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地域の「リアル」で生きていこう

楽しい暮らしのエネルギー 01

エネルギー問題は地球温暖化や原発など難しいテーマにも絡むけれど、課題解決の糸口はふつうの毎日の暮らしのなかにもたくさんあります。山形のローカルライフを楽しみながらエネルギーをやさしく考え実践していく、地域エネルギー研究者による連載コラムです。


楽しい冬

今年の冬は冷えましたね。雪かきもいつも以上にやったかも。でも、このつんとくる寒い冬はぼくにとって楽しい季節でもあります。冬は暖かい家の中で、薪ストーブを焚くという楽しみがあるからです。

山形の冬は晴れる日が少ない。山形から仙台に行くと、うそのようにカラッと晴れていてうらやましく思うことがあります。そんな太陽が恋しくなる長い冬の中で、薪ストーブの炎は太陽のような暖かさを醸し出してくれます。太陽も薪ストーブも炎の暖かさ。少し専門用語になりますが、輻射(ふくしゃ)という効果で、エアコンやファンヒーターのような温風の暖かさではないのです。薪ストーブの炎は静かで、肌の乾燥感も少なく、極上の暖かさ。そして、女房がもうエアコンは嫌だというぐらい気に入ってくれています。

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自宅の薪ストーブ

180度見え方が変わった山形の風景
薪を運び、火をつけ、暖かい炎を見ながら暖を採るのは心地よい日々。とはいえ、普通の人から見ればなんで薪ストーブのような面倒なものを使うのかと思われるでしょう。使ってみるとそれほど面倒ではないのですが、実際、ぼくも昔から薪ストーブにあこがれていたわけではなく、そういうウッディなものはむしろ好きじゃない方でした。

もう少しさかのぼるなら、ぼくが東京から山形に来た時、もう25年も前になりますが、当時のぼくは、自然派志向の暮らしをしていたわけでもなく、カントリーライフにあこがれていたわけでもありませんでした。山形に来たのは、ただ新しい大学ができたからという理由だけでした。正直言えば山形の暮らしは当時あまり魅力的なものだと感じていませんでした。 ところが今や東京へ行ってもたいくつに感じ、山小屋のような家に住み、薪ストーブを焚いて暮らしをしている。

ぼくがこの山形という環境の中で生きていくことに目覚めたのは15年ほど前、バイオマスというエネルギーがあることを知り、その代表格が薪だと分かってからでした。

バイオマスは簡単に言うと植物由来のものを資源と見るときに使う言葉ですが、木だけじゃなく、藁やもみ殻、草、牛や豚のふん尿、それに人間が出す生ごみやトイレの下水まで含まれます。そんなものまでという感じで、回りにいくらでもありそうなものなのです。昔ながらの薪という使い方だけではなく、電気にしたりと進化した方法もある。山形には田んぼがたくさんあるし、おいしい牛や豚もたくさんいる。そして何より見渡す限り山ではないかと思ったわけです。それまで大して興味もなかった田んぼや山の風景がまったく違って見えてきたのです。目の前に見えているのはまさに宝の山、山、山ではないかと。

物の見え方が、その意味を知ることでまさに180度変わるということを実感したのです。それからというもの、山へ行って伐採現場を見に行くようになり、農家に耕作放棄地の話を聞き、牛小屋や豚小屋をのぞかせてもらうようになりました。

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木の伐採研修
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牛舎にて

それはどこも人里はずれた集落や山の中。普通山形に住んでいて行くような場所ではありませんでした。そういうところはもちろん過疎化の最前線。何にもないとあきらめている地域。そこには宝の山があるではないかと語り掛けたくなったわけです。


山形のリアルライフ

僕はもともと建築を学び、都市に興味を持ち、エネルギー問題や地球温暖化に関心が広がって行ったわけですが、バイオマスと言っても農業や林業とはまったく無縁でした。当然のことながら現場へ行くと知らないことの連続。でも、いろんなことを知っていくと、そういうものがすべて自分の日々の食生活につながっているということにも気づけたんです。毎日過ごすこの家の材料となる木も、どんな山からどうやって伐ってきたんだろうと。

山形には食や住に関するものはあるはずなのに、何年も住んでいて気付かなかったというか、その生の現場やそこに関わる人の生の声に触れることがなかったわけです。今の時代、山形と言えども農業や林業をやっている人はもう少数派ですから、そんな接点がなくなるのも無理はなかったのです。ところがこのリアルな山形に触れてみると、それがなんと奥深いものだったか。都会にはない、それはもう別世界みたいなもの。

こうして、僕は知り合いの山で伐らせてもらって薪をつくり、知り合いの農家が作った米を食べ、知り合いが伐ってくれた山の木でつくった家に住んでいます。

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山形の木でつくった自宅

山形の大地と、山形の人とつながりながら生きているという感覚。リアルライフって言うんでしょうか。ささやかな発見や喜びが日々の暮らしの中にあって、人が生き物として生きることを味わえる感じ。僕はひょんなことからこんな感覚で暮らすことになりました。でも最近、地方での暮らしを望む都会の人が増えているのも、そんなリアルライフを求めているんじゃないかと思うのです。

リアルなエネルギーを求めて
現代社会はグローバル化によって、世界中のものが大量に安く手に入る時代になりましたが、その大きな流通システムではリアルな現場の姿はおのずと見えにくくなります。見えにくくなれば問題も起きるし、リアルなものを求めようとする人も出てくる。そうした変化の象徴的な出来事とも言えるのが3.11の原発事故だったのではないでしょうか。

ウランという見たこともない、どこから運ばれてくるのかも知らない燃料を使って、大量の電気をつくり、使用済み燃料の核廃棄物はどこに捨てるかも決まっていない。原発は実にリアリティのないエネルギーなのです。それが人の住めない地域をつくってしまうという惨事を起こしました。

もっと自然からエネルギーをつくった方がいい、もっと地域にあるリアルなエネルギーを使いたいと多くの人が感じたと思います。そう感じた人たちが日本各地で動き始めました。そういう地域と人々の様子を映し出したドキュメンタリー映画「おだやかな革命」を山形の渡辺智史監督がつくりました

地域の「リアル」で生きていこう

4月7日から山形市内でもロードショーが始まりますのでぜひ見てください。 もちろん山形でもいろんな地域でいろんな人が動き出しています。

おだやかな革命ホームページ http://odayaka-kakumei.com/

私がこれから担当するこのリアルローカルでは、山形だからこそできる、ローカルなエネルギーによるリアルな地域の暮らしを紹介していきたいと思います。

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