本でまちを盛り上げる、若者とおばあちゃんの物語

郁文堂再生プロジェクトの追沼くん、芳賀くん、オーナー伸子さんに密着

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週末、山形市のシネマ通りにそっと佇む〈郁文堂書店〉の中でせっせと片付けをしているのは、〈郁文堂再生プロジェクト〉を立ち上げた東北芸術工科大学の追沼くんと芳賀くん、そしてオーナーの伸子さんです。

郁文堂がシャッターを開く最初のきっかけとなったのは、今年9月に開催された「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」。当初伸子さんに声をかけていたナカムラクニオさんからバトンを引き継ぐかたちで、追沼くんと芳賀くんで毎週末、郁文堂に通う日々が始まりました。

ナカムラクニオさんの郁文堂コラムはこちら

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これは、まちを盛り上げようと奮闘する20代の若者と、伝統と知恵を受け継ぎ守る伸子さんの、まちの小さな本屋さんで起こっている書店再生物語です。

フランクな人柄で、プロジェクトでも様々な人との繋がりを作っていく追沼翼くん
フランクな人柄で、幅広く人との繋がりをつくっていく追沼翼くん

(追沼くん)「初めて伸子さんをたずねたとき『こわい人だったらどうしよう』とドキドキしましたが、突然お邪魔したのにもかかわらずお菓子やお茶を出してくれて、うれしそうに郁文堂や山形のことを話す姿を見て、いつのまにか緊張もほぐれていきました。郁文堂は山形の文化の拠点であり、人々にとって心地いい場所だったんだと、伸子さんの表情から伝わってきましたね」

寡黙ながらも、プランのこだわりや郁文堂のこれからの姿を力強く語る芳賀耕介くん
寡黙ながらも、プランのこだわりや郁文堂のこれからの姿を力強く語る芳賀耕介くん

(芳賀くん)「伸子さんは笑顔が素敵な方という印象。郁文堂の存在は去年から知っていて、『シャッターは閉まっているけど、実はお店は動いている』と聞いてからずっと気になる存在だったんです。だからこそ、郁文堂でなにかできると知ったときはうれしかったですね」

初対面でもほろっと心が和むような笑顔が印象的な、オーナーの伸子さん
初対面でもほろっと心が和むような笑顔が印象的な、オーナーの原田伸子さん

伸子さんに、学生2人の第一印象を聞いてみました。

「今どきの若者っていう感じ。2人とも私の孫と同世代で、以前、山形大学の学生に郁文堂でアルバイトをお願いしたこともあって、若者の気持ちはわかるの。だからこそ、最初から楽しく関係を築くことができたように思うわ」

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店を閉めてから子供たちも家を出て、ずっと1人で暮らしてきた伸子さん。これからこの建物をどうしていこうか悩んでいたといいます。

そんな中舞い込んできた山形ビエンナーレでの1日限定オープンの話。はじめはそれに向けた掃除が目的だったはずが、学生2人が毎週郁文堂に通ううちに、「ここをこうしたら面白くなるんじゃないか?」と伸子さんを含んだ3人の間でたくさんの妄想が飛び交うようになりました。

一般的な書店では目にしない郷土史観の本や山形県の方言集、何百年もの歴史を持つ伝統工芸品。伝統と知恵が詰まった宝箱のような空間が、日々広がりを見せる度に自分たちのアイデアを書き留めていったそうです。

山形ビエンナーレ限定オープンの様子(リノベーション前)
山形ビエンナーレ限定オープンの様子(リノベーション前)

そして迎えた限定オープン当日。予想を上回る多くの人が訪れ、新しく並べられた本や、長い間眠っていた古本たちも、たくさんの人の手に渡り賑わいをみせました。

かつて人々から「郁文堂サロン」といわれていたように、ここは県内の文化人が通いつめる場所でした。常連さんはお客様、というより家族のような存在だったといいます。仰々しくなく、お茶を飲みながら、お互いがゆったりとした心地いい時間を過ごしていた場所なのです。

「限定オープンしたとき、店を開いていた頃の時間が戻ってきたようでとてもうれしかったの」と、照れくさそうに笑顔を見せる伸子さん。

掃除をしていると次々に出てくる普段目にしない貴重な古本たち
掃除をしていると次々に出てくる普段目にしない貴重な古本たち

学生が妄想で描いた郁文堂のプランを伸子さんが見たとき、昔から大切にしていた郁文堂サロンの気風を受け継いだ魅力的なものだと感じたそう。

今の常連のお客様との関係が続けられることを条件に、今まで軽い気持ちで話していた妄想を現実にするため、郁文堂再生プロジェクトがついに本格的に動き始めました。

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今の関係について「オーナーというより、一緒にやっている仲間という感覚」と話す芳賀くん。週末のお昼や夕飯は3人一緒が当たり前になっているほど、今では家族のような関係だそうです。「いつも伸子さんに七日町のお店をたくさん教えてもらってます」と笑顔で追沼くんは言います。

3人一緒に掃除をし、食事をし、対話をし、本当の家族のような関係が築かれたからこそ生まれた、3人のアイデアが詰まったプロジェクトだと感じました。

現在は内部がスケルトンになり、一気に空間が広がりを見せた
現在は内部がスケルトンになり、一気に空間の広がりを見せた

郁文堂が目指すのは、自分の家でも職場でもない、第3の愛する場所です。かつて文化人が郁文堂を訪れたとき、いつもの席に誰かがいると、その席が空くまでずっと立っていたといいます。「自分の場所」が、郁文堂にはあったのです。そんな文化や価値観が根付く場所にしたいと、追沼くんと芳賀くんは言います。

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徐々に動きを見せている山形市や七日町に対して、追沼くんと芳賀くんはどんなビジョンを描いているのでしょうか。

「郁文堂の再生をきっかけに、道路や店の垣根をなくして、いろんなコトが起こるエリアにしていきたいです。コーヒー屋の前で本を読んでいたり、まちのいたるところに本棚があって交流が生まれたり、いろんな人やお店とコラボして山形市の風景を変えていきたいですね。朝活を気軽にできる場所がほしいという声もあるので、朝の読書会などイベントも仕掛けていきたいです」

「建物がただの箱物じゃなくなったとき、人が集まってくると思うんです。このプロジェクトはある意味実験的にやっていて、これを機に今シャッターが閉まっている建物を再生しようとアクションを起こす人が増えたらうれしいです」

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「おもしろいことをずっと発信し続けていきたい」と、力強く話す2人。不安なときも、応援してくれる人たちからのエネルギーに背中を押されて頑張れているそうです。

これからまちで本に触れ、人と人とのコミュニケーションが生まれていく風景が、山形市に広がっていくかもしれません。

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屋号

郁文堂書店

住所

山形県山形市七日町2丁目7−23

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