北の「笹堰」をゆく
山形市のぶら~り堰散歩 vol.2
山形市の歴史ある「堰(せき)」をたどりながら歩く、1時間の散歩コースをご紹介します。
お久しぶりです。まち歩き、この道五年。山形大学の大学院1年、太田宗一郎です。
前回は、御殿堰のすがおにフォーカスしてみました。
今回たどるのは、同じく山形五堰のひとつ「笹堰」です。
笹堰の特徴は3つ。
① どんどん分岐して、山形市街の広い範囲を潤しています
② 個人的には山形駅前通りより南側、三日町・鉄砲町周辺をゆうゆうと流れているイメージ
③ じつは山形駅前通りより北側、小姓町・十日町周辺にもひっそりと流れています!
今回スポットを当てるのは③。笹堰のすがおを北エリアに求めて、堰散歩に出発です!
【コース】
前回は、御殿堰を上流から下流へとたどってみました。
しかし今回は、「笹堰ってここを流れているんだ!」という驚きをより感じるために、中心街から上流へとさかのぼってみたいと思います。
赤色のラインは堰さんぽのルート、青色のラインは笹堰の主な流路です。
【Point 1〜11】まで、ゆっくり歩いて約1時間のお散歩コース。
国道112号線(七日町の大通り)沿い、十日町にある山形中央郵便局からスタートして、キャンパス内に堰が流れる山形大学を目指します。
それではいざ、堰さんぽへ!
【Point 1】 山形中央郵便局前
郵便局の車両など、車通りが多い七日町の大通り。しかしいったいどこに笹堰が…。
郵便局の正面入り口の斜向かいにあるビルのそば。ここを流れているんですね。たどっていくと…。きれいな水が流れ込んでいます。
笹堰の最北ルートとはここでお別れ。
もう一本南の笹堰へ向かってみましょう。大通りより一本東の道を、南進します。
【Point 2】 普賢堂・不動尊
その前にお堂でお参り。江戸時代の町人たちも、ここでお参りをしていたのでしょうか。
そこからお堂の前の道を南進するのですが…。
じつは【Point2~3】間のこの道、江戸時代から匠たちが軒を連ねていた、職人の道なのです。
戦後までは、その名残を示す地名が残っていました。
七日町方面からこの通り沿いの旧地名を挙げると、「檜物町」「桶町」「塗師町」「銀町」「蠟燭町」「鞘町」。
今回はまん中の、「塗師町」「銀町」を通ります。
興味がある方はちょっと寄り道して、この職人ロードを制覇してみては?
【Point 3】 暗渠
焼き鳥のお店の前まで来ました。
ここで左に曲がると…かすかに水の音が。
この側溝が笹堰です!たどってみましょう。足元に、かすかに水の流れを感じます。
(※ちなみにこちらのルートの笹堰、下流は山形駅の方に抜けていきます。ほとんど側溝ですが、興味のある方は堰探しにチャレンジしてみてください)
では改めて、上流へまいります!
【Point 4】 東前稲荷神社界隈
コンビニのある交差点を渡って直進します。しばらくすると、神社がありますね!
しかし、お気づきでしょうか……神社より手前で折れる、細い道の存在に!
ひっそりとした細道を、これまたひっそり、堰が流れています! 涼しげ…(太田は取材の一週間前にこの存在を知りました。)
改めて、東前稲荷神社の境内へ。
藤の花の下、石橋が見えますね。もしや…
ここを流れていたとは! 笹堰が流れ込むお稲荷さまです。
【Point 5】 小姓町の住居の裏
その上流もずっと、笹堰は家と家との間を流れています。
これは今まで気づきませんでした…。
【Point 6】 ゆるやかにカーブする疎水
遠くまで続く塀が印象的な道にやってきました。さて笹堰はどこに……。
なんときれいなせせらぎでしょうか! 緩やかにカーブしたその姿は、山あいの沢のようです。
奥のほうでは、せせらぎにまじってぱしゃぱしゃという音が…。からすが水浴びをしていました。暑いんですね。
【Point 7】 笹堰の谷
大通りに出て、堰を探してみましょう。
【Point 6】を上流から眺めることができました。
低いところを流れる堰を見下ろすようになり、小さな谷みたいですね。横断歩道を渡って、もみじ公園へ向かいます。
(※このあたりの笹堰は、流路を見つけるのが難しかったです…。地下に潜ったり、使用していなかったり、ルートが変わったりしているのでしょうか。もっと詳しく調べてみたいと思います)
【Point 8】 もみじ公園
笹堰からちょっと外れて、寄り道。静かで潤いに満ちた空間です。ここ一帯が、もみじ公園から流れ出る清水のせせらぎに満ちています。
もみじ公園は、江戸時代から明治時代にかけて「宝幢寺」というお寺だった回遊式庭園。まるい池に、まるい空…。心が落ち着きます。
池の周りをぶらりと一周できます。
余談ですがこのもみじ公園(旧・宝幢寺)、植木市が行われる国分寺薬師堂と縁があります。以前の植木市の記事で、中島さんが甘茶を飲んでいたところです。
何を隠そう、その薬師堂こそ、宝幢寺の本堂を明治期に移築したものなのです! 不思議なご縁ですね。
公園を出ました。公園前の道。
夏の昼、ここを通るととても気持ちがいいです。ここだけ木陰になるのですが、森と池の冷気が塀を越えて、通る人の火照った体を包み込みます。お試しください…。
【Point 9】 もみじ公園から大学前通りへ
余韻にひたりつつ、大学を目指します。大学前大通りの賑わいが近づいてきました。
何やら立派な水路。今まで気づきませんでした。もしや、これも笹堰なのでしょうか…。興味深いです。知らなかった…。
【Point 10】 山形大学構内の清流
大学前大通りを渡って、大学構内の清流を目指します。
とりあえず正門より近い南側入り口から入ってみます。
学生の賑わいの中、体育館の方に向かいます。すると…
こんな清流が自然に流れています。水路というより、まるで野の小川です!
【Point 11】 山形大学東側の疎水
大学の東門を出てみると、大学の周囲を笹堰が流れていることがわかります。
石垣をつくり、底に段差を取り入れることでせせらぎを生んでいますね。
じつはここ、笹堰の数々の分岐点のひとつ。
上流の馬見ヶ崎川から流れてきて、山形大学の東側にぶつかることで二手に分かれているんですね。
【Point 1】は大学の外側を流れている方の、【Point2~10】は大学構内を流れている方の笹堰だったのです。
さらに上流をさかのぼることもできるので、興味のある方はぜひ。
おわりに
いかがだったでしょうか?
笹堰は御殿堰よりも恥ずかしがり屋さんのようで、私自身「こんなところを流れていたのか!」など驚きが尽きませんでした。
同時に、「隠れてしまっている笹堰はどこを流れているんだろう…」「ここは笹堰なのかな?」という、Point間のミッシングリンクへの興味も尽きません。
そして時折かいま見せてくれるすがおの、涼やかさたるや…。
どこまでも奥ゆかしい笹堰。
皆さんも、御殿堰とはひと味違うそのすがおに、フォーカスしてみてはいかがでしょうか?
【プロフィール】
太田宗一郎
山形大学大学院社会文化システム研究科1年。日本文学(古典)を専攻。大学生時代からまち歩きと資料収集を通して、山形市街における近世・近現代の土地の記憶をさぐる。山形県東根市出身。
【参照サイト】
※ 笹堰ポイントマップには、今回訪ねた北側2本の一部を示し、その上流・下流や南を流れるルートは割愛しました。笹堰の全体像については、以下のリンクをご覧ください