自給生活に“住宅街”で挑む
澤井まりさん
神戸市中心部からほど近い塩屋の住宅街で、“できるだけ自分でつくる暮らし”を実践している、澤井まりさんを訪ねた。
都会で田舎暮らしできる場所を探して
「3.11をきっかけに、『お金を稼いで、使って…』という生活に疑問を持つようになった」と言う澤井さん。「お金を稼ぐ以外の方法で自分のできることを増やし、人と繋がって生活していきたい」そう考えて、夫の秀和さんと共に“できるだけ自分でつくる暮らし”を始めた。
夫婦で塩屋に移ってきたのは2013年。「自動車中心の生活をしなくていい、 “都会で田舎暮らしできる場所”を探していた」ところ、友人の森本アリさんに紹介された塩屋の家が、偶然にもその条件に合ったものだった。
現在の住まいは、塩屋の秘境とも言える山際にある隣り合う2軒の戸建。裏手に広がる一面の畑を見ると、ここが神戸市街地の近くだということを忘れてしまう。それでも、神戸中心部へは駅までの徒歩と電車を合わせて30分ほどである。(ちなみに、物件のうち1軒は神戸R不動産*で紹介させていただいた)
* real local神戸の運営母体
ご近所さんと食べ物やサービスを交換する
澤井さんは自宅裏の畑で野菜を育て、家族2人分の野菜を自給している。
「自分たちが食べない分はどんどん人にまわす」と言う澤井さん。実は、この“お裾分け”に澤井さんの暮らしを支える秘密が隠されていた。
というのも、「塩屋は人と人の距離が近く、ご近所さんとの食べ物やサービスのあげたりもらったりが活発な地域。周りとの繋がりを大切にしていたら、自ずと自給自足の“自足”が成り立つ」のだそう。ときには漁師さんから海産物をいただくこともあるのだとか。
澤井さんは「お裾分けは、隣人同士がお互いを気遣い、助け合う気持ち」だと語る。自給生活と聞くと、社会から隔絶された状態をイメージしがちだが、実際は人との関わり合いが欠かせないようだ。
3年かけて住まいをセルフビルド
“できるだけ自分でつくる暮らし”は、住まい作りにも及んでいた。
2014年から2軒の家をDIYで改装し始めた澤井さん夫婦。「もともと自分で家づくりをしてみたかったのは夫。最初の1年はふたりで頑張ったが、夫はその頃漁師のアルバイトもしており、畑作業と改装の両立に体力・精神が限界に達した」と当時を振り返る。
状況を好転させたのは「人の手を借りよう」という方向転換。大工仕事に一緒に取り組んでくれる建築士がアルバイトに来てくれるようになったのを皮切りに、野菜や食事と労力を交換してくれる人、遊びに来たついでに手伝ってくれる人、友人が知り合いを呼び、その知り合いがまた人を呼んだ。
なんとか1軒の1階部分と、もう1軒の2階部分が完成したのが2016年11月。片方の家を、街中で循環型の暮らしが体験できるシェアハウスとして使うために、いまも住みながらの改装が続いている。
お気づきだと思うが、澤井さんは暮らしの中でお金も普通に使っている。ただ、「この暮らしを始めて、以前よりお金の使い方を選ぶようになった」と言う。
澤井さんは専業主婦なので、アルバイトで改装を手伝ってくれる人へのバイト代や、日々の生活に必要なお金は、現在小学校で図工の常勤講師をしている秀和さんの担当。
「お金は便利な道具。あって困らないけど、道具に使われないようにしたい」という考えは、ふたりの共通認識だ。
「家族のように一緒に暮らせる人を探しています」
今後の展望について伺うと「続けることが一番。先のことは今はまだ考えられない」と笑う澤井さん。「まずは目の前のこととして、シェアハウスを軌道に乗せたい」そうだ。
シェアハウスを始めるのには「借家暮らしだと、薪や太陽光などを生活に取り入れるのは難しい。でもそんな借家を求めている人たちの役に立ちたい」という思いがある。
どんな人を求めているのか尋ねると「私たちの手伝いではなく、得意なことを活かしあって協働生活していける人を探しています。畑仕事や薪仕事、家づくり。ときどき海や山のものをとりにいく(笑)そういう暮らしを楽しめる人、あるいは自分で始める前に試しにやってみたい人もいいですね。例えばお金を稼げる人であれば、家賃をもらうというより今月は家にいくらいれられるか、というニュアンスで話せる人がいい」とのこと。
興味がある方は、ぜひ澤井さんを訪ねてみて欲しい。
神戸市街地からほど近い住宅街で、田舎暮らしを試みる澤井さん。
人を気遣い、助け合う気持ちや、人と人をつなぐコミュニティーとの関わり方など、澤井さんの暮らしから学べることは実に多い。
real local神戸では5月23日(火)に澤井さんをお招きして、ご本人から詳しいお話を伺い“できるだけ自分でつくる暮らし”について学ぶイベントを開催予定。興味がある方は、ぜひイベントページからお申し込みを。
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