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馬場正尊 talk about 山形 03

「クリエイティブ・ローカル/仙山生活圏」前編

—– 2017年3月22日に山形市で開催されたイベント(※1)では、奥山恵美子仙台市長、佐藤孝弘山形市長と馬場さんが「都市連携」をテーマにディスカッションされました。今回はその振り返りをしたいと思います。

※1 2017.3.22「クリエイティブ・ローカル/仙山生活圏の可能性」 主催:東北芸術工科大学

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奥山仙台市長(写真中央)、佐藤山形市長(写真右)をお迎えしてディスカッションを展開した2017.3.22の写真。円卓で、会場に出店していたSENDAI COFFEE STANDとBOTA coffeeの淹れたてコーヒーを味わいながら。

馬場)この対談を迎えるにあたり、あらかじめ僕の方から「クリエイティブ・ローカル」というキャッチフレーズを用意させてもらいました。気持ちとしては「新しい時代のローカルをクリエイティブしようぜ!」っていう感じ。

東北芸術工科大学がクリエイティブの学校であること、仙台の奥山市長も山形の佐藤市長も、芸術や音楽やクリエイティブへの造詣が深いことを踏まえて、この問いかけから対談を進めていこうと思いました。

もうひとつこの場で提起したのが「仙山生活圏」という概念です。

仙台市と山形市による「仙山交流」という言葉はすでに存在していたし、実際に交流も行われている。けれども、単なる交流にとどまるのではなく、ひとつの大きな生活圏として捉えてみたらどうだろう、というものです。

東北芸術工科大学は今、仙台市と山形市とそれぞれ連携して仕事をしていて(※2)、僕自身も山形はもちろん仙台に行く機会も多く、また、芸工大には仙台在住で山形まで通っている学生も非常に多いです。

※2 仙台市と東北芸術工科大学は「大学が持つクリエイティブ分野の資源を有効活用し、地域産業の振興を図ることにより、活力ある個性豊かな地域社会の形成・振興および地域人材の育成を推進することを目的に連携を行う」ことで合意。2015年3月30日に協定を締結している。

また、山形市と東北芸術工科大学は、「相互の連携を図り、それぞれの有する資源を有効に活用することにより、活力ある個性豊かな地域社会の形成・振興及び地域人材の育成を図る」ことを目的として2016年11月22日に包括的な連携協定を締結している。

そんな状況もあって、仙台と山形というふたつの都市を行ったり来たりしていると、たしかに県境は存在しているんだけれども、それを越えてひとつの大きな生活圏のような感覚になってきたんですね。ふたつの都市のいいところをうまく使いこなしながら、ひとつの生活が成り立つ。ふたつの都市は互いにそういう相性にあるのではないか、と。

このパネルディスカッションでは、仙山交流を超えたこの「仙山生活圏」の可能性を、おふたりの市長と一緒に考えようというもの。いくつかの切り口からふたつの都市の風景を見比べ、互いのいいところや課題を理解し合いながらディスカッションしていきました。


—– さて、最初のテーマはまちの「日常」ということで、仙台駅前、定禅寺通りの光のページェント(※3)、西公園(※4)という3つの風景が、仙台の日常としてピックアップされました。

奥山市長からは、東西自由通路ができてますます活気づく仙台駅前(※5)の現状や、定禅寺通りのジャズフェス(※6)といった大きなイベントが元々は仙台市民主体でスタートしているという歴史や、西公園を活気づけようという市民グループの運動が始まっていることなどを教えていただきました。

馬場)東北の賑わいがその一箇所に集中しているかのような仙台駅前の風景には光だけでなく影もまた見え隠れしている、と奥山市長がおっしゃっていましたが、それは僕にも感じるところがありました。
たしかに、仙台の駅前はすごく気持ちのいい空間になっている。けれども一方で、どうしてもナショナルクライアントが多くて、資金が東京に還元されちゃっているなあということが風景として見えてきてしまいますよね。

奥山市長は「ミニ東京としての役割だけではなく、その役割をこなしながらも仙台オリジナルのまちづくりをこれからやっていきたい。だからこそ、アートやクリエイティブが絶対に必要」とおっしゃっていましたが、全くその通りだと思いました。

また、光のページェントやジャズフェスといった大きなイベントが定禅寺通りで今では当たり前のように繰り広げられているわけですが、こうしたものが行政主導ではなく、もともとは市民主体のものとして生まれて定着していったというお話には、仙台というまちの足腰の強さみたいなものをすごく感じました。

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会場では、両市の風景写真を見ながら対談が進行。仙台の12月の名物となった光のページェントも、市民が自分たちでスタートさせたイベントだった、という。

※3 SENDAI光のページェント;1986年に始まり、2016年には31回目を迎えた、杜の都仙台のイルミネーションイベント。夜の定禅寺通りの120本以上のケヤキ並木が美しい光で見事に彩られるこのイベントは、仙台の冬の風物詩となっている。
※4 西公園:仙台市中心部にある、公設の公園としては仙台市でもっとも古い歴史を持つ公園。花見の名所としても有名。
※5 仙台駅東西自由通路:仙台駅の東口と西口をつなぐ仙台駅東西自由通路が2016年3月18日に全面リニューアル。それに伴い駅ビル・駅ナカも生まれ変わり、駅周辺の一帯が新しい仙台の顔として賑わいを見せている。
※6 定禅寺ストリートジャズフェスティバル in 仙台(JSF):1991年「本来音楽は野外でやるもの」というコンセプトのもと、音楽家、商店街の店主、定禅寺通りの街づくりを担う人々が集まり、実行委員会を立ち上げてスタートした音楽イベント。毎年9月に開催されている。

—– そうした都会としての仙台、大きなイベントで活気づく仙台の風景に対して、山形の日常としてピックアップされたのは、百目鬼温泉ゲソ天そば、山寺という静かでのんびりとした対照的な風景でした。佐藤市長からは「どれをどうPRすればいいか困るほどに、山形には素晴らしいものがたくさんありすぎる」といったお話もありました。

馬場)僕は山形に来て10年になるんですが、山形は本当に日常が美しいというか、日常がすごく充実しているということに驚かされます。日常的に食べる蕎麦。日常的に入る温泉。日常的に見る森の風景。そのひとつひとつが全部キラキラしている。

でも山形の人たちにとってはそれはあまりに当たり前の日常すぎて、特別なものには見えていない。でも、外からやってくるとものすごいインパクトがあるんです。

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山形市・山寺の秋

こうしてふたつの都市の日常の風景を並べてみたら、仙台というまちには新しい日常を市民の手で作っていくというような文化があったのに対して、山形の方にはそこにある豊かな自然や文化というものを感受しながらじわ~っと過ごす日常があったという感じです。

ふたつの日常は乖離しているけれども、だからこそ補完し合っているとも言える。うまくまとめれば豊かな生活圏になるんじゃないか。そんなイメージが浮かび上がりました。

→  後編へつづく

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