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地方のまちなかで店を開く、その課題と未来

28歳でカフェ開業〈BOTA coffee〉店主 佐藤英人さん

地方のまちなかで店を開く、その課題と未来
山形市七日町のシネマ通りにあるカフェ〈BOTA coffee〉

かつては栄えていたという山形市の七日町。いまでは空き物件が目立ち、人通りは決して多くありません。そんな中、メインの七日町通りから一本裏に入ったシネマ通りで、少しずつ変化が起きはじめています。

それは小さく熱いムーブメント。エリアリノベーションとして、「点」から変化を起こし、それが集まって大きな面(まち全体)へ広がるという構想です。その点のひとつが〈とんがりビル〉であり、〈BOTA coffee〉なのです。

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BOTA coffee 店主の佐藤英人さんは、生まれも育ちも山形市。東北芸術工科大学の建築・環境デザイン学科を卒業後、一度は東京へ行くも山形に戻り、地元の不動産会社に就職。そして当時28歳、2015年12月に老舗の傘屋だった物件をリノベーションして
BOTA coffeeを立ち上げました。

オープンからちょうど1年がたった今、地方で店を開くことについて、その体験と感じたことを率直にお話いただきました。
 

──地方ではドーナツ化現象が深刻と言われるなか、あえて中心街で店を開いたのはなぜですか?

まちと関わりたいという気持ちが大きかったんです。大学時代は馬場正尊さんのゼミで、まちを舞台にした実践的なリノベーションや空間づくりを学びました。はじめから店づくりをゴールとせず、まちなかで公共空間をつくりたいと考えていたんです。

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ビジネス的な戦略もありました。郊外に店を出すと、そこを目的に車で移動しなきゃいけないですよね。まちなかだったら、近隣に住む人や働く人の生活の延長上にいられるんです。お店をオープンして1年、少しずつ常連さんが増えていて、その多くは買い物ついでに、職場からの帰り道に歩いて立ち寄っていただいています。

──BOTA coffeeは、エリアリノベーションの大きな役割を担っていますよね。オープン当初といまで、シネマ通りに変化は感じますか?

お隣のお土産屋〈尚美堂〉さんや、周りの人から「若い人がたくさん歩くようになったね」と言われます。いま同じシネマ通りで老舗の書店〈郁文堂〉を学生がリノベーションするプロジェクトも進んでいるし、少しづつ変化が起き始めている気がしますね。

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ご近所の店舗との交流もありますよ。二軒隣の喫茶店〈白十字〉で人が足りないというので、BOTAのスタッフを派遣したりして。

──地域に受け入れられているのですね

うれしいことですよね。老舗の傘屋さんだったこの物件のバックグラウンドのおかげかもしれません。地元の人の記憶に〈洋傘のスズキ〉がずっと残っていて、懐かしがって入って来てくれる年配の方もいます。そういうとき、看板を外さなくてよかったと思いますね。しっかりストーリーを継承させてもらえてよかったです。

洋傘のスズキのオーナーさん自身も、まちづくりに理解があって、BOTAのことを応援してくれました。工事期間中は家賃をタダにしていただけたし、家賃の交渉にも応じていただけて、本当にぼくは恵まれていると思います。

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「洋傘のスズキ」の看板を生かしたまま、リノベーションした

──大家さんとの関係が成功のカギ?

それはかなり大切だと思いますよ。プレーヤー(店をやる側)と物件オーナーとの距離がもっと近くなったらいいですよね。オーナーと直接話すことで、スムーズにコトが進んだり、解決できる問題がたくさんあるんです。

もちろんぼくたちプレーヤーのやる気や商売スキルも重要ですが、物件オーナーさんたちの意識が変わらないとまちは変わりません。プレーヤーとオーナーさんの両方が育っていくことが大切なんだと思います。

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山形の不動産事情はかなり保守的で、家賃を下げることにとてもネガティブです。ひとりの大家さんが同じエリアにいくつも物件を持っていることが多く、空き物件だけ値段を下げることはできない。大切な物件ですし、若い人に安く貸しても儲からないし、面倒と感じる。その事情もすごく理解できるんです。

でも、お金だけでまちは動きません。チャレンジしたいけど資金不足な若い人ってけっこういます。そういうプレーヤーの卵にチャンスを与えてもらいたいんです。

空室を高値のまま放置せず、たとえば全体的に値下げして空室を減らして、トータルで家賃収入があがる、という大きい枠組みで考えてもらえたらいいのですが…。でもオーナーさんにも事情がありますしね。なかなか根深い問題です。

──移住に興味はあるけど、仕事がないという声が多いそうです。佐藤さんのように地域でビジネスを立ち上げるのもひとつの方法だと思いますが、山形での起業においてアドバイスはありますか?

ここは保守的な土地なので、最初からすべて自分でやろうとせずに、まずは誰かの事業にのっかることもありだと思いますよ。

BOTAではアルバイトスタッフが数人いるのですが、建築、グラフィック、金工、ライターなど、自分でなにかを生み出せる人たちを採用しています。

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アルバイトとして働く金工作家さんが手がけた看板

金工ができる子は自分でつくったアクセサリーをお店の入り口に置いて販売しているし、BOTAで出会ったお客さんから仕事が舞い込んできています。もちろん、そこでの収益はぼくはいただきません。

最初から自分の工房や店を持つことはハードルが高いと思うので、まずはBOTAを実験の場として活用してもらっているんです。そういった、気軽にチャレンジができる場所、相談して助けてもらえる人を見つけるといいかもしれませんね。

ダメだったら軌道修正すればいいし、小さいことでもいいので、まずアクションを起こすことが大切だと思います。

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2階には多目的スペースの〈BOTA theater〉がある

──ここはコーヒーを飲むだけではなく、いろんなコトが生まれる場所になっていますね

カフェだけにとどまらない場所にしたかったんです。実は2階に広いスペースがあり、それもこの物件の魅力でした。

〈BOTA theater〉という名前ですが、映画だけでなく、いろんな需要に対応できる空間です。山形国際ドキュメンタリー映画祭で使っていただいたり、山形ビエンナーレでは荻窪の書店〈6次元〉のサテライト版として〈7次元〉がオープンしました。

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山形ビエンナーレでは〈7次元〉としてBOTA theaterが使用された(Photo by BOTA coffee)

将来的にはゲストハウスもつくってみたいんですよね。山形市には若い人が気軽に泊まれて情報交換できる場所が必要だと思っていて。市内には唯一〈ミンタロハット〉というゲストハウスがあり、とても貴重な存在。あとはチェーンのビジネスホテルか、高級な温泉旅館しかないのが現状です。

BOTAには県外からもお客さんが来てくれて、おすすめの場所をよく聞かれます。もし市内にいいゲストハウスがあれば、もっと長く滞在してもらえて、もっと山形のいいところを知ってもらえる。

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いま古民家を探しているんです。古民家って定期的に風を通さないといけないし、維持するだけですごく労力もお金もかかるんですよね。だけど壊すなんて文化的にももったいない。

もし安く貸してもらえたり、手放したい人がいれば、その古民家をうまく活用して山形に人を呼び込む拠点にしたいです。山形市のまちづくり政策も進んでいるし、周りの方の知恵をお借りしながら、なんとか実現させたいですね。

──佐藤さんが手がけるゲストハウスが楽しみです。今日はありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

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「頭で考えすぎず、とりあえずやってみるタイプなんです」と笑って話す佐藤さん。言葉や表情から垣間見える、山形というまちへの思い。「まちづくり」とはよく聞くけれど、そこで本当に必要なものってなんだろう。その答えが見えた気がしました。

>>〈BOTA coffee〉のリノベ空間と深煎りコーヒーのヒミツはこちら

撮影:根岸功

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屋号

BOTA coffee

URL

http://bota-coffee.com/

住所

山形県山形市七日町2-7-18

TEL

023-666-6659

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