったんだけど、ライターの仕事とお店の仕事って大差ないんだよね。お店自体が1つの媒体。商品の仕入れのときに取材して、知識を入れながら、知っていることをお客さんに言葉で伝えたり、文章で伝えたり、SNS使って伝えたりってしていると、『ヤバイ、どっちも一緒だ』と思って(笑)。思っていた以上に大きいメディアを持っちゃったなって。最初は、いずれライターを引退したときに、店番しながら、本読みながら、金継しながら…ってなれたらいいなって思ってたから、これは計算外でした。」
本人にとっては計算外でも、結果的には一本芯が通っている。文章を読んでも、お店の雑貨を眺めていても、感じられるのはその土地を流れる時間と、そこに根づいた暮らしへ向けられる、かなこさんの愛情深いまなざしなのです。
まちの歴史と人が交感する雑貨屋さん
編集の仕事で各地を飛び回り、店を空けることが多いかなこさんに代わってお店を支えているのが、三国町出身のノリコさん。「いろんな方がたくさんいらっしゃるで、楽しい。いつもウキウキしながら来ます。」
「ノリコさんが地元情報を教えてくれるんです。リアルローカル情報を(笑)。人間関係とか、食文化とか、ノリコさんを通じてつながることも多い」とかなこさん。
古いもの、歴史あるものが小さい頃から好きだというかなこさんは、気になったことをトコトン調べる学者肌。書籍や目録を辿ってヒントのかけらを集めながら、点と点がつながった瞬間が何よりも嬉しいのだとか。そんなかなこさんには、今やりたいことがあります。
「骨董の販売はもっときちんと事業化していきたいと思っています。色々な町屋が壊されていって、古い道具がごそっと捨てられていく。そういうことがものすごくたくさんあるのが心地よくなくて。」
具体的にはどのような事業なのでしょうか。
「次にバトンを渡す場を作りたいなって。ただ骨董を頂くだけじゃなくて、例えば売上の何割かをまちづくりの活動に寄付する形で、まちづくりやるぞ!って人じゃない人たちも自然と地域のまちづくりに関わっていくようなシステムを作りたいです。」
福井という土地、三国というまち、そして「三本日和」という場所で、空間と時間軸を広く見渡しながら、自身とまちのいまとこれからを見すえる、かなこさんの壮大な編集作業はまだまだ続きます。