小さなモモちゃん from 東京。vol.3
福井を路面電車で、自転車で。
福井と言えば、この景色、この印象。
福井駅に降り立った時の駅前の風景が大好きです。
福井駅を背にしてその先にある日本海を想像しながら駅前の街並みをゆっくり眺めると、空と街が大きく上下ふたつに分かれていて美しいのです。
生まれてはじめて福井に来たときにこの景色を感じてどきどきしたことを覚えています。空は柔らかくぎりぎり青みを感じるグレー。重苦しくないでも軽やかでもない、見ていると落ち着くグレーです。
街は目立って高い建物がなく派手な装飾も少なく、昭和の匂いを残す比較的高さの似たビルが並んでいます。空と街の境界には路面電車の電線が張り巡らされていて、向こうから路面電車が悠々と到着して出発します。
空に何もない、その空の下に街がある。
いつまでも遠く広がっていくような、両手が無理なく広げられるこの景色。この空と街がこのままでありますようにと勝手に願ってみたりもするのです。
車がないと暮らせない?!
わたしは自動車の免許を持っていません。移動手段は自転車か公共交通機関です。
免許を持っていなくて福井(地方)に住むなんて大変だよ。と福井県内外の多くの方に言われましたし、福井県内の方に、免許持ってないのに福井へ行くことをよく決めたね。なんて言われたこともありました。
でも本当に車に乗れないと生活できないのかな、なんとかなるんじゃないかなという変な自信がありました。まだ福井の春から夏までしか経験できていませんが…、今のところ福井市内に自宅があるのでどうしても免許が欲しいと思ったことはありません。
福井市は役所や郵便局や銀行、美術館や図書館や教育機関などがコンパクトに集まっているので暮らしやすいと思います。自転車で1時間くらいの場所であれば体力づくりも兼ねて自転車で行きます。散策が仕事でもあり趣味でもあるわたしにとってベストな乗り物は自転車です。
ただ雨が降ったり風が強かったり、体調が優れない時や自転車で1時間以上かかるような場所には公共交通機関を使います。
(もちろん、知人が車で移動する時に便乗させてもらうこともあります。)
福井に限らず日本全国、公共交通機関がなく不便な場所も多いですよね。そんな時は何としてでも自らの足で行かねばなりません。自転車や歩くのが厳しい時にはメーターにびくびくしながらタクシーに頼ります。
わたしは学生にデッサンを教えています。デッサンのモチーフを選んで当日持っていくのですが、モチーフをりんごにした時は学生40人分=りんご40個(予備として2~3個)をリュックサックにぎゅうぎゅうに詰め込んで、福井駅から九頭竜川を越えて自転車で約30分走りました。
モチーフを購入する時にはなぜか迷うことなく、なんとか運べるだろーと思ってしまうんですよね、悪い癖です。でっかいリュックサックを背負った汗だくの険しい顔の自転車の女。
通り過ぎる車の運転手さんのぎょっとした顔が横目で見えましたが、自転車をこぐことに必死でとびきりの笑顔で手を振れなかったのが残念です。
到着してリュックサックを下ろした時、飛んでっちゃうんじゃないかと思うくらい体が軽く思わず顔がにやけました。りんごだったら40個くらいまでは運べることを発見できてよかったです。
別の日にはモチーフとして花を選んだので、大量の切り花をリュックサックに挿して走りました。重たくはなかったのものの、リュックサックからわさっと花が飛び出していてなんだか少し恥ずかしかったです。
まだ福井の冬を知らないわたし。免許がなくても大丈夫といつまで言っていられるのか周囲に観察されています。
そして冬の心配がもうひとつ。東京では冷暖房器具が全て備え付けの部屋だったため、忍び寄ってくる冬に全く備えのない状況です。大丈夫なのか?!
あこがれの路面電車ー福井鉄道
マイフェイバリット交差点は路面電車の通る福井駅前の中央大通りとフェニックス通りが交わる五差路の大名町交差点です。交差点のすぐ先に福井鉄道の市役所前駅(道路の中央にある島状の路面電車停留場)があり、反対側には足羽川にかかる幸橋。
路面電車にバスに車もオートバイも自転車も人も、お互い相手を気にしながら気を使いながら走っていくのが素敵です。眺めているだけで幸せ。
(事故になりますから当たり前ですけれど。)
福井に住んで改めて路面電車っていいなと思いました。街の血管のようです。街のいきいきを表現する乗り物だと思います。
福井鉄道へのあこがれが強過ぎてまだ乗車できていません。今となってはいつ乗っていいのか分からないでいます。
さて、前回の記事を読んでくれた友人から「モモちゃんのことだからまだキャンプ生活してるの?」という問い合わせが多かったのですが、
(*前回をご存じない方はこちらから。「福井のまちと、おにぎり、信号機」https://reallocal.jp/40521)
さすがにキャンプ生活は一旦終了し、水道・電気・ガスを開通してもらい、大量の段ボールを開梱して膨大な物を少しずつ収め、適当に快適に過ごしています。
ただ東京から引っ越す時に時間も体力もギリギリで、自分の持ち物の確認と整理ができなかったのがあまりに悔しくて、靴下やペンやクリップなど細々とした物まで、今の自分の持ち物を全て書き出すということをしています。いつ終わるやら。
生活するって面白いですね。
つづく…。