希望は「さいはて」にある。
「奥能登国際芸術祭」総合ディレクター・北川フラムさん
9月3日(日)から50日間に渡り開催される「奥能登国際芸術祭」。その開幕を目前に、総合プロデューサーの北川フラムさんに緊急インタビューを敢行!奥能登国際芸術祭に込めた想いや、奥能登国際芸術祭の見どころをうかがってきました。
「正直に言うとね、奥能登国際芸術祭のお話をいただいたとき、最初はお断りしようと思っていたんです。越後妻有や瀬戸内の芸術祭だけで手一杯でしたから、オファーからずっと逃げまわってました。(笑)
でも、『一度で良いから現地に来て欲しい』という熱心な誘いを断りきれず、まぁ見るだけなら…と珠洲を訪れたのがすべての始まりです」
迫り出した山が海に落ちて行く岬、田畑や塩田、そして漆黒の闇につつまれる夜—。北川さんが珠洲で目にしたのは、プリミティブな力がみなぎる自然。そして、「キリコ祭り(*1)」や「ヨバレ(*2)」に象徴される、日本人の基層文化とも言えるような風習の数々だった。
(*1)キリコ祭り…能登半島各地に伝わる祭り。巨大な燈籠「キリコ」とともにまちを練り歩く。毎年7月〜10月中旬に開催されている。
(*2)ヨバレ…祭りの日に、親戚や隣人・知人などを招いてごちそうでもてなす能登の風習。
「初めて珠洲に入ったのは、ほとんど冬に入りかけた秋の夜中でした。灯りひとつない真っ暗な中でも、しっかりとした建物のシルエットはボワーッとわかって、何となく“これはいけるかな”と思った。そういう直感って、わりと正しいんですよ。そこから珠洲について色々勉強していったときに、これはおもしろいぞ、やりましょうと」
珠洲市の人口は現在約14,000人、本州では一番人口が少ない市にあたる。往事は38,000人以上いたそうなので、つまり約1/3にまで減少している上に、65歳以上の高齢者が人口の4割を超える。地理的に“さいはて”である上に、地方で起きている過疎化の最先端を行く場所で、なぜ「芸術祭」なのか。
「実は、今回の芸術祭のコピーにもなっている『さいはて』という言葉が使えるようになるまで、結構苦労しているんです。だって、“さいはて”にならないために芸術祭をして欲しいと陳情されてきたわけですから(笑)。だけど僕は、『さいはてにこそ希望がある』と言いたい」
「確かに今の地政学的にみれば、東京が中心で、珠洲は“さいはて”になる。けれど、大陸側から見た“逆さ地図”にすると、珠洲は中心でありヘソだということがわかります。
地理的にも暖流と寒流がぶつかる地ですし、日本列島の特徴そのものが典型的に集まっている。歴史的に見れば遣隋使・遣唐使以来、北前船含め多様な文化の集積地であり、大陸への開口部であったわけです。これは珠洲の特異点です」
インタビューと同日に金沢21世紀美術館で開催された「開幕直前スペシャルトーク」で一部お披露目になった作品の中には、漂流物や焼物など“大陸とのつながり”を感じさせるモチーフも多かった。
「私達はどうしたって今後大陸と仲良くしていくわけですから、そのとき珠洲こそが、アジアの中心として、一番大きな可能性を持っている場所なんじゃないかと思うのです」
最後に、今回初の試みとなる「奥能登国際芸術祭」の見どころをうかがった。
「半島の楽しさは岬めぐり。ちょっと進むだけで景色が全く変わります。アーティストも岬で作品をつくっている人が多いので、ぜひ作品を訪ねながら、岬巡りを楽しんでいただきたいですね。
あと、『さいはてのキャバレー準備中』なんてのもやりますよ。おもしろいママ達が、手弁当でやってくれます。貸しホールならどこにでもありますが、“さいはてのキャバレー”なんて、ここでしかできませんから」
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※北川さんの解説を聞きながら、奥能登の源流を探るツアーも開催されます。
『北川フラムと行く—さいはての美術、岬めぐり—』
開催日:9月9日(土)、9月16日(土)、 9/23日(土)
定員:30名(最小催行人数:20名)
料金:大人 7,500円、小人 6,500円(作品鑑賞パスポートは別途)
お申込先:夢のとトラベル(0768-82-8181)