長居したくなる古本屋
神戸・元町「1003」
以前、real local 金沢の『「気の合う本屋」はインフラ』という記事がありました。本当にその通りだなと思います。
選書のセンスに信頼・共感できる書店が近くにあると、なんだか安心しますよね。
最近神戸に移住してきた私にとっては、「1003」がまさにそうでした。
「1003」(センサン、と読みます)は、神戸の中華街「南京町」から少し西に歩いた裏路地にあるセレクト書店。古本を中心に、一般書店で取り扱いのない新刊本や、ミニコミ、リトルプレスも扱っています。
店内ではビールやコーヒーを飲むこともできます。
下北沢「B&B」を筆頭に近年増えている「ビールの飲めるセレクト書店」や「本を買えるカフェ」ですが、神戸にはおそらくまだここしかありません(ご存知の方がいたら、教えてください)。
大きな窓からよく日光が入り、昼間からビールを飲みながら読書するには、ばっちりの環境です。居心地がよく、つい長居したくなってしまいます(ただし、椅子はありません)。
「仕事で疲れて一杯だけ飲んで帰りたいけど、飲み屋の隣席から漏れ聞こえる粗野な会話を(いつもはむしろ楽しめるけど)今日はあまり聞きたくないな」というような時にも、嬉しい存在です。
蔵書は決して多くなく、分野はわりと雑多ですが、そのセレクトにはなにか一本筋が通ってみえます。(良いセレクトショップって、そうですよね。)
中では「酒」と「民俗(学)」にまつわる本が多く、今後もより力を入れていきたいテーマとのこと。
『IKUNAS』(香川)、『kalas』(津)、『暮らしき』(倉敷)、『てくり』(盛岡)など、地方発のリトルプレスが充実しているのも特徴です。
雰囲気重視のおしゃれな本棚とも、主義主張が剥き出しな本棚とも違う「フレンドリーだけれど、気骨を秘めた本棚」が、ちょうど店主・奥村さんのキャラクターと重なります。
音楽を大音量でかけながらの営業「音楽の時間」や、参加者がオススメの「おいしそうな本」とつまみを持ち寄る会など、イベントもときどき開催されています。気になった方は、足を運んでみてはいかがでしょうか。(その際、ヒゲ・長髪・丸眼鏡で気の弱そうな30代男性がいたら、ぜひ声をかけてください。おそらく私です。)
なお、「1003」のある神戸・元町エリアは古書店が多く、それぞれにカラーの違う10軒以上が、歩ける範囲に店を構えています。
例えば、探偵小説に強い「うみねこ堂書林」は「1003」のすぐそば、また、元町駅の反対側には、ガチャガチャとした雰囲気が楽しい「トンカ書店」があります。
いろいろと巡って、あなたにとっての「気の合う本屋」を見つけてみてください。