素晴らしい音楽をこの山形に届けるために 〜 yama-braの方法論 〜
2019年4月6日、文翔館議場ホールで行われた「ギンガ&モニカ・サウマーゾ山形公演」は、多くの方々にご参加いただき、我々にとっても大きな仕事を無事終了できた事に、改めてお礼を申し上げたい。
我々はかれこれ20年余り、様々なアーティストをボランティアだけで山形に招聘し、ライブを運営してきたのだが、今回招聘した音楽家たちの演奏はその中でも特筆すべきものだったと思う。
我々はyama-bra(旧山形ブラジル音楽普及協会)という、会費も会則もない緩い繋がりの集団である。もともと自分たちの好む音楽が地方に来る事がほとんど無い、という問題を解決するために、それなら自分たちで呼んでしまおう、という実に単純な発想から、4人ぐらいのメンバーで始まった会である。
基本的なコンセプトは、町おこし的なことには関わらない、自治体の催しにも関わらない。つまり音楽原理主義でいこうということ。最も重要なのは、その音楽を本当に聴きたい人たちに届ける、ということを目標に掲げた。良いライブを作り上げるにはそれが理想ではある。だが地方に自分たちの好きな音楽を招聘する、と言っても実は決して容易では無い。
我々の好きな音楽は、いわゆるメジャーではないものがほとんど。大ホールを満席にする知名度は無い。したがって集客もそれほど期待できない。さらに地方であるということは、最初から旅費と宿泊費が必要になるというハンディキャップを背負っている。
例えば2人のアーティストを山形に呼ぶとする。この近辺であれば通常の集客は多くて40人ぐらい。チケットも高いと人が入らないので3000円としよう。収益はたったの12万。ここからまず旅費と宿泊費が2人分で5万、食費が1万。音響が5万、会場費が2万。この時点ですでに支出の合計は収入を超えている。すなわちアーティストのギャラは「無い」のである。つまり普通のやり方をしていれば、もちろん主催者の収益などないし、アーティストにまともなギャラなどあげられるわけがない。
地方での公演はアーティストの心意気、といえば聞こえは良いが、要するに彼らの犠牲の元に成り立っている(実際は成り立っていない)のである。
ではどうしたら十分なギャラを確保つつ、地方での公演を実現させられるだろう。まず自分たちの収益は放棄すること。かと言って、長続きさせるためには損益も出さないこと。そのためには、同じ音楽が好きなものたちでグループを形成し、彼らにはチケット代を払ってもらいつつ、公演の手伝いもしてもらうこと。これで集客と人件費がかなり助かることになる。
言い換えれば、同じ音楽を愛し、損を厭わない馬鹿(この場合褒め言葉です)な人たちを集めること。そのためには常々音楽情報を発信し、音楽の仲間をつくること。さらに集客のためは、SNS、フリーペーパー、雑誌、新聞、ウェブサイトなど、お金のかからない媒体に、時間と手間かけて情報を掲載していただくこと。しつこくしつこく告知すること(普通は嫌われます)。いかにお金をかけずに多くの人の目に情報を触れさせるか、である。そしてなにより重要なのは、自信を持って「良い音楽」であると言える、そういう音楽をもってくることである。
とまあ、こんなことをじたばたと20年ほどやってきて、当会の会員や関係者も、職業も年齢もバラバラながらそれなりに数が増え、ライブの集客もまあまあ格好がつくようになってきた。山形以外ではyama-braの名前もかなり認知されるようになった(残念ながら地元山形で一番知名度が低い)。
なぜこんな馬鹿げたことを何年も続けているのかといえば、ライブが終わった時のあの鳴り止まない拍手、そしてスタンディング・オベーション。もちろん音楽への感動は共有しつつ、アーティストが賞賛を受けているのを見る感激は、ライブを運営したものにしかわからない。だからやめられないのだと思う。これからも「東北では山形だけ」、「なんで山形で?」っていう公演を実現させていくつもりだ。ぜひ我々の主催するライブに足を運んでいただきたい。みなさんの応援が頼りなのです。