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農業を通じて人がふれあう場所づくりを。

2018.12.20

平成最後の夏、糸島の海沿いの集落に個人の野菜直売所がオープンしました。その名もKatsuki Vege Stand & Oki Labo。主は就農8年目の沖祐輔さん(35歳)。福岡大学の学生農業グループ「agri+(アグリプラス)」とともにクラウドファンディングで資金調達して話題に。

農業を通じて人がふれあう場所づくりを。
直売所は農地の隣に放置されていた貨物車コンテナを改装。土日にオープンする。
農業を通じて人がふれあう場所づくりを。
海の青に白地の看板が映える。糸島にまた新しいスポットが誕生。

沖さんは糸島で農業研修中に福岡市内の実家から糸島へ移住。近距離とはいえ働く場所も住まいも同時に糸島に求めた、まさにreallocalな人。少量多品目の露地野菜を栽培し、ラボで個人向けに販売するほか福岡市内の飲食店へ宅配しています。来春には収穫したての野菜を使いスムージーなどを提供するカフェも始める計画です。

農業を通じて人がふれあう場所づくりを。
この笑顔が沖さんの魅力。周囲をパッと明るくする。長女を抱いた奥様の恭代さんとともに。地域農家の作物も店頭に並ぶ。

 

「造園で海外移住」から一転、農業の道へ

 もともと沖さんは大学で造園を学び、海外で造園の仕事に就こうと考えていました。旅好きで、卒業後ワーキングホリデイを利用して1年間ニュージーランドへ。ワイナリーやリンゴ、キウイなどの農場を回り収穫作業に従事します。

 これが初めての農業体験でしたが、あくまで目的は造園。ガーデニングが盛んなクライストチャーチで造園会社の面接を受けますが、就業経験がないことから不採用に。そこで帰国して2年ほど福岡の造園会社で働き、その経験を元手に今度はオーストラリアを目指す旅に出ます。

 ところが、旅の途中のアジアで体調を崩し、渡豪を断念。半年で帰国せざるを得なくなりました。療養中、高校時代の友人2人と「農業をやりたいね」という話に。このとき真っ先に頭に浮かんだのがニュージーランドでの体験でした。

 「向こうの農業はほぼツーリストが作業します。安宿に泊まり、一つの農場に1ヵ月半くらい。時期を終えると次の農場へ移動する。宿には四六時中いろんな国の人がいて、朝出かけて働いて、帰って酒を飲んで、卓球したりボードゲームしたり、とにかく楽しかった」

 こんなふれあいのある農業を糸島でやりたい。ゲストハウスを併設して滞在中の旅行者に農場で働いてもらい出荷する、観光と農業を合わせた構想です。

 とはいえ農業はまったくの素人。とっかかりが分からず、畑で作業中のおじさんをつかまえて「農業やりたいんですけど」と尋ねて回ったことも(笑)。やがて県や市に相談しながら、農業法人で1年、さらにカブ生産農家で3ヵ月。そこで土地を1反借りて独立。27歳の時でした。

農業を通じて人がふれあう場所づくりを。
福岡市内の飲食店を中心に10数店へ定期的に野菜を供給。シェフとの出会いも刺激に。

庭園を思わせる美しい畑

 以後、栽培面積は毎年増えて7反に。年間通して50品目100品種を栽培していますが、ここまで試行錯誤の連続だったそうです。

「とにかく、やりたいやりたいだけで、1反で採算がとれるのかどうかも分からず始めましたから」(笑)

単品から多品目へ移行して4年目。露地でやるには栽培面積を今の倍以上に増やす必要があること、飲食店と個人では野菜の趣向が異なることなど課題も見えてきました。

農業を通じて人がふれあう場所づくりを。
露地野菜の美しさが際立つ畑。イタリア野菜のトレビーゾ、レタス、サラダのアクセントにぴったりのカーリーケールなど、この畑だけで20種近い品種を栽培。

沖さんの畑は畝がまっすぐなのが目を引きます。「性格ですかね」と沖さんは笑いますが、なんだか庭園を眺めているような気分に。通路幅を広く取っているのは、作業しやすいだけでなく風通しが良くなり病気にもかかりにくいから。

「造園も農業も土に触れることは共通。自分に合ってると思います」

「もう長旅には出られない。それならこっちにツーリストを呼んで海外体験したい」

その夢が直売所のオープンで一歩近づきました。

隣では来春のカフェ開設に向けた工事にも着手。奥さんの恭代さんお得意の菓子が店頭を飾るのも間近です。

農業を通じて人がふれあう場所づくりを。
新鮮野菜はもちろんのこと、この笑顔を見るとリピーターが多いのもうなづけます。長男の恭輔くんがひょっこり顔を出しました。

ちなみに一緒に農業を始めた同級生2人は今、カフェと自家焙煎のペタニコーヒー、イチゴ生産とカフェの磯本農園とそれぞれの道を歩んでいます。糸島の懐の深さや可能性を感じさせる事例です。

屋号

おき農園

直売所:Katsuki Vege Stand & Oki Labo

URL

https://okifarm-itoshima.com/ 

facebook:https://www.facebook.com/oki.farm.itoshima/

 

住所

福岡県糸島市志摩久家2537-1

農業を通じて人がふれあう場所づくりを。