第3回 ローカルラーニングツアー in 山形 レポート!
写真を通じて、地域のことを地域に学び、地域を発信する。
2018年12月に、第3回「ローカルラーニングツアー in 山形」が開催されました。
まち歩きをして山形の魅力に触れた第1回、写真を切り口とした編集チームの構想が生まれた第2回に続き、今回は編集チームを具体的に立ち上げるための実践編となります。
講師は初回から引き続き、写真家のMOTOKOさんをお招きしました。毎回、MOTOKOさん独自の鋭い洞察力から、今まで見えていなかった山形の魅力やまちの新たな側面に気づかされます。
冒頭に行われたレクチャーでは、「このまちの三歩先の未来を想像して写真を撮ること」とアドバイスをもらいました。カメラの技術よりもっと根本的な、視点と気持ちの先導者です(詳しくはMOTOKOさんのインタビューをどうぞ)。
今回のミッションは、編集チームを立ち上げるべく、取材を実践して、情報発信の方法を考えよう!というもの。
前回のまち歩きで見つけた3つのキーワード「山形街角ポートレート」「かわいい山形」「古くて新しい山形」をもとに、テーマごとに3つのグループに分かれて町へと繰り出します。
参加者みんなが編集者の気持ちになって、カメラを片手にまちへダイブ!です!
「街角ポートレイト」
「街角ポートレイト」のチームでは、その日に出会った人をモデルとして、山形の人の飾らない魅力を表現していきます。
七日町を中心とした個人商店を訪れ、文翔館や霞城公園で出会った人々とコミュニケーションを取りながら写真を撮り歩きました。初対面の方をモデルにするという、とても難易度の高い挑戦でした。
人はまちの財産である。これはローカルラーニングツアーを通じて、深く学んできたことです。
写真を撮影させていただくコミュニケーションを通じて「うちの店かっこいいよな」と店主に再認識してもらえたり、写真の発信によって「行ってみたい」「会ってみたい」という見る側の思いを引き出していく。魅力的な人を可視化して発信していくことは、地元の人がまちに誇りを持つきっかけとなり、日常の暮らし方や観光の側面でも有効な手段となります。
初対面の人の写真を撮ることは、とても勇気がいることです。取材をするうえで、一番の大きなハードルのひとつかもしれません。
ところが、ポートレートチームが持ち帰ってきた写真にうつるまちの人々は、誰もがやわらかい表情をしていました。参加者たちは「まちの人も撮影を楽しんでくれた」と、手応えを感じたようでした。
「かわいい山形」
「かわいい山形」のチームでは、山形の“かわいい”を写真で表現することに挑戦しました。
ドアに飾られた造花、古い看板、お店のロゴ、こけし、街角のおばあちゃんのセーター、喫茶店のパフェ…。山形のまちには“かわいい”が溢れていました。
まちなかの“かわいい”を分析していくと、山形は赤色が特徴的であり、デザイン性が高く、和洋折衷の取り入れ方がとても上手なことが浮かび上がってきました。古いものを頑なに守るのではなく、新しいアイディアを取り入れていく柔軟性とも言えるかもしれません。
“かわいい”というシンプルな感覚はエンタメ化しやすく、共感を得やすい。こうして楽しいところからまちに眠る本質的な魅力を探っていく。“かわいい”というキーワードは今後の編集活動においてひとつの大きな指針となってくれそうです。
「古くて新しい山形」
「古くて新しい山形」のチームでは、異国情緒漂う歴史ある街並みと「今」を重ね合わせて表現することにチャレンジです。
カルチャー施設、老舗のお菓子屋、蕎麦屋、楽器屋、文翔館など、古いものを大切に守ることで、現代で新鮮な魅力を発している場所を訪れていきました。
古くて新しいものは、うっかり見逃しそうな、ささいな所にも隠れていました。
例えば、山形市の観光名所であり、国の重要文化財である文翔館の装飾にはステンドグラスが使われています。明治〜昭和初期、ステンドグラスは豊かさの象徴だったそうです。
文翔館を出たあとに近所の老舗菓子店に入ると、そこの内装にも創業時から引き継がれたステンドグラスが残されていました。観光名所だけでなく何気ない日常にも、当時の繁栄の痕跡が紛れ込んでいるのだと気づくことができました。
山形市の中心街には老舗店が多く存在します。お店の人にインタビューをしていると、創業100年はさほど珍しくない(本当はとても珍しい)と感覚が麻痺してくるほど、とても自然なトーンでお店の歴史を語ってくださいました。
まちの人々が長年築きあげてきた「信頼」が山形の日常に根付き、それは他には代えがたい山形の魅力であると改めて感じました。
「#山形カメラ」まずはSNSから始動!
まち歩きの後は、それぞれ3チームが撮影した写真を振り返り、これからどう編集チームを展開していくかを話し合いました。
SNSで発信する、ZINE(小冊子)をつくる、展覧会をする、スタンプラリーにするなど、さまざまなアイディアをざっくばらんに出し合い、チームごとに発表しました。
アイディアをまとめた結果、まずはSNSで活動を開始することに。インスタグラムのハッシュタグを活用することで、誰でも気軽に日常的な山形を発信することができます。撮影はスマホのカメラでもOKです。
#会いたい山形
(山形市内で暮らす・営む人たち、また会いたいなと思う人)
#かわいい山形
(山形市内で見つけたかわいいもの、かわいくて、山形らしいもの)
#100年やまがた
(山形市内で歴史を感じるヒト・モノ・コト。この先100年続いてほしい店や景色も全部)
#おいしい山形
(山形市内のおいしい食べ物を紹介。毎日のランチでもOK)
プロジェクト名は #山形カメラ です。
チームでまちを歩き、写真を撮ることの意味
今回の一番の学びは「テーマを持ったまち歩きは楽しい!」ということでした。
あえてテーマを絞ることで、洞察力が上がり、情報を瞬間的に精査してシャッターを押すことができる。ガイドブックや既成の情報にはない、オリジナルの情報に出会うことができます。
そしてもうひとつ、チーム編成からも大きな気づきがありました。
今回も地元の枠を超えて、東京・横浜からも参加者が集まり、初めての人、3回連続参加の人、学生、主婦、社会人など、地域も世代も異なるさまざまな属性の人が混ざり合い、1日共にまち歩きをしました。
ツアーを終えて、MOTOKOさんはこのように語ります。
「“いい写真”とはプロによるものだけではありません。今回のように異なった立場の視点が混ざり合い、その集合知を体感できること。ひとりでは決して見えてこない、チームで活動することがローカルラーニングツアーの魅力なのです」(MOTOKOさん)
今回の実践編を通して、取材の切り口や発信方法について考え、学んだ参加者たち。それぞれのテーマを持って、みなが楽しくまちと向かい合い、たくさんシャッターを切りました。終了直後に「明日もやりたい!」とコメントする参加者もいたほどです。
これからSNSを通じて日常的な写真を発信しつつ、ZINEの制作、写真展を次の目標に活動を進めていきます。
「山形カメラ」に参加したい!という方、インスタグラムの上記のハッシュタグで写真を投稿してください。そして、まち歩きや展示などのプロジェクトの活動に参加したいという方は、以下の問い合わせフォームよりご連絡ください。
チームで一緒にまちを歩き、写真で山形の魅力を発信していきましょう!