山形と仙台、ギャラリー営む2拠点ライフ
〈New Layla Art GalleryⅡ〉菅原尚子さん
北山形駅から車で5分ほどの閑静な住宅街。モダンな外観が目を引く一軒家の一階に、アートギャラリー〈New Layla Art GalleryⅡ〉があります。
2016年の秋に山形へ移住し、ギャラリーをオープンさせた、菅原尚子さん。
ギャラリーオーナーと会社員の二足のわらじを履き、山形を拠点に週5日仙台の会社に通勤しています。
──ギャラリーをはじめたきっかけは?
もともとアート鑑賞は好きでしたが、美大を出ているわけでもなく、絵も描けない、アート業界とは無縁で生きてきました。
きっかけはインドの細密画家、モハメッド・アリさんとの出会いでした。
アリさんの作品を見るとあったかい気持ちになりました。人からの評価じゃなくて、自分がどう感じるか。アートの楽しみ方が自分なりにわかった気がしたんです。
30歳を目前に家族の問題が起きて、これからの人生について考えるようになりました。
その頃は派遣社員として毎日会社へ通うだけの日々。自分の手で自分の人生をつくっていきたい。そこで、以前から興味があったギャラリー運営に踏み出してみようと思ったんです。
オープン後は実践あるのみ。キュレーション、空間づくり、集客、販売など、勉強しながら経験を積んでいきました。
──山形へ移住してギャラリーをオープンさせたのはなぜですか?
結論からいうと、物件との縁から山形にたどり着いたんです。
最初は仙台で物件を探していたのですが、どれもピンとこなくて。そんな中で〈山形R不動産〉の存在を知りました。
周りの人から山形はいい場所だと聞いていたし、仙台まで1時間なら通えるかもしれないと、〈山形R不動産〉をひらいてこの物件と出会いました。
ギャラリーをやるのに理想的な間取りで、すぐに問い合わせました。
──仙台と比べて人口が少ない山形の住宅地でギャラリーをやるのは、思い切った決断ですよね
周りの人からは「なぜ山形でギャラリーを?」と聞かれたのですが、土地の雰囲気を見て大丈夫だという直感がありました。
山形ビエンナーレや芸工大の企画など、山形は地域ぐるみでのアート活動があるからでしょうか。仙台の人と比べて、山形の人はアートへ関心が高い気がします。
──仙台との2拠点生活、山形での暮らしはどうですか?
賑やかな仙台へ行って、静かな山形に帰るメリハリある生活で気に入っています。
山形は誰も知らない土地ですが、毎日気持ちよく生活しています。
山形の景色が好きなんです。仙台の建物に囲まれた場所で育ったので、自然を感じて暮らしたことがなかったんです。山形ではいつ外に出ても山が見えて空が広くて、心が安らぎます。
山形は人もあたたかく、やさしい印象があります。知らない場所の交流会へ行って「ギャラリーをやっている」と話すと、みなさん興味を持って聞いてくれるし、近所の方も親切です。
自分は仙台より山形の方が合っているのかもしれません。
──仙台と山形は、どのように行き来していますか?
自宅からバスで山形駅へ出て、通勤用の定期券を使って仙台まで高速バスに乗ります。
朝は7時前に家を出て、8時半くらいに仙台へ到着します。朝は仙台行きのバスが5分おきに出ていて便利ですよ。会社とギャラリーの仕事を終え、8時~9時ごろには山形に戻ってきます。
もともと乗り物が好きなので、山形と仙台間の移動にストレスはほぼないですね。バスに乗ると寝てしまって気づくと到着しているので、寝足りないと感じるほどです(笑)。
──〈New Layla Art GalleryⅡ〉の企画展では、どのような方向性でキュレーションされていますか?
水彩、油絵、アクリル、陶芸、切り絵、クレイアートなど、幅広い作品をご紹介しています。
方向性としては、過激で奇抜なものより、日常生活に溶け込む作品が多いです。
作品を見ることで明るい気持ちになったり、心が癒されたり、元気がもらえるなど、前向きな感情になってもらえたらと思っています。
日本ではまだアートを買うことのハードルは高いですよね。まずはアートを楽しむこと、知ってもらうことからスタートしなければなりません。
アートを買うことは、巡り巡って作家さんを育てて、地域の文化を支えることにもなります。そのサイクルをつくることはギャラリー運営の役割だと思っているので、これからも焦らずゆっくりと続けていきたいと思っています。
──ありがとうございました。
現在、〈New Layla Art GalleryⅡ〉では、アルバイトスタッフを募集中。
条件は、アートが好きで、人と接するのが好きな女性。そして、長期のスパンでゆっくり地域と向き合ってくれる人。
働きながら現場を学べるいい機会です。ギャラリー経営に興味がある人は、以下の問い合わせフォームよりご応募ください。