「At Home Works」林彩子さん
陶芸工房を閑静な住宅街に開いた作家
以前取材をさせていただいた、「今日から鎌倉に移ります。」鎌倉・湘南移住イベントの登 壇者であった陶芸家、林彩子さんの工房にお邪魔した。
貰った現地案内図を見ると江ノ電の湘南海岸公園駅をおりて住宅街の中にあるようだ。陶芸家の工房といえば人里離れた山奥のイメージがあったが、本当にこの住宅街の中に工房なんてあるのか?
道を進むに連れてそんな疑問が高まってきた。
駅から歩いて数分、目的の建物にたどり着いた。
ここが工房?今までの陶芸工房の印象とは違う、見た目はまるで隠れ家的おしゃれカフェのようだ。
建物の見た目は数十年を経過している賃貸で、入口とは反対側に江ノ電が通り、道路からも一段下がった土地。
今でこそ素敵に改装されているが、当時の事を振り返っていただくと、この場所には元々知り合いが住んでいたのだそう。
草も生え放題の状態でいわゆる古い日本家屋。「普通の人は少し敬遠してしまいそうな物件だと思いますよ」と林さん。
でも、オーナーの意向で改修を自由に行って良い事や近頃はあまり見なくなった木製のサッシが使われていること、お庭の使い方をじっくりイメージしたら、意外とかわいくなるのでは?とピンと来るものがあったそう。
普段からものづくりに携わる人間だからこそ、完成形を想像力で思い描きこの場所に工房を構えることを決めることができたのだろう。
しかし、初めから心配事がなかったわけではない。
窯は電気とガスの2種類あるが、なにせ15 時間程窯を炊き続けることになる。
音や煙など近隣に迷惑がかからないか。
長屋住宅なので当時は隣にも住まい手がいて、極薄の壁のおかげで、会話が丸聞こえの距離感である。
個展などを開けば隣の部屋にもそれなりに人の声が届けられてしまう。「長屋というのは近隣の方と仲良くしないと住むのは難しい」と実感したと林さん。
自宅は鎌倉のため、普段からずっと工房に居るわけではない。
さらに新たな生命を授かり少し仕事を休んでいた期間があった。
その日は大雪が降った翌日で大きなお腹で工房を訪れ道中も積もる雪を踏みしめて向かうほどであった。工房についたら雪かきしなきゃと思って現地についた。
すると、なんと工房の周りも敷地内も綺麗に「雪かき」がされているではないか。
慌てて近所の人に聞いてみると「入口までの斜面をおりて転んだりしたら大変だから」と。
雪かきや草むしり等、近所に助けてもらう度に何かお礼を返さなきゃ、恩返しをしなければという思いが募る気持ちとは裏腹に何も新参者で勝手がわからず萎縮するばかりになりそうだった。
そんなある日、近所のご婦人と立ち話をしていた時に、「いつもしてもらってばっかりで・・・」という林さんに「私に何か返すのじゃなくて、困った人がいれば助けてあげればいいのよ。それが恩返しと言うものですよ」 そう教えて下さったのだそう。
今までのモヤモヤしていた気持ちがとてもスッキリした気分であった。
「当時を振り返ると今でも嬉しくて涙が出てしまいます」と林さん。
それからは「すみません」 ではなく「ありがとう」と言うようにした。
ほとんどの移住のケースは自分が後から来た新参者となる。
近所の人が優しく接してくれればくれるほど「いつもすみません」となっていきがち。
「ありがとう」というコトバで対応し将来困った人に自分がしてもらったように接してあげることで地域のコミュニ ケーションの連鎖が紡がれていく。
そして「At Home Works」は江ノ電の住宅地の中にある近所に愛される陶芸工房となっている。
また、制作する上で近くに海があるのは良いリズムを生み出してくれているそう。「自然界のゆらぎ」を表現することを一つのテーマとしている林さんの作品は見る人を飽きさせない。
ワークショップも定期的に開催している。江ノ電に揺られ、海を見て、ホッとする空間で土にふれる体験が感動的。
これからも林さん率いる工房「At Home Works」から目が離せない。
屋号 | At Home Works |
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URL | HP: Facebook: https://www.facebook.com/AtHomeWorks twitter: https://twitter.com/athomeworks instagram: |
住所 | 神奈川県藤沢市片瀬4-3-1 |
備考 | アトリエショップ 営業日: 水・木・土 11:00~17:00
アクセス: JR・小田急藤沢駅、またはJR鎌倉駅から江ノ電にのり、「湘南海岸公園」駅で下車。藤沢寄り出口から徒歩7分
連絡先: |