「マルシェを続けよう」レポート
ゲストはEAT LOCAL KOBE FARMERS MARKET 小泉寛明氏
10月18日にBOTA MEETING vol.3 が開催されました。
BOTA MEETINGとは、全国各地からゲストをお招きして、まちづくりについて語り合うイベントシリーズ。vol.2の「マルシェをはじめよう」に続き、vol.3のテーマは「マルシェをつづけよう」として、神戸から「EAT LOCAL KOBE FARMERS MARKET」の小泉寛明氏にお越しいただきました。
「神戸R不動産」のディレクターをつとめ、「リアルローカル」の立ち上げメンバーであり、EAT LOCAL KOBE FARMERS MARKETの旗振り役でもある小泉さん。「活動範囲は自転車10分圏内です」と語る通り、神戸市中央区を中心とした超エリア特化型のディベロッパーで、神戸をおもしろくする仕掛け人です。
EAT LOCAL KOBE FARMERS MARKETは、神戸市の公園「東遊園地」にて、2015年に産声をあげました。
実験的に開催された第1回から徐々に地域に根付き、2016年から冬を除いてほぼ毎週の開催、2017年からは通年で毎週開催されています。
イベント会場には、地域のマルシェやイベント運営者、まちづくりに感心を寄せる人たちが県外からも集まり、客席からの質疑や、懇親会での盛んな意見交換など、熱く貴重な一夜となりました。本記事では、小泉さんによるトークの一部をご紹介します。
EAT LOCAL KOBE FARMERS MARKETが生まれるまで
小泉さん:すべての原点は、神戸市が抱えるひとつの悩みにありました。神戸産の野菜の認知不足です。都市部と農村部との意識の差を埋めるために、神戸市が農家を紹介するウェブサイト「EAT LOCAL KOBE」を立ち上げることになり、その運営を受託することになりました。
取材ではユニークで魅力的な農家との出会いがたくさんありました。そこで、農家のみなさんが一堂に会する場をつくれないかと考え、第1回EAT LOCAL KOBE FARMERS MARKETを開催することになったのです。
ファーマーズマーケットの事例を学ぶため、神戸市の方々とアメリカオレゴン州ポートランドのファーマーズマーケット事務局を訪ね、そこで2つのポイントを伝授されました。
1つ目は「大きな木の下でやること」。木があるところに人は集まります。駐車場や空き地ではダメ。大きな木は日差しや雨からも守ってくれる。
2つ目は「毎週続けてやること」。実際に毎週の開催が定着したいま、多くのことが見えてきました。
毎週やることの効果
ファーマーズマーケットの主役は農家です。普段は黙々と野菜をつくる農家が孤独から開放され、農法やタネや苗、害虫対策など情報交換が生まれ、年齢やジャンルの垣根を超えて、農家同士に繋がりが生まれたことがなによりの成果でした。
ファーマーズマーケットは回数を積み重ねるほどビジネスになっていきます。なかには売り上げの6割をファーマーズマーケットから生んでいる農家もいるほど。若い農家は積極的に加工品をつくったり、自分の野菜を使った朝ごはんを提供するなどして、大きな収入源になっています。
毎週続けられるのはなぜ?
続くことの理由はただひとつ、商品の主役が「野菜」だから(現在、30店舗のうち農家は6割、残りは食品や物販)。
野菜を買うことは日常行為であり、地域の人のルーティーンに組み込まれたことで、しっかりとお客さんがついてくれました。家族で来てくれる人も多いですね。
雨が降っても売り上げが大きく落ることはありません。雨の中、傘をさしながらもお客さんが来てくれる光景には感動してしまいます。
運営のコツ
設営の仕組み化・簡略化がポイントです。搬入の手間を省くため、神戸市の公園課が特別に軽トラを会場に乗り入れることを許可してくださいました。軽トラの上に黒板を起こして野菜を並べれば、15分でお店になります。
飲食の出店は毎回2店舗までに絞っており、普段はケータリングやカートで販売していない地元のレストランやカフェに依頼をして、旬やローカルをテーマに朝ごはんを提供してもらいます。マーケットをきっかけに農家とレストランとの取引が生まれることもあり、街全体での地産地消が促されていくのが嬉しいですね。
画像提供:EAT LOCAL KOBE
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山形市でも今年7月に初めての「シネマ通りマルシェ」が開催され、多くの人で賑わった1日となりました。それを日常風景にすることの意義、そして「続けること」という次の課題に対する、具体的なヒントがふんだんに共有された貴重なトークでした。
農業が盛んで、食のクオリティが高いといわれる山形。この土地で暮らす豊かさを引き立てるひとつの切り口として、ファーマーズマーケットやマルシェの可能性を強く感じた2時間でもありました。