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「歴史」と「人」から山形を語る

写真家 MOTOKOさん と 建築家 馬場正尊さん

写真で街を元気にする活動「ローカルフォト」を全国6カ所で実施する、写真家のMOTOKOさん

ローカルフォトを山形市でお試し体験できる「ローカルラーニングツアー in 山形」が3月24、25日に開催されます。

その視察としてMOTOKOさんは山形市を訪れ、シネマ通り周辺のお店をたずね歩いた後、東北芸術工科大学の馬場正尊さんの研究室を訪れました。

歴史を絡めたMOTOKOさん独自の視点と、取材から読み解く山形の姿。お二人の談義の様子をお届けします。

写真家のMOTOKOさんと建築家で東北芸術工科大学教授の馬場正尊さん
写真家のMOTOKOさんと建築家で東北芸術工科大学教授の馬場正尊さん

MOTOKO 山形の繁栄には紅花と近江商人が深く関わっているようですね。

馬場 山形は紅花をきっかけに商業で栄えた街。京都や大阪から情報とモノが流れてきて、市も盛んで、とても豊かな時代がありました。

MOTOKO 旅篭町のお漬物屋さん〈丸八やたら漬〉さんを訪ねて、五代目社長の新関芳則さんにお話をうかがいました。山形の代表的なお漬物「おみ漬け」とは、そもそも「おうみづけ」で、近江八幡がルーツとだということです。

山形と近江の交流のきっかけは、近江商人が紅花を取引するために、山形に移住したことが始まり。蔵付きの商家の多くも近江商人のもので、近江と山形の商人同士の交流は街を大きく発展させたそうです。

経済は近江から、文化は京都から影響を受けてきたんですね。ですから、他の東北地域に比べて京都文化が強いと感じました。近江商人はその橋渡しですね。

馬場 山形は近江と京都、両者のいいところを吸収して独自の文化を築き上げたということですね。歴史的な背景から街を読み解くのもおもしろい。

MOTOKO まちづくりにおいて重要なのは、先人たちが築き上げてきた「歴史的文化的文脈」およびに「共有してきた空気感」を移住者をはじめとする若い人々が受け継いでいくことではないかと思います。

わたしがまちの文化や土地の歴史を学ぶのはそういう理由でもあります。「今」だけでなく「むかし」とつながることで、よりロマンを感じ、風土が育んできたその土地の人間性に触れることができます。

「丸八やたら漬」五代目・新関芳則さん のもとをたずねたMOTOKOさん
「丸八やたら漬」五代目・新関芳則さん のもとをたずねたMOTOKOさん

MOTOKO 山形の第一印象としては「人が洗練されてる」と思いました。京都や東京から遠く離れたこの山形だけど、商業や金融で栄えた街だから情報やモノが盛んに流れてきていた。だから昔から感覚が都会的だったのではないでしょうか。

馬場 なるほど、芸工大が東北の中でもこの山形で成り立っている理由はそこかもしれませんね。アートは徹底的な異物ですから。それを受け入れる都会的な気質が山形にはあるのかもしれない。

MOTOKO 山形の人は味覚も洗練されています。仕事柄いろんな地域に行きますが、山形はお料理の味付けから見ても、すごく文化度の高い街だと思いました。

花小路の小さな居酒屋で大根を炊いた小鉢をいただいたのですが、素材のおいしさとそれを引き立てる繊細な味付けに感動しました。お店の雰囲気も非常に良く、親しみやすさのなかに老舗の品格を感じました。

七日町の周辺は司馬遼太郎さんや白洲次郎さんや池波正太郎さんといった、文化人と縁があったそうですね。そういった人たちを満足させるため、料理やおもてなしのクオリティも自然と一流のレベルになっていったのかもしれませんね。

蜂屋眼鏡店
蜂屋眼鏡店

MOTOKO 花小路やシネマ通り付近には、ご夫婦でやっているいいお店が多い印象で、夫婦のカタチがとても素敵でした。旦那様はもちろん、奥様がみなさんしっかりしていらっしゃって、男女平等に働いている感じ。

馬場 山形は共働き率が全国トップクラスです。つまり、山形の女性は働き者ということなのでしょうね。

MOTOKO さらにこれは推測ですが、山形は女性の意見が強い地域なのではないでしょうか。

七日町の〈蜂屋眼鏡店〉さんもご夫婦で営まれているお店です。ご主人様が自主活動として、新聞記事や写真などを事細かにスクラップブックに保存していました。その編集能力もデータベースの量としてもすごくて、街の変遷をしっかり見届けている生き証人のような方です。

そのスクラップブックの中に、女相撲の写真を見つけました。女相撲のみなさんのお顔はとてもきれいなのに、佇まいが凛として男前。そして、料亭で撮影した女性たちの集合写真もあり、山形市の中心街の花柳界をまとめていたのも女性だったとお聞きしました。

女相撲の写真。蜂屋眼鏡店さんのスクラップブックより
女相撲の写真。蜂屋眼鏡店さんのスクラップブックより

馬場 山形は女性の意見が強いという説。なぜでしょうね。

MOTOKO 関西や中部など戦国時代に戦乱が盛んだった地域に行くと、男性は外へ戦に行き、女性は台所を切り盛りしながら家を守る風習が残っているのを感じます。これは単純に男尊女卑ではなく、家系を守るために自然と生まれ、いまだに残っている地域の特性です。

馬場 たしかに、山形は戦乱がなかったですね。

MOTOKO だから女性が家を守る発想は比較的少なく、女性が前に出やすかったのかもしれないですね。

さらに山形は商業の街。金融は現代に近い発想ですから、武力ではなくコミュニケーションや頭脳が求められるし、女性が対等に働ける環境で、男性を支えながらも表に出て一緒に働いてきたのかもしれません。

客商売をしているせいか、昔の写真を見ても、いま街で会う方たちも、山形の女性はみなさん美人ですし、まっすぐで知的な風格がありました。

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MOTOKO 話は戻りますが、山形は紅花を通じて京都・大阪との交易が盛んに行われていて、文化も流れてきていた。芸妓の文化も山形に伝わり、いまでも山形芸妓は、全国的にも高い評価を受けているそうですね。

料亭の〈千歳館〉であたたかいおもてなしと素晴らしい料理をいただいて、舞子さんに関するお話もうかがいました。なんと、当時舞子さんだった女性が、若い頃に白洲次郎さんをおもてなしして、一緒に遊びに行ったという貴重なお話まで聞くことができました。舞子さんは街を影で盛り上げる仕事で、街のためにはすごく大切な存在なのだと改めて思いました。

馬場 舞子さんは商売上手で洗練された会話ができ、芸もできる、かなりレベルの高いサービス業。マルチな能力が備わっていて、優秀じゃないとできない仕事です。

そして、その花柳界を支えてきたのが料亭ですよね。〈のゝ村〉や〈千歳館〉のような場所は、政治的にも重要な役割を果たしていたはず。ただ飲んで酔っ払う場所ではなかったと思いますね。

MOTOKO 山形の料亭には、品のある重厚な空気がありました。白州次郎さんもきっと料亭で政治に絡む話をしていたと思うんです。東北電力の会長でしたから。

蜂屋眼鏡店さんで見せていただいたスクラップブック
蜂屋眼鏡店さんで見せていただいたスクラップブックより

馬場 〈のゝ村〉はすごく立派で保存状態がいいのですが、去年にお店を閉じられました。これは実にもったいない。街の文化がひとつなくなってしまう気がして残念です。

MOTOKO 料亭は舞子さんが活躍する場でもあるわけですし、残念ですね。そして、舞子さんってクリエーターの要素を大いに含んでいると思うんです。

馬場 たしかに、舞子さんは完全にクリエーターですよね。会食という日常のワンシーンを芸術で彩る、日常と非日常をつなぐパフォーマー。現代の演劇は手法が多様化していて、必ずしも立派な劇場を必要とはしていないし、フラッシュモブのような日常に溶け出すような演劇もある。

MOTOKO 舞子さんを「演劇」や「芸術」として考えるなら、芸工大の学生さんの卒業後のしごとの選択肢として、舞子さんとして働くのはどうでしょう?現代では舞子さんの後継者不足が深刻だと聞きますし、山形では企業が舞子さんを社員として採用する仕組みがあるそうです。

もし演劇やパフォーマンスに興味がある若い人が一人舞子さんに加われば、それは街にとってはすごい財産になる。

移住促進の切り口としても有効かもしれません。地方では物理的な働き手も重要ですが、クリエーターや舞子さんのようなハレの魔力を持っている人が来ると、街へ大きな影響を与える気がします。

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馬場 それにしても、ご夫婦のたたずまいや舞子さんの歴史からこんなに伝わってくるものがあるとは。ぼくは建築の目線で街の構成やハード面から見ることが多いけど、MOTOKOさんは人がいる風景から街を読み解いていく。写真家ならではの分析ですね。

MOTOKO 街は「箱」だけではうまくいかない。ソフトの力がすごく大切だと思っています。つまりは人ですよね。七日町で出会った商店街のみなさんや〈とんがりビル〉もそうですが「意思を持った人」が街の財産だと思います。

いろいろな店を訪ねましたが、山形のみなさんはそろって勉強熱心で、地元を元気にするにはどうすればいいかと対策を練っておられましたし、商店街の方々からは、商売人の以前にいち市民として、この街をつくってきたという誇りを感じました。

馬場 ビジネスの前線に女性がいるという、女性についての考察もおもしろかったです。〈郁文堂〉の伸子さんもすごく知的でしなやかだし、 山形出身の学生を見てそう感じることもある。すごく合点がいきました。

歴史的な背景からみても、山形は女性のポテンシャルを引き出しやすい土地なのかもしれませんね。


【カメラを持って山形を歩こう!】

3月24日(土)〜25日(日)に「ローカルラーニングツアー in 山形」が開催されます。写真を撮りながらシネマ通り周辺と蔵王を歩き、街の人のお話をうかがいながら山形市の魅力を再発見するツアーです。詳細はこちらからどうぞ。

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【MOTOKOさん プロフィール】

大阪芸術大学美術学科卒業。1992年より2年間渡英後、1996年より東京で写真家としてのキャリアをスタート。CDジャケットや広告など幅広く活躍する。2006年より日本の地方におけるフィールドワークを開始。滋賀県の農村を舞台とする「田園ドリーム」をスタート。キャリアをスタートさせた時からテーマは一貫して「自然と人間」。近年では、「地域と写真」をテーマに、滋賀県長浜市、香川県小豆島、神奈川県真鶴町、長崎県東彼杵町など日本各地で活動し、2016年社団法人ローカルフォトラボラトリーを設立。
展覧会に田園ドリーム、小豆島の顔。おもな作品集に『Day Light』『京都』など。

【馬場正尊さん プロフィール】

Open A代表/東北芸術工科大学教授/建築家。1968年佐賀生まれ。1994年早稲田大学大学院建築学科修了。博報堂、 早稲田大学博士課程、雑誌『A』編集長を経て、2002年Open A を設立。 都市の空地を発見するサイト「東京R不動産」を運営。東京のイーストサイド、日本橋や神田の空きビルを時限的にギャラリーにするイベント、CET(Central East Tokyo)のディレクターなども務め、建築設計を基軸にしながら、メディアや不動産などを横断しながら活動している。

日時

2018年3月24日(土)〜25日(日) 

会場

郁文堂書店(山形県山形市七日町2丁目7−23)

主催

山形リノベーションまちづくり推進協議会、山形市

企画:株式会社オープン・エー

協力:reallocal山形

備考

募集人数:20名

申込・問合せ先: llt.yamagata[a]gmail.com もしくは、以下の問い合わせフォームより「ご氏名/参加人数」を明記のうえお申し込みください。

 

【注意事項】

・宿泊先(蔵王温泉)は各自手配(紹介が必要な方はこちらから紹介)

・参加費に、移動費と宿泊費は含まれません(宿泊は必須ではありません)

・現地(郁文堂)集合、現地(蔵王)解散

・オリンパス株式会社の最新ミラーレス一眼カメラの貸し出しあり

料金

24日のみ:1500円(昼食込)

25日のみ:4000円(昼食代、ロープウェイ代)

2日間:5,000円(ロープウェイ代、昼食代含む)

※高校生まで、両日とも参加費1000円。未就学児は無料

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