「これから」が生まれる、港町の小さな丘。
複合施設「コッコレかないわ」
お鮨だったりお刺身だったりカニだったり、金沢は「海のもの」のイメージが強いにも関わらず、実際に「金沢の海」を見たことがある人は少ないのでは。
ということで今回は、金沢のアナザーサイドともいえる、ベイエリア「金石」に新たにできた複合施設、「コッコレかないわ」をご紹介します。
金沢駅から金石までは車で約15分。
実際はそんなに遠くないのですが、兼六園や金沢城といった観光地が集まっているのは駅の東側で、金石は西側。つまり駅を挟んで線対称に位置するため、ちょっと足が伸びにくいエリアです。
「新幹線効果で市街地は賑わっているけれど、郊外にある金石はだんだん活気がなくなってきていて。このままではいけないなという焦りはありました」と話すのは、金石で70年以上続く建設会社「加賀建設」の課長・鶴山秀二さん。鶴山さん自身、生まれも育ちも金石です。
同じ金沢の港町でも、お隣「大野」は「醤油のまち」というブランディングに成功しているのに対し、「金石」といわれると…金沢市民でもこれといったイメージがなかったのが正直なところ。
「金石には港町のほのぼのとした日常があります。観光地ではないけれど、その心地良さを感じてもらえたら」
そんな中「地元のために何かできないか」と、兄であり同社専務の雄一さんが思い倦ねてたところ、金沢出身で東京を拠点としていた建築家・中永勇司さんと出会います。
「金沢の魅力を高めたい」という点で意気投合した2人の話から「コッコレかないわ」の構想がスタート。地元建設会社が主体となって、まちづくりを見据えた施設を手掛けるのは、全国的にも珍しいそう。
その後、中永さんの紹介から「Tone&Matter」の広瀬さんや、グラフィックデザイナーの横山博昭さん、男性フードユニットの「つむぎや」さんなど、強力なメンバーも新たに加わり、思わぬ形で企画が発展していきました。
目を付けたのは、自社の駐車場として使われていた、港が眼前に臨める土地。
「当初は人が呼べるパン屋にしようか、といった案も出ましたが、店単体が賑わうのではだめで。必要だったのは、金石に人が集うための装置のような場所だったんです」
そこで、食べる・はたらく・選ぶ・憩うなど、様々なアクティビティを組み合わせた複合施設というスタイルに辿りつきます。
「コッコレ」という施設名は、ラテン語で「小さい丘」を意味する「colle」と、「集まる」という意味がある「co」を組み合わせた造語で、「金石のこれから」という想いも込められているとか。
1階に入るのは、お味噌汁食堂「そらみそ」と、「extragoods」のキッズファッションのお店。
金石は港町ということもあり、漁から戻った漁師たちを、大きな寸胴鍋で炊いた味噌汁で迎えるという習慣がありました。その習慣にちなんで、食堂では豚汁やつみれ汁と、ひとつひとつ手で握るおむすびの定食を提供しています。
丘をのぼった2階はオフィスが2つ用意されていて、ひとつはすでに設計事務所のシェアオフィスと使用されていますが、ひとつはまだ空いています。(物件情報はこちら)
「あと一つのテナントさんには、一緒に何かできるような方に入っていただけると嬉しいですね。クリエイターのオフィスや、人々の集いの場となるようなカルチャースクールなどもよいかもしれません」
コッコレのロゴマークはロープ。「港町だからということもあるのですが、人と人を結ぶような場所でありたいという願いでもあるんです。実は食堂の“おむすび”も、そんな想いを込めていたりするんですけどね」と鶴山さんは笑う。
地元住人、ワーカー、そしてふらりとおとずれる観光客。新たな出会いを結んでつないで、いま金石に新しい景色が生まれつつあります。