映画は隣人。石川県唯一のミニシアター「シネモンド」
CINEMONDE
大きな画面で臨場感を味わいたい映画は、車で郊外のシネコンまで出かけるけれど、たいていは自宅から徒歩5分のミニシアター「シネモンド」を利用している。
会員なのでいつでも1,100円で映画が観られるし、「金沢で拝める日がくるとは…!」と感謝したくなるような映画も上映している。
ぽっかり時間が空いたときや、休日仕事の合間など、思い立ったらサクッと映画を観に行ける悦び。
今回は金沢の繁華街・香林坊にある、石川県唯一のミニシアター「シネモンド」をご紹介。
「シネモンド」とは、フランス語で「世界の映画」という意味だそうで、その名の通り、世界各国からの粒より名画が常時上映されている。
オープンは1998年の12月。創立者であり現代表の土肥悦子さんは、結婚を期に金沢に移住してきた、元「ユーロスペース」の映画宣伝マン(ユーロスペースはミニシアターの草分け的存在)。
移住当時の金沢は、映画館の数こそ多かったものの、土肥さんの「観たい映画」が全くやっておらず、肩を落としていたそう。
そんな折、友人であり、「桜桃の味」でパルム・ドール賞を受賞したばかりのアッバス・キアロスタミ監督が来日することになり、土肥さん主導で監督を招いての自主上映を決行。
その場所が、当時「KOHRINBO 109」の「ホール109」であり、現「シネモンド」の客席となっている。
シネモンドのオープン後、郊外型のシネコンが台頭し始め、街中の映画館が次々と廃業。現在中心市街地に残るのは唯一「シネモンド」1軒となった。
「僕個人としては、映画館としてまちづくりのために寄与しよう、といった気持ちは全くないんです。ただ、街って“おもしろいことが何か常におこっている場所”であって欲しいという想いはあって」と話すのは支配人の上野克さん。上野さんも学生時代に来沢して以来、23年間金沢でのシティーライフを楽しんでいる。
「休日やることがなければとりあえず街にでてくればいい。オヨヨ書林で古本買って、Gloiniで雑貨みて、映画見た後は金沢21世紀美術館へ行くのもいいし、ちくは寿しで巻き寿し買って、犀川沿いで食べても良い。
僕自身、大学に行くより街の中をうろうろするのが楽しくて、映画観たり古本屋めぐったり飲んでばかりいて2年留年したので誉められたもんじゃあないですが(笑)、やっぱり若い人は街に出ないと、ダサくなりますよ。オシャレといっても別に服装のことじゃなくて、スマートさとかクールさというのか。スマホやPCでの架空のオシャレ生活では身に付かないものですよね」
シネモンドではいろんな種類の映画が上映されていて、アニメもあれば社会派ドキュメンタリーもあり。最近だと「人生フルーツ」で涙と鼻水でグシャグシャになり、「シーモアさん、大人のための人生入門」で幸せなうたた寝をした。大衆ウケを狙っていないミニシアターだらこそ、映画の好き嫌いははっきり分かれる。
「それで良いんです。あの人にとっては良い映画だけど、この人にとってはつまらない映画があって当然で、ない方がおかしい。
映画って、人生の深い教訓が得られるとか、教養が身に付く、といった類いのものじゃなくて、“ものすごく遠くに住んでる隣人”に会いにいけるツールだと僕は思っていて。
もちろん“隣人”なわけだから、好き嫌いがあって当たり前。魅力的だと感じたり、この人には近づきたくないなって感情もある。ひとつの映画の中にだってプラスとマイナスがあって良い。何かひとつ、心が動くことがあれば、それで良いんです」
この映画観はウケウリしたいくらいカッコいいし、こういうお兄さんが映写機を回しているミニシアターが金沢にあることも頼もしく思う。
ちなみに、シネモンドでは学生さんは500円。「ワンコインならリピートしやすいかなと。感受性が磨かれるのって、やっぱり中学・高校生くらいだと思うから」との親心から。
この春の金沢で新生活を始める方は、まずシネモンド会員になることをおすすめします。