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なぜ広島、アラスカを経て、東北へ移住したのですか?

地方の暮らしとアートを探る、是恒さくらさん

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東北工科芸術大学に通いながら、アーティストとして活動する是恒さくらさん。生まれも育ちも広島。アラスカ州立大学を卒業し、広島を中心に国内外で活動を続け、たどり着いた先は東北でした。故郷からは遠く離れた山形に移り住み、一年半のときが経とうとしています。

きっかけは、2014年の山形ビエンナーレでした。地域の芸術祭に興味をもっていた是恒さんは、ツテもないままに山形を訪れ、その翌年、東北工科芸術大学(以下、芸工大)に大学院生として入学し、山形に拠点を置くことになります。

リトルプレス『ありふれたくじら』vol.1 石巻編 vol.2 ポイントホープ編
是恒さんが発行する、世界に点在する鯨にまつわるストーリーを聞き集めたリトルプレス『ありふれたくじら』vol.1 石巻編 vol.2 ポイントホープ編
アラスカ州立大学では先住民族について学んだ。卒業後に取材で再びアラスカを訪れた是恒さん
アラスカ州立大学では先住民族について学んだ。卒業後に取材で再びアラスカを訪れた是恒さん

是恒さんは研究課題としてリトルプレス『ありふれたくじら』を発行し、国内外を歩き回りながら、鯨にまつわる日常風景を探っています。

探究心が強く、日本全国、世界を自由に行き来する是恒さんにとって山形とはどんな場所なのでしょう。

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──初めて山形を訪れたとき、どんな印象でしたか?

広島からすると、東北ははるか遠い場所。正直、山形に対してなんのイメージもありませんでした。でも、たった1日ビエンナーレをまわっただけでインパクトを感じたんです。とにかく文化が“深い”なぁと。

山伏・坂本大三郎さんのプログラムが強く印象に残りました。瀧山という山から木をとってきて、それにお客さんの姿を掘り、山に戻す。それはいつかは朽ちて山の土へ還っていく、という内容です。アートがまちの中で切り離されていない、その土地をめぐって循環していく山形のアートの姿に興味を持ちました。

坂本大三郎さんが龍山の木に、ゲストの姿を手彫りするプログラム(Photo by みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ)
坂本大三郎さんが瀧山の木に、ゲストの姿を手彫りするプログラム(Photo by みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ)

山形にはどこかアラスカと似た雰囲気を感じるんです。よくよく考えると、アラスカにもトーテムポールという自然と一体化したアートの風習があります。そのほかにも、山形の民話に登場する「鮭のオースケコースケ」という人間とそのほかの生物が対等に描かれる存在があり、アラスカ先住民族にも類似した世界観があります。アラスカと山形にはモノの見方や精神的な部分で近さを感じますね。

──移住して1年半、印象は変わりましたか?

引っ越す前と変わらず、深いなぁって感じます。暮らしはじめて、山形は山岳信仰と深い関係があることがわかってきました。その要素がまちの中に隠れているのがおもしろいです。

たとえば、瀧山という山は、古代東北の一大霊場として死んだ人の魂が登っていく信仰の山と言われました。山の入り口には里と山の区切りとして姥様の像があります。それを知ると、山がただ存在するものじゃなくて、何世代の人の魂が集まったものに見える。人が生きてきた歴史も感じます。

山形市の南西に位置する龍山。その入り口にたたずむ姥様
山形市の南西に位置する瀧山。その入り口にたたずむ姥様

あとは、とにかく食べ物が魅力的です。まだ1年半なので、いろんなものが珍しく感じられて買い物や料理が楽しいですね。山形にきて、単純に食べることが幸せと思うようになりました。

ウワバミソウの実、通称「みずの実」は粘り気のある山菜(Photo by Aomorikuma)
ウワバミソウの実、通称「みずの実」は粘り気のある山菜(Photo by Aomorikuma)

産直へ行って、旬の野菜をできるだけシンプルに食べたり、居酒屋や食堂で新しい食材や食べ方を発見して、それを家で実践することもあります。最近では、みずの実という山菜と出会って、そのおいしさに驚きました。食べ物は、山形を知る入り口として最適なツールだと思います。

──知り合いが誰もいない環境にひとり移り住んで、寂しさはなかったですか?

わたしの場合は、移住した直後から「みちのおくつくるラボ」という、市民参加型の山形ビエンナーレ準備プログラムに参加していて、ものづくりが好きな人や感覚が近い人と繋がりができました。だから寂しいとは思わなかったですね。

ビエンナーレでは市民の方々へサポーターの募集をかけるので、それに参加することも地域と関わるひとつの方法かもしれません。

山で採集した天然素材を新発想で活かす「MIYAGE LABO.」(Photo by みちのおくつくるラボ)
山で採集した天然素材を新発想で生活に活かす「MIYAGE LABO.」(Photo by みちのおくつくるラボ)

山形にはものづくりをしている人が多い気がして、その人たちと話すのがとても楽しいです。やはり芸工大の存在が大きいですよね。他県からも芸工大にユニークな学生が集まってきて、一部の人は卒業後も山形に残っているようです。最近では七日町にあるシェアハウス「ミサワクラス」で若いアーテイストたちとよく集まって話しています。

老舗旅館をリノベーションした「ミサワクラス」のキッチンスペース
老舗旅館をリノベーションした「ミサワクラス」のキッチンスペース

──もうずいぶんと山形に馴染んでいるようですね

いえいえ、山形は奥が深くて到底馴染みきれません(笑)。完成された人間関係にどこまで入っていいのか迷うこともありますし、自分を“よそもの”と感じることがあります。山形の人はじっくり信頼関係を築いていく印象で、ほかの地方と比べて、溶け込むのには時間がかかる気がしています。

外から来た人も地元の人も、おもしろいものはおもしろいと受け入れて、まち全体で活動をサポートする空気があればいいかもしれない…と思いますね。

ミサワクラスの仲間たちと一緒につくった『山形藝術界隈新聞』
ミサワクラスの仲間たちと一緒につくった『山形藝術界隈新聞』

──今後の活動について教えてください

まちなかに表現活動の場を増やしていきたいですね。大掛かりなギャラリーじゃなくてもいいんです。生活空間の中にアート作品の展示があったらおもしろそうだし、表現者とまちの間に入るような活動ができたらいいなと思います。

──“アートと暮らし”という観点での移住。山形の新しい側面が見えた気がします。ありがとうございました!

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プロフィール

是恒さくら Sakura Koretsune

美術家。広島→埼玉→アラスカ→山形と、北上して南下。国境を超えて地方をいく。東北芸術工科大学・地域デザイン研究領域の大学院生。

リトルプレス『ありふれたくじら』は、山形とんがりビルの「十三時」、東京の「本屋B&B」ほか、全国各地の書店で発売中。

http://www.sakurakoretsune.com/

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