DIYから始まった家具づくり
501FURNITUREの渡辺さん谷口さんご夫婦
–501FURNITUREさんは2020年3月をもって閉店されました-
今回は北九州の郊外エリア、小倉駅から電車で15分、さらに徒歩で15分の下曽根駅エリアにやってきました。古いマンションや飲食店が並ぶ住宅街。自動車が通る大きな道から入ったところに、周りに溶け込むようにショールームとなるお店がオープンしています。
古い建物の中に、デザインされたガラス扉と白い壁が印象的。この場所で活動されているのは、501FURNITUREの渡辺圭さん、谷口直子さんご夫婦。
渡辺さんは、武蔵野美術大学を卒業後、グラフィックデザイン事務所、横浜と宮崎の家具製作工房を経て、2011年11月、地元北九州にて501FURNITUREを設立。
谷口さんは、明治大学卒業後、舞台役者、パフォーマーとして活動。2009年文化庁芸術家在外派遣員として1年間のチェコ共和国留学。帰国後、501FURNITUREを芸術活動の拠点として、活動中。
お二人にお話を伺いました。
–なぜこの場所で、お店をされているのですか?
渡辺さん:デザイン事務所に勤めている時代に、部屋のDIYをしたことがきっかけで、仕事としての家具づくりを目指すようになりました。デザイナーを辞めて、職業訓練校で一から勉強を始め、工房で修行、経験を積みました。東京での家族の生活もイメージできなかったこともあり、地元北九州を選んで戻ってきました。
–店名の501とは?
渡辺さん:『501』は、昔住んでいたマンションが501号室だったことから。そのマンションに同じ世代の方が多く住んでいて、大きな家族みたいでした。その楽しかった経験と原点に戻るという意味を込めて、『501』を付けました。
–お店の中もすごく素敵ですね。
渡辺さん:ここは2、3階が自宅、1階がショールームのようなお店になっています。自宅を3ヶ月、お店を3ヶ月かけて、ほとんどをDIYでリノベーションしました。
–谷口さんは家具とはまた違った活動をされているんですね。
谷口さん:東京で音楽劇や演劇の活動をしていた時に、人形劇師 沢則行さんとの出会いをきっかけに、チェコ共和国へ1年留学しました。帰国後は地元北九州に戻り、ここ501FURNITUREを人形劇などの活動の拠点としています。
谷口さん:最近は、イベントでの公演や保育園で月に2回、演劇の先生もしています。”えんげきあそび“と称して豊かな学びを共有する活動です。日本の演劇は、観劇料も安くありません。子どもが観劇できるハードルを下げて、文化的な格差を縮めていきたいと思っています。
お話しを聞いていると、その雰囲気とお二人の様子から、優しくてあたたかい人柄が伝わってきます。やっぱりそれは、お店の雰囲気にも表れていて、ほんとうに居心地の良いやさしい空間でした。
–家具づくりでこだわっていることはありますか?
渡辺さん:ナラを中心とした無垢材の家具を作っています。ナラ材のやわらかい表情が好きなんです。ほぞ組みや蟻組みといった技法で作ってますので、極力ビスなどの金具を使っていません。
渡辺さんがつくる家具は、曲線が印象的。手が触れるところには金具もないので、子どもにも安心です。全てに渡辺さんの人柄が見える、やさしさがあふれる家具でした。
そして、最後は工房にもご案内いただきました。お店から車で20分程の場所にあります。車での移動中、信号停止している時に気づいたのですが、車のナンバーも『501』。こんなところにもこだわりが(笑)
ここで1人黙々と作業をしているそうです。初めて見る工具から木材など、家具作りにかかせないものがたくさん並んでいました。
自分たちの好きなことを仕事にされているお二人。お店から家具、車のナンバーとお二人の人柄とこだわりがあふれる素敵なお店「501FURNITURE」でした。