【香川】地域を見守る、離島のレストラン 島キッチン/豊島
「そろそろ島に帰ろうかな」
2010年、香川県の離島、豊島にUターンしてから、レストランの店長を7年間続けている藤崎恵実さん。その店、「島キッチン」は、同年に行われた瀬戸内国際芸術祭の「作品」として生まれた。古い民家を改装し、島の食材を使ってプロのシェフのアドバイスのもと開発したメニューを、島のお母さんたちが調理。「食とアートで人が出会う場」というコンセプトだ。
岡山市で医療事務の仕事に就いていた恵実さんは、国際的な芸術祭が故郷の小さな島で始まろうとしていることは知らなかったそうだ。
「当時父親が自治会長をしていて、芸術祭に関わることになって、母親もその関係もあって、『島キッチン』立ち上げの中心となって動いていたの」
ご両親の芸術祭への関わりがきっかけとなり、Uターンのタイミングで、「島キッチン」でボランティアをすることになった恵実さん。3か月の芸術祭の間、初代の店長の女性と二人三脚でその運営に奮闘した。2010年の芸術祭の会期終了後、継続運営する話が持ち上がり、恵実さんが店長に抜擢された。
料理に使う野菜の大半が島の方々が育てたもの。取引先は12、3軒。豊島出身とは言え、島民全員を知っているわけではない。親戚のおじさんから「○○さんが野菜いらんか言うとったよ」と聞いて、直接足を運んで取引を広げるなどの努力を行ってきた。同時期に、どこの畑からも同じような野菜が大量に届くこともある。漁師から魚をいただくこともある。それらを島のお母さんが、長年の島の主婦の経験を活かし、美味しい料理へと変えていく。「代金はいらない」と、大量に実った梅をただでいただいたときは、梅シロップに変えてお返しするなど、お金ではない形で感謝を表現するようにしているそうだ。
レストランとしての「島キッチン」の客席を埋める大半は、観光客。島に一番観光客が来るのは3年に1度の芸術祭。次の芸術祭に、今元気に働いている島のお母さんたちも年を重ね、今と同じように働けるとは限らない。
「体力的にしんどいという人も出てきていて。2019年の芸術祭のことを考えて、今からちゃんとスタッフを探さないとなって思っています」
島キッチンのスタッフ内に現れている高齢化問題は、島全体の課題でもある。島の高齢化問題をカバーすべく生まれた、月に1度の「お惣菜の日」。島内のお年寄りにとって、お待ちかねの日。一人暮らしだとつくるのがおっくうなコロッケなどの揚げ物を中心に惣菜の予約を受け、自宅まで宅配するサービスだ。
「たまたまだけど、5年くらい前までうちの叔母が同じようなことやっていたんです。一人暮らしのおばあちゃんに、ほぼボランティアでお弁当をつくって配達していました。叔母が惣菜配達を辞めるって聞いて、そういうニーズがあるんだったらやってみようかって。結構一人暮らしの食生活って乱れているみたいで。ちょっとでも負担が軽減されたり、お年寄りの楽しみが出来るんだったらやる意味があるなと」
常連の方からの注文がないときは、恵実さんから連絡をすることも。電話でのやり取りで、体調などに変わりはないか、元気にされているか、お年寄りの体調の変化に気づくことができる。島のセーフティーネットとしての役割も担っている。
お惣菜配達は、手間がかかる割に利益が出づらい。それでも、離島で営みをするからこそ、やるべきこと、できることを恵実さんは心得ている。
豊島を訪れる際は、是非、「島キッチン」に立ち寄ってランチをどうぞ。
カウンターに座って、キッチンでの恵実さんや島のお母さんとやりとりを眺めながら、食事の準備を待ってみるのはいかがだろう。
観光地としてだけでない、暮らしの場としての豊島の一端に触れられるかもしれない。
名称 | 島キッチン |
---|---|
業種 | レストラン |
URL | |
住所 | 香川県小豆郡土庄町豊島唐櫃1061 |
TEL | 0879-68-3771 |
営業時間 | 11:00~16:00 (Food L.O. 14:00 / Drink L.O. 15:30) |
定休日 | webサイトで確認してください |
アクセス | 港のシャトルバスより清水前下車 徒歩3分(運行時間はご確認ください) |
料金 | 島キッチンセット(1500円)など |