real local 金沢「工芸建築」展 総合監修・秋元雄史さん - reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【インタビュー】

「工芸建築」展 総合監修・秋元雄史さん

工芸作家と建築家の“無謀な”試み

2017.11.06

今年で2回目となる「金沢21世紀工芸祭(開催中~11/26)」。そのコンテンツのひとつとして「工芸建築」展が11月7日~19日に行われる。これまで全く別のものとして捉えられてきた「工芸」と「建築」を組み合わせた初の試みとなる。総合監修を務める秋元雄史さんに聞いた。

「工芸建築」展 総合監修・秋元雄史さん
<秋元雄史プロフィール> 東京藝術大学大学美術館館長・教授/金沢21世紀美術館特任館長。1991年よりベネッセアートサイト直島のアートプロジェクトに関わる。2007年より10年間、金沢21世紀美術館館長を務める。現代美術館ながら「金沢・世界工芸トリエンナーレ」や「工芸未来派」展など、工芸へのアプローチを続け、新しい動きを生み出した。著書に『日本列島「現代アート」を旅する』(小学館新書)、『工芸未来派 アート化する新しい工芸』(六耀社)、『おどろきの金沢』(講談社+α新書)など。

 

予測がつかないおもしろさ

今回の「工芸建築」展。展示に与えられたお題は「建築を、ひとつの工芸として考える」。工芸作家と建築家がそれぞれの“工芸建築”をぶつけ合う。秋元さんもそれぞれの作品がどのようなものになるのか、まだ予測がつかないという。

「ああこういうのもあるのか!があったらおもしろい。変な話、ただ空間があって、ここで花を活けるとか、皿はこれでここで食事をするとか、それを書き綴ったものを『工芸建築』と主張する展示もあっていい。ある作家にとっての“建築”は、暮らしの中の具体的な行動の集積だった、とかでもいいわけだよね」

「工芸建築」展 総合監修・秋元雄史さん
〈アトリエ・天工人〉主宰の建築家・山下保博さんや陶芸家の中村卓夫さん、〈SIMPLICITY〉代表の緒方慎一郎さんら、10名の工芸作家、建築家などが参加する。

 

金沢で「工芸」と向き合って

今回の催しは、この10年間秋元さんが取り組んできた工芸へのアプローチと通じている。そもそも秋元さんが工芸に深く関わるきっかけは、2007年金沢21世紀美術館館長就任時、前・山出市長から「工芸を大切にしてほしい」というミッションを与えられたことだった。

「加賀藩前田家の時代から300年以上工芸を守り育ててきた金沢で、市の文化政策として『工芸』が最も重要なテーマであることは当然。たとえ現代美術館であっても、金沢では避けられないのが『工芸』だよね」

“無理難題”とも言えるミッションを受けた秋元さんは、2010年第1回金沢・世界工芸トリエンナーレを開催することに。第1回のテーマは「工芸的ネットワーキング」。現代アートからデザイン、ファッションまで、世界的なキュレーターたちが、それぞれに“工芸的な”と形容できると思うものを集め、展示した。

「工芸建築」展 総合監修・秋元雄史さん
「第1回 金沢・世界工芸トリエンナーレ」会場の様子
手前作品:橋本真之《果樹園―果実の中の木もれ陽、木もれ陽の中の果実》1978-88
写真:金沢・世界工芸トリエンナーレ開催委員会提供
「工芸建築」展 総合監修・秋元雄史さん
キュレーター秋元雄史のセクション/コンセプト「工芸、デザイン、現代美術から見る工芸的技術と展開」
写真:金沢・世界工芸トリエンナーレ開催委員会提供

「当時の工芸は、細分化し過ぎちゃってて、外から見たときに全体像が捉えられず、何が工芸なのかよくわからないという感じがあって。その課題を解決しようと“工芸的ネットワーキング”をやったわけ。工芸の可能性を広げていく試みだった」

そこには、秋元さんが金沢で養った工芸観がある。

「俺は、工芸の本質は、結果として出てくる工芸作品の姿という以上に、クオリティーを追求していく技術体系なんだろうなと思っていて。ハードじゃなくてソフトというか、モノではなくて“ある姿勢”というか。平たく言えば技術なんだけど、そこに哲学的な価値観が含まれたもの。だとすれば“工芸的”なものというのは、現代アートだったりデザインだとか、いろんなものの中にもあるんじゃないかと思って」

 

「工芸建築」が生み出す“文脈”

では、なぜその「工芸的ネットワーキング」には、建築はなかったのだろうか。そして、なぜ今なのか。

「建築は、工芸からはものすごく遠く見えて、『工芸的ネットワーキング』の時は扱えなかった。ただ建築と工芸を組み合わせようとするのでは、工芸作品をドアノブに使うとか、工芸が建築の一部になって終わり、ということになりかねない。しかしこの5年ほどずっと工芸作家や建築家の皆さんと『工芸建築』という言葉を囲んで議論してきたんだよね。それでずっと話せてるってことは、『工芸建築』には何かあるんだろうと」

「建築ってスケールもでっかいし、影響力も大きいと思うんだよね。これまで工芸作品として見なされてきたものには、1枚のお皿とかそれくらいのスケールのものが多いけど、それが1つの建築をつくるっていうスケールになると、また違う文脈が生まれるよね。その一方で、建築も、有名建築家の建築だからすごい、とされる時代は終わりを告げ始めている気がしていて、別の文脈づくりをしていかないといけない。その文脈のひとつとして、“工芸的”な姿勢というものがあるんじゃないかと思う」

ただ、「工芸建築」という言葉はまだ耳馴染みがなく、工芸作家でも建築家でもない私にとっては、どこか遠い話に聞こえてしまうのですが…。

「正直、まだ投げかけをするだけで精いっぱいでどういうことになるのか俺たちも想像つかない状況だからね(笑)。でも、一般の人たちが『工芸建築』の何を面白がってもらえるかなあと想像すると、やっぱり生活とか暮らしだと思うんだよ。暮らしの思考を具体的に形にしていくもののひとつに、工芸もあるんじゃない?それから建築も、より個人の趣味とかこだわりが入り込んだ家というのが『工芸建築』から見えてくるかも。見る人それぞれに生活との接点から面白がってもらえたら」

秋元さん自身が、今回の「工芸建築」展に期待することは何ですか?

「課題が見えたらいいな。答えがあるわけじゃなくて、そのことを考えているうちに面白いことができればいい。そのための無謀な試みです(笑)」

※秋元さんと参加作家たちが、今回の展示を受けて議論するトークショーもあります。

『工芸建築の魅力と可能性について』

日時:11月17日(金)19:00~21:00

定員:80名(要予約)

参加費:一般4,000円(飲食込み)

モデレーター:秋元雄史・金沢21世紀工芸祭総合監修

スピーカー:「工芸建築」展参加作家

お申し込み先:https://goo.gl/XXKNhD

お問い合わせ:金沢21世紀工芸祭実行委員会(株式会社ノエチカ内)076-223-3580(平日9:00~18:00)

日時

2017年11月7日(火)~11月19日(日)10:00~18:00(最終日は17:00まで)

会場

金沢21世紀美術館 市民ギャラリー B1・B3

備考

お問い合わせ
金沢21世紀工芸祭実行委員会(株式会社ノエチカ内)076-223-3580(平日9:00~18:00)

料金

入場無料

URL

http://21c-kogei.jp/contents/kogei-architecture-exhibition/

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