【長浜】「ながはまトレジャーハンティング」
ながはまエリアリノベーション事業の第2弾としてイベント「ながはまトレジャーハンティング」が2018年10月8日に開催されました!
滋賀県長浜市は琵琶湖の北東に位置する歴史と伝統あるまち。長浜観光の中心となっている黒壁スクエアは、明治33年に建てられた洋風土蔵建造物で、昭和62年に解体案が浮上した際、市民から保存を望む強い声が上がり、保存活用することになりました。以来、ここをまちの活性化拠点とするなど、古い建物を活かした街並みづくりで注目されてきた地域です。
2018年に始まった「ながはまエリアリノベーション事業」は、長浜市に存在する自然環境、歴史、観光、そして暮らす人などの魅力的地域資産の価値を、まち歩きワークショップなどを行いながら認識し、「これからのながはま」を描き実践していく取り組みです。8月に行われたキックオフ講演会に続き、10月8日、第2弾として、実際にまちを歩いて「お宝」を探す「ながはまトレジャーハンティング」が行われました。
グループに分かれて、まちに眠る「お宝」探し
連休最後の体育の日、すっきりとした青空の広がる秋晴れの中、「ながはまトレジャーハンティング」がスタートしました。まずは株式会社オープン・エー堀越より、まちのお宝探しの基本となるエリアリノベーションの考え方について、復習も兼ねた簡単な解説がありました。
エリアリノベーションとは、ひとつひとつの建物をリノベーションするだけでなく、そうした点をつなげて連続的に広げながら、地域に面としての価値を新たに付加していく仕組みのこと。以前のまちづくりは行政がプランを策定して建築物をつくり、最後に事業者を募集することがほとんどでした。しかし、現在ではその逆、つまり事業を運営する者が「こんなことをしたい・こんなまちならいいな」と発想し、その考えを波及させ周りに広げていく、ボトムアップ型の取り組みが多くなってきています。
今回のトレジャーハンティングは、参加者のみなさんにまちに対する「理想」と「欲」を持ってもらう企画とも言えます。ものごとの基礎には欲がある。こんなことやりたい、あんなことやりたいという欲から妄想を広げ、そこから具体化に向けて走り始める。「今日やることはまちのお宝を見つけ、みなさんの欲に火をつけることが目標です!」(堀越)。
トレジャーハンティングでいうトレジャー=お宝とは、空き家などの遊休不動産や、当たり前すぎて意識できないまちの長所のこと。公共R不動産のメンバーなど、まちのリノベーション事例を豊富に知るサポーターと共に歩いて、見逃しがちなまちの価値を捉え直していきます。その際に大事なポイントは「面白がる」こと。一見ダメで使えないように見えるものも面白がってそこから価値を見出し、未来の暮らしを想像していくことが大切だというアドバイスがありました。
長浜市役所産業観光部 長浜駅周辺まちなか活性化室長 前嶌 誠さんからご挨拶と激励があったのち、早速グループに分かれて、まちのお宝探しに出発しました。
今回は、長浜のまちなかでも少し属性が違う2つのエリアをA、Bと分け、ひとつのエリアにつき2チームが担当、合計4グループで探索しました。Aエリアは長浜駅近くで、観光で賑わう呉服町周辺、黒壁スクエアから少し奥に入った辺り。Bエリアは駅から少し離れた辺りで、米川と八幡川が流れる静かな住宅街。各エリアでまちのお宝になりそうな遊休不動産が対象物件として紹介され、参加者たちは興奮気味に2階に上ったり裏庭を見てみたり、お宝探しに夢中になっていきました。
発表に向け各チームでラストスパート
まちを探検するには食も重要!とランチタイムもグループごとに地元の美味しい食を発掘し楽しんでいました。その後、会場に戻りグループ単位での成果発表に向けて準備。付箋やホワイトボードを駆使してそれぞれが気づいた長浜のまちのいいところ=まちの資産を洗い出し、エリアの可能性を探していきます。
各チームのみなさんは、サポーターのアドバイスも得つつ、パソコンやタブレットを使ってプレゼンで発表する内容を詰めていきます。スケッチする人、プレゼン内容に合わせ画像を探す人。 時折おやつタイムなど挟みつつもみなさん真剣そのもの。あと1時間、30分とタイムリミットが迫る中、制限時間に追われながらも、チームで分担して作業を進めていきました。
グループでの成果発表タイム 聴講者も多く訪れました
数時間の作業ののち、夕方5時過ぎから第2部がスタート。まち歩きメンバー以外に、第2部にはさらに15名以上の地元の方も加わり、会場のボルテージは一気に上がっていきました。各グループ10分の持ち時間で発表し、その後、担当以外のチームサポーター3名からそれぞれ講評をいただきました。
発表順はジャンケンで決定、トップバッターとなったのは米川と八幡川が流れる静かな住宅街のBエリアを担当したB1チーム。「水路地の日常」というタイトルで発表。まちの張り巡らされている水路に着目しながらエリアを有効活用する提案を行いました。
具体的なプランとして、水路の周辺を巡るきっかけともなるように、街なかにさまざまなスポットを点在させることを提案しました。コーヒースタンドや地元の食材を味わえる食堂。古すぎて改築費用がかかる物件はスケルトンにしてコンセプトを尖らせたギャラリー。また、細い路地が中心で駐車場用地がない点を逆手に取って、自転車の活用を推進するなど、短所を長所に変えることも提示しました。
講評では、まち歩きは目的地づくりが重要で、普段は行かない路地を通らせるような仕掛けをつくることで、アクティビティー感覚でまち歩きができるかもしれない!とのアドバイスがありました。また地元の方からは、「水路は長浜の特徴でもあり、鮎やホタルもいる自然の場所であるが、住民にとっては雪捨て場になるなど生活に密着した場所でもある。洪水の危険性を回避する仕組みを整備するなどの点を踏まえた上で、今以上に活用できるようになるのが望ましい」とのコメントも。
ソフト面から変えていけることは
続いてB2チームは「暮らしの編集」というタイトルで発表。
対象エリアはまちの中心部で曳山祭りにも参加する地域。この歴史あるエリアにおいて今までとは違う物件の使い方を提示することで、今まで来なかった人々が訪れやすくなる状況を作り出そうと試みました。具体的には、今回の対象物件となった昔ながらの町家をそれぞれ宿泊施設、バーなどにすることで、町の歴史や文化に接触するタッチポイントを増やそうというものでした。
そのひとつ、水辺にある稲荷神社を利用して「おいなりバーを経営する」というアイデアでは、バー経営者が神社の管理までを請け負ったら良いのでは?という提案がなされ、これにはサポーター陣も感心していました。暮らしの編集という視点で見てみると、建物だけではなくソフト面でも変えていけることがたくさんありそうです。
一方、駅や観光スポットには近いけれど、人通りは少なめの旧市街地Aエリア。3番目の発表となったA2チームは、居住者の年齢層が高い旧市街地の中で、若い世代が暮らすためのあり方を表す言葉として「うらまち暮らし」と名づけて発表しました。
まちで暮らす方々にインタビューを試み、それによって、住人が高齢化していく中心地近くの旧市街地と、若い世代が主に住まう新興住宅地に二極化していく問題があることがわかりました。そこで、見学した町家のひとつを30代移住夫婦とその子どもたちが住むという設定にしてみました。町家をリノベーションし、住みながら小さなデリカフェを経営するという職住一体型の提案。旧市街地でも若い世代が住み、子育てもできる環境を整えるための手法が模索されていました。
講評では「具体的なモデルがあってわかりやすい」「まちなかに若い家族が住むと曳山祭りの参加者も増えて、みんなが喜ぶ」といったコメントがありました。
最後の発表となったA1チーム。メンバーの中に長浜でのゲストハウス運営を考えている人がいたのですが、40年使われていないという古い物件をベースに、何と「泊まらせないゲストハウス」というコンセプトを発表。
「朝焼けモーニング」「ファミリーバーベキュー」などと命名されたサービスメニューに、聴講者も興味津々。講評では、「長浜では、南北に走る線路によって観光地が東、湖が西、というように分断されていて意外と観光客が琵琶湖で遊ばないんですよね」と現状についての説明があった上で、琵琶湖で遊ぶきっかけづくりとしてとても良い提案とコメントされていました。
次は1泊2日の「まちづくりCAMP」を開催します!
今回のイベントは、当日の朝から数時間まちを歩いて物件見学し、その後すぐ出会ったばかりのチームメンバーとプレゼン発表をするという、かなりハードなスケジュールでしたが、4チームともそれぞれにユニークな提案をしてくれました。その視点の鋭さと提案のクオリティーの高さに、長浜市役所の関係者の方々も驚きの声を挙げておられました。
空き物件を利用した具体的な提案で盛り上がった今回の「ながはまトレジャーハンティング」ですが、アイデアをさらに具体化するための動きとして、2019年1月12日から13日に、今度は1泊2日で「まちづくりCAMP」を開催します!自分の欲しい暮らしを実現させたい方、一緒に夢を実現する仲間に出会いたい方は、ぜひ次のステップ「まちづくりCAMP」に是非ご参加ください! 参加お申込みは、11月上旬より受け付け予定です。ぜひご参加ください!
text by 西村祐子/photo by 長浜ローカルフォト(田中香織、矢島絢子)
備考 | ながはまエリアリノベーション事業についてはこちらをご覧ください。 |
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