本吉裕之さんの「山形でしたい5つのこと」
風景や食べ物の魅力を引き出す企画力
専門家のみなさんが独自の視点で山形市を大解剖。「山形でしたい5つのこと」として、オリジナルのToDoリストを作成していただくシリーズです。
第三回におたずねしたのは、ツーリズムと企画のスペシャリストであり、東北芸術工科大学デザイン工学部 企画構想学科准教授の本吉裕之さん。
「山形のツーリズムは飛躍する」とうかがった前編に続き、今回は本吉さんの「山形でしたい5つのこと」をご紹介します。
本吉さんならではの視点で、馴染みの場所や食べ物がよりおもしろく新鮮に、そして、力強く感じます。
観光ブックには載らない、ニッチでディープな山形市の素顔。まちの魅力の再発見に、個性派な旅のプランにご活用ください。
1. 山形のパワーが集まる「線」の上に立つ
本吉さん:芸工大には能舞台があって、校舎に対して斜めを向いて建っているのですが、その理由を調べたときは、はっと胸を突かれました。芸工大は月山の頂上と蔵王の御釜を結んだ一直線上に建てられており、能舞台の鬼瓦の視線は月山頂上を見ています。舌を出している鬼瓦が、御釜と月山の霊気を全身に取り込み、学生に”気”を送っているわけですね。
安っぽく“パワースポット”とは言いたくないのですが、ここは間違いなく、山形が持つ神聖さや力強さが感じられる場所です。日常的な忙しさに紛れて、ただただ時間が流れていってしまう学生が多いと思います。そんなときは月山と御釜をつなぐ「線」の上に立って、山形のパワーを感じながら自分と対話してみてほしいです。
2. 出羽三山をもっと身近に
山形県内には湯殿山派の神社や、月山と名の付く神社が数多くあり、芸工大のすぐ近くにも「月山神社」があります。遠くて行けない人も多くいたので、地域の人たちで協力して分霊した神社を建てて出羽三山へのお参りを達成していたそうです。ちなみに山形市には、文翔館の隣に「里之宮 湯殿山神社」がありますね。湯殿山はかつて女性禁制であり、明治10年に解禁されたそうですよ。
私は仕事柄全国を回っていますが、ある時からご朱印を集めるようになりました。御朱印には、日付を入れて頂けます。筆で美しく書いていただている間の緊張感や、集めた御朱印を見ながら、訪れた時からの時の流れを感じつつ、お願い事が叶っているかを振り返る時間も好きですね。
3. のし梅の“掛け算”を考える
のし梅と初めて出会ったのは6年ほど前、東京のとあるミシュラン星付きレストランでした。食後のデザートに金色の線が2つのっていて、見た目がとても美しく、食べてみたらしっかりした果実の味。これは何ですかと聞いてみたら、細くスライスされた「のし梅」だったんです。山形の伝統的な甘味と洋菓子との掛け算ですね。
のし梅は組み合わせ次第で、色々なデザートにも合うんじゃないかと思います。適度な酸味とさわやかさがあるし、見た目にも美しい。私も今、とあるプロジェクトで活用しようと企画していますが、皆さんも自分流の新しい食べ方を考えてみるのはどうでしょう。
4. 蔵王の新しい切り口「ジンギスカン」
蔵王がジンギスカン発祥地という説があります。はじめ聞いたときは驚いたのですが、蔵王のジンギスカンは間違いなく旨いです。私がよく行くお店は〈バーベキュー白樺〉で、ここのラム肉は自家飼育の為とても新鮮で、臭みがなくて胃にもたれない。ちょっとレアな状態で食べるのが最高です。山形で働いていて良かった!と思える瞬間でもあります。
マスターが研究熱心な方で、その賜物なのでしょうね、北海道の有名店よりずっとリーズナブルでレベルが高いです。お肉はもちろん、玉ねぎやキャベツなど野菜も美味しいですよ。定期的に食べに行きたくなる店です。
5. お肌にいい温泉はしごツアー
山形は温泉にかなり恵まれた土地です。大まかにでもお湯の性質を理解することで、もっと温泉ライフが有意義になりますよ。
注目してほしいのは、メタケイ酸の量、pH値(酸性かアルカリ性か)、泉質、この3点。肌にやさしい温泉の組み合わせを考えて、温泉はしごツアーをしてみるのはいかがでしょう。
≫ 温泉ソムリエでもある本吉さんが提案する「お肌にいい温泉はしごツアー」に続く