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ふわっと、気持ちが動くままに。

二俣和紙でつくるアクセサリー「murmur」

2017.05.20

胸元にとまった蝶のように軽やかなブローチや、風を受けてふわりと揺れる幾何学的なデザインのピアス。

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「murmur」のブローチ。
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和紙を折った幾何学模様。「morinokomichi」。

はじめて「murmur」のアクセサリーをイベントで見つけて以来気になっていて、後日偶然にも新聞の記事上で再会した。

そこで初めて知ったのは、そのアクセサリーがすべて金沢の伝統工芸品・二俣和紙でできていることと、作家さんは東京出身の移住者で現在金沢在住だということ、そして理系出身だということだった。

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パールがついた大判ブローチ「senpu」。
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花びらのように可憐なピアス「PETAL」。

伝統的な和紙、移住、リケジョ…?何やら気になるワードが多いので、直接作家さんに会いに行ってみることにしました。

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作家の北美貴さん。東京都出身の東京育ち。東京理科大学卒業後、桑沢デザイン研究所でスペースデザインを学ぶ。その後「spin off」の塩見一郎氏に師事して店舗設計の経験を積んだ後、2007年よりフリーランスデザイナーとして家具、生活用品、店舗など幅広いデザインを手掛ける。2014年より金沢に移住し「Jul」を設立。

—プロフィールを拝見するだけでも、かなり多様な経歴を経ていらっしゃるのですね。

はい。そのときの気持ちで動くタイプなので。笑

パズルを解いていくような感覚が楽しくて理系の大学に進み、卒業後は合成樹脂のメーカーに入りました。でも毎日の単調な事務仕事がおもしろくなくなって、デザインの夜間スクールに通い出すように。

そこで出会った仲間の設計事務所で働かせてもらっていたのですが、ちゃんと勉強していない自分がニセモノに思えてきて。そこでまたも働きながら桑沢デザイン研究所の夜間部に入って空間デザインを学びました。

段々スキルアップしたいという気持ちが湧いてきて、店舗設計で有名な塩見一郎さんの事務所で働かせてもらうことに。でも、そこからが自分との戦いの日々で。笑 自分の“出来なさ”に直面して、毎日苦しくて仕方がなかったんですけど、もがきながらでも続けていれば、少しずつ出来るようになってくるもので。そして3年後にデザイナーとして独立しました。

ー 金沢はご主人の地元とのことですが、移住に際してどんな気持ちでしたか?

これまでの人間関係や仕事もすべて東京でのものなので「私、何にもなくなるな」と思うと、当初は移住が嫌でしょうがなくて。

移住者の方のインタビューを見てると、みんな前向きでポジティブでだから余計に戸惑って。何で自分はこんなにマイナス思考なんだろうって。段々外に出るのもいやになって、家に閉じこもりがちに。

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「今ではここが気に入っています。食べ物も美味しいし、自然も近いし。そういえば、金沢に来て調味料にもこだわるようになりました」

— 転機は何だったのでしょう?

東京時代のイベントで出会った作家さんが金沢の方で、たまたま連絡が来たんです。「こんな展示会あるけど一緒に行きませんか?」って誘い出していただいて。地元デザイナーさんたちのユニットに入れていただいたり、ようやく閉じていた世界が少しずつ広がっていきました。

— 二俣和紙でアクセサリーをつくるようになったきっかけは?

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材料に使用している二俣和紙。

子どもと遊びでつくった切り絵を壁に飾っていて、それがシナシナになっていくのを見ながら何気なく「樹脂で固めたらどうなるかなー」と思いついたのがきっかけで。

東京デザイナーズウィークに出たときに出したら意外と好評で。和紙でやったらどうだろうと色々試しているうちに、金沢の伝統工芸品である二俣和紙を紹介していただいて、それがすごく丈夫でかつ折りやすくて扱いやすかったんです。

東京にいるときは工芸品なんてあまりふれる機会がありませんでしたが、金沢にきてからは身近で、遅ればせながら「日本っていいな」なんて思うようになって。

— ブランド名の「murmur」とはどういう意味ですか。

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「murmur」イメージブックより。

「murmur」は、ささやき、かすかな音、小川や木の葉などさらさらいう音といった意味合いです。社名である「Jul (ユール)」は北欧の言葉で「クリスマス」という意味で、小さい頃のクリスマスに抱いていたドキドキやときめきのような感情を大切にしたいなと。

コンセプトありきでつくるより、今は自分の気持ちがコンセプト。“キュンとした”とか、そのときに感じた気持ちや、見えるものを大切にしたいと思っています。

ー 金沢に移住されてご自身で変わったことはりますか?

金沢は作家さんがすごく多いんです。その代わり、いわゆるプロダクトデザイナーみたいな人は少ないですね。

東京だと完全に分業制で、デザイナーが自分でつくるのはあまり良しとされない雰囲気がありますが、金沢ではみんな「自分で手を動かしてつくる」というところから始まっていて。

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「d47 MUSEUM」の企画展「47 accessories 2 – 47都道府県のアクセサリー展 –」で、石川代表として北さんが選出された。

手を動かしてつくると、頭で考えてつくるのとは全く違う回路を使っている感覚があるんです。

最初は「作り手としてプロじゃないのにいいのかな?」という気持ちもあったのですが、経歴何十年という人にも最初の「一(いち)」があるなら、私の「一」はここからはじめようと思えたんです。

(以上インタビューより)

キャリアチェンジや移住への戸惑い、自分の気持ちを偽らず、正直に向き合い続けたことで、今この場所にたどりついた北さん。

「感覚的だったからこそ、きちんと正面から金沢が好きになれたのかもしれません。いずれ、また違うところに行きたくなるかもしれませんけどね」と晴れやかに笑う。

「murmur」のアクササリーの軽やかさは、北さんの心の在り方そのものなのかもしれません。

 

屋号

北美貴さん/Jul(ユール)

URL

http://www.jul.jp

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