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断熱で冬の世界が変わる/楽しい暮らしのエネルギー09

断熱で冬の世界が変わる/楽しい暮らしのエネルギー09
我が家の断面図

暖房ではなく、断熱で家を暖める

今年の冬は暖冬でしたが、3月の末になって雪が降りました。山形ではまだ暖房は片づけられません。最低気温が10℃を超すようになるのは山形市の平年値で言うと516日ですから、ゴールデンウイーク頃まではまだ暖房が必要だという家庭も多いはずです。ちなみに東京は418日ですから一カ月ほど長いということになります。

前回のコラム「寒い山形の家に潜む危険」では、ストーブを入れない風呂場で毎年200人もの方が山形県で亡くなっているということをお伝えしました。しかし、死に至らなくとも、冬場の寒さは多くの人に日常的なストレスを与えているでしょう。日本人は冬になれば家も寒くなるものだと思い込んでいます。そして、家はストーブで暖かくするものだと思っているでしょう。だから、家全体を暖かくしようとすると、家じゅうにストーブを置かないといけないし、灯油代や電気代がかかりすぎてとても無理だと思ってしまいます。

確かに昔のような家ではそれは無理でした。しかし、家そのものの断熱性能を上げればそれほど暖房をしなくても家全体を暖かく暖房することが可能になります。そして、そうなった時の家は、もう今までの冬とは世界が変わるのです。そこまで私が言うのは私自身が体験したことだからです。

高断熱住宅で冬は別世界に

私は仕事柄、住宅の断熱性能のことはよく知っていましたし、どれぐらい省エネになるとか、温度がどうかとかデータもよく見ていました。しかし、そんな私でも暖かさの感覚というのはつかんでいなかったと言えますし、それは体験してみないと分からないものなのだと思います。

暖かい家の快適さをことばで表すことはむずかしいものですが、我が家の様子をいくつか例を挙げてみます。まず、風呂場もトイレも玄関も、家じゅうどこの部屋も20℃以上あり、寒い場所はいっさいありません。さすがに朝起きた時の温度は20℃を切っていますが、それでも19℃程度です。朝起きたては布団の中で体も暖まっていて、寒くありませんから、急いでストーブを入れるようなことはありません。晴れていれば、日が差し込むのを待っていればそれで部屋の温度は上がって、そのまま暖房はいりません。晴れていない日や、日が落ちてくれば暖房が欲しくなりますが、暖房は薪ストーブ一台だけで家全体が十分暖かくなります。

2階の寝室にも暖房はあるのですが、使ったことがありません。風呂あがりはパジャマ一枚、杉の床の上をはだしでうろうろしていますが、床暖房を入れているわけではありません。なお、妻はもう一枚羽織って、靴下をはいているので、男女や人によって体感の違いもあると思います。湿度も常に50%以上あり、乾燥感もありません。湿度が高いと結露しやすくなりますが、結露をしている場所はどこもありません。窓の結露拭きはしたことはありませんし、風呂のカビもほとんどないので風呂掃除も楽です。

冬場の家の中の暮らしが、のびのびと、ゆったりしてくることが伝わったでしょうか。朝布団から出るのが億劫、こたつから出られない、トイレや浴室に行くのがつらい、毎朝窓の結露拭き、手足が冷え、寒さで体が縮込んでいるなどという冬のストレスから解放されるのです。冬はつらい季節ではなく、暖かく快適な世界へと変わります。これは決して贅沢ではなく、欧米では当たり前のことで、健康な生活するうえでも基本となることなのです。

断熱で冬の世界が変わる/楽しい暮らしのエネルギー09
我が家の冬の温度グラフ

断熱材は壁22cm、天井40cm、ガラスは3枚

では、我が家ではどれぐらい断熱性能を上げたのか。断熱性能の数値は外皮平均熱貫流率(UA値)というものがありますが、それをここで説明するのは少し専門的で分かりにくくなりますので、具体的な断熱材で説明します。

断熱材といっても特別なものを使っているわけではなく、グラスウールという一番良く使われる断熱材を使っていますが、壁に22cm、屋根に40cm入れています。山形では普通、省エネ基準を満たした断熱性というと、壁10cm、屋根20cmですから、この2倍です。それと大事なのが窓で、3枚ガラスの窓を入れています。かつて国産サッシメーカーはほとんどが2枚ガラスのペアガラスしかありませんでしたが、ようやく最近になって、3枚ガラスのサッシもつくり始めました。

こういうレベルが昨年度から山形県で始まった「やまがた健康住宅」の水準なのです。断熱だけでなく、気密性を確保することも大事です。時々、高気密住宅は不健康だというようなことを言う方もいますが、決してそんなことはありません。暖かい家をつくるために、しっかりとした気密性を確保することは必須です。

断熱で冬の世界が変わる/楽しい暮らしのエネルギー09
壁の断熱材(グラスウール厚さ22cm)
断熱で冬の世界が変わる/楽しい暮らしのエネルギー09
3枚ガラスの窓

静寂の中の暖かさ

我が家では暖房として実験もかねて、薪ストーブだけでなく、エアコンと温水式の暖房も入れて比較しています。どの暖房ももちろん効きますが、エアコンが他の2つと大きく違うのは、温風を使うということです。エアコンの風は灯油のファンヒーターも同じですが、直接肌に当たると不快です。それも多くの人にとっては当たり前のこととなっているかもしれませんが、ヨーロッパでは温風の暖房はまずありません。また、断熱性能が上がると遮音性能も上がるので、部屋の中は静かになります。その分、エアコンの風の音も結構します。

ヨーロッパなどでは一番多いのは温水方式の暖房で、お湯をつくって部屋の温水パネルに流して輻射で暖めるという方法です。我が家でも、この温水暖房は薪ストーブに引けを取らないほど快適なもので、風はなく、一切音もしません。静けさの中にある暖かさは、暖房をしていないのかと錯覚するような感じで、冬であることを忘れてしまいそうになります。

温水暖房は日本でもセントラルヒーティングと呼んで導入された時がありましたが、当時の日本の住宅は断熱性能が低かったため、暖まらない、暖房費がかかるという評判であまり広がりませんでした。しかし、断熱性能を上げれば最高の暖房になります。

断熱で冬の世界が変わる/楽しい暮らしのエネルギー09
薪ストーブ
断熱で冬の世界が変わる/楽しい暮らしのエネルギー09
この床下に温水式放熱器がある

山形の家を暖かい家に

日本では断熱にこだわった家づくりをしているところまだまだ少ないのが実情です。新しい家ならどこもそこそこ暖かいだろうというのは違います。新築住宅を建てたのに寒いという人の話をよく聞きます。一生で一番高い買い物をしているのに、そんな思いだけはしてほしくないと思います。

そして、新築の予定がなく、今住んでいる家が寒いという人が圧倒的に多いわけですが、これをなんとかしなければなりません。そういう家の断熱診断もやっています。新築の予定がある方も、寒い家を何とかできないかという人も、ご相談いただければ可能な限り相談には乗らせていただきます。山形の家を一つでも多く、暖かい家にしていければと願うのです。

*やまがた健康住宅のWEBサイト
https://www.pref.yamagata.jp/tatekkana/support/kenkou/

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