鎌倉発、丘サーフミュージック。 local musicians file 002 | UPPON
東京以外を拠点に活動する、全国各地の「リアルなローカル・ミュージシャン」を紹介するシリーズ。
第2弾は、湘南・鎌倉の顔、ウッポンこと内堀敬介さん。
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小柄で丸顔、ハットと丸眼鏡がトレードマーク。
生まれも育ちも鎌倉だがサーフィンは苦手で、自らの音楽を「丘サーフミュージック」と呼んでいる。
「丘サーファーって言葉を、“サーフィンできないダメなやつ”から“陸でも自然の波に乗れるクールなやつ”に再定義したいんすよ」
「いや、でもほんとに、鎌倉って、海に入らなくても、街を歩いてるだけでサーフィンしてるような気分になる街で。ぶらぶら歩いてるのが波待ちで、そうしてるとふっと曲が浮かんだりして、そのときパドリングしてテイクオフする、みたいな」
そう言って照れる、ふざけているのか本気なのかわからないこの男が、ウッポンこと内堀敬介さんだ。
ウッポンさんは主に、ライブハウスではなく、地元のカフェや商店、市場、町の催事などでライブ活動を展開する、地域密着型のミュージシャンだ。
アルバム『Beginner』の収録曲には、「雨上がり(八雲神社)」、「The Carbohydrate(うどん屋とく彦)」といった具合に、全曲、鎌倉の地名・店名などのサブタイトルが付けられている。
「都内のライブハウスで演奏していた時期もあるんですけど、もっと、暮らしの中の音楽みたいなものをやりたくて」
8年ほど前、“地産地聴”を合言葉に、鎌倉の市場で、日曜の朝にライブを始めた。
次第に共感するミュージシャンや商店、お客さんが増え、音楽とマーケットのイベント「グリーンモーニング」へと発展。現在は会場を移し、3年ほど継続しているという。
「鎌倉のアーティスト、ものづくりをしている人、パン屋さんやお菓子屋さんとかが集まって、井戸端、寄り合いみたいな場所になってます。ここに来るとみんながいて、近況を報告し合うような」
「地産地聴はね、今となってはちょっとこだわり過ぎていたと思ってて。本当はどこで聴いてくれたっていいんですけど(笑)
ただ、土地によって、流れている時間が違う。季節ごとの日の当たり方とか、地形とか。そういうテロワールみたいなものが出てる音楽が好きだし、よそで聴いても“鎌倉だからこういう音楽が生まれたんだ”と感じられる音楽ができたらいいなー」
「UPPONS」と呼ばれる彼のバンドには、10人位のメンバーがいて、ライブのたびに「その日来れる人」で構成される。ティン・パン・アレーのような集合体方式だ。
メンバーのほとんどは鎌倉近辺に暮らしており、また、音楽以外に生業を持つ人が少なくない。
ウッポンさん自身も、鎌倉のメインストリート・若宮大路で、食堂「コバカバ」を営んでいる。
「音楽仲間にはカントリーやブルーグラスが好きな人が多いんだけど、カントリーやブルーグラスのルーツ、アパラチアン・ミュージックって、もともと、お金がなく住環境も過酷な人たちが、そういう状況で歌を歌ったり演奏したりして、それがささやかな励みや活力になってた、そこから受け継がれてきた音楽なんだよね。音楽専業の人はいないし、ショービジネスじゃ無い。
そういう、ヒットチャートと関係ない音楽のあり方に共鳴する人たちが、たしかに鎌倉には多いかもしれないですね」
日々の暮らしの中で、見たものや思ったことを音楽にし、音楽とともに生きる。他の仕事を持っていても、れっきとした“ミュージシャン”だ。
ウッポンさんをはじめ、鎌倉には、不思議とそんな人たちが集まっている。
近年は、“ローカル中年アイドル”のプロデュースも手掛けている。
鎌倉駅前でカフェを営む宇治香さんとアパレルショップを営む大竹茂夫さん、お隣同士の店主2人によるユニット「宇治茂夫」だ。
「忘年会の宴会芸の延長が、だんだん本気になってきて。福祉施設や盆踊りとコラボしたり、地元の少年野球チームから球団歌を作ってほしいとオファーが来たり。
彼らは長く店をやってきてて、街の顔だし、自営業者にとってはいわば、理想の上司みたいな存在。だから実際にアイドルなんですよ。
やってるうちに外から取材を受けたりして、街の広報部長みたいな意味合いも出てきました」
「宇治茂夫にしてもグリーンモーニングにしてもそうだけど、ここのところは気づけば地域活動が増えています。商店街の理事みたいなのもやってたり、青年部を復活させて、近所の大学からインターンを呼んでハロウィンイベントを開催したり。
むしろ自分の音楽が今あんまりエンジンかかってない(笑) 」
カジュアルで脱力した歌を作り、歌うウッポンさんだが、その活動の背景には、街や暮らしを見つめた、プリミティブで切実な音楽との向き合い方があった。
意外にも真面目な話をたくさん語ってくれたかと思えば、
「いやー、俺、根暗だからさ。最近根暗をもっと出してこうと思って」
と照れる。
鎌倉を訪れた際は、いや、訪れなくとも、ぜひ一度、この根暗な男の陽気な音楽に、耳を傾けてみてほしい。
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